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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
61/80

米大統領、最後の意地

遅くなってすみません。

もう60話も越えてしまいました。

ここまで続けて来れたのは読んで下さっている皆様のおかげです。

本当にありがとうございます。

           米大統領、最期の意地





「やあ、諸君。」

緊急に開かれた軍事会議でのルーズベルトはやつれきっていた。

昨日の議会での責任追及はかなりこたえたようだ。

建国以来初の、敵国からの攻撃を受けた大統領と言う不名誉を得た

彼の目にはどんよりとした隈ができている。

空襲を受けた国民は攻撃を受けた復讐を叫ぶ声ではなく、

日本との停戦を叫び、かなりの規模のデモ行進が起きている。

彼らの眼にはもう猛火に包まれた真珠湾ではなく、

空襲で崩壊したビル群しか映っていなかった。

「議会が望んでいることは二つ、ジャップとの停戦と私の辞任だ。」

それを聞いたキング作戦部長は青筋を立てながら大統領に訴えかける。

「ようやく、太平洋艦隊が再建したのです。

このまま負けっぱなしで停戦など、今まで死んだ部下に申し訳が立ちません。」

「それは私も同じ気持ちだよ、キング君。なにより私にはニミッツとした約束がある。

議会の反対を押し切ってハワイ再占領作戦だけは認めさせたよ。」

「と言うのは…。」

不安げにライナー中将が呟く。

「そうだ、ハワイ再占領作戦終了次第、日本と停戦し、私は辞任する。」

沈黙が周囲を包む、反対の声をあげる者もいなかった。

「英国も日本と不振なコンタクトを取っているようだ。

おそらく講和締結交渉を行っているのだろう。さすがは二枚舌の国家だよ。」

「しかし、大統領、もともとは英国を救うためにこの戦争を始めたようなものではありませんか。さすがの英国も我が国に知らせもせず独断で講和をしたりはしないでしょう。

戦後の関係もあるのですよ。」

「英国の太平洋艦隊派遣要請を断ったからな、独逸、イタリアの艦隊に対抗できる艦隊は我が国の要請でインド洋に派遣されていたのにだ。

あれで英国との関係はかなり気まずくなってしまった。」

大統領の言葉を聞いて彼らは口を閉ざした。

「独逸の英国占領作戦も準備が進んでいると聞く。

このハワイ再占領計画は私の最期の意地なのだ。なんとしても成功を収めてほしい。」

「しかし、大統領……。」

口ごもるライナーを見てルーズベルトは疑問の声を上げた。

「どうしたのだね。」

「ハルゼー中将率いる太平洋部隊はホーン岬を廻航しなければなりません。」

「……、潜水艦か。」

「ええ、ジャップはともかく独逸のU-ボートは優秀です。

被害なしで廻航できると考えるのはむしが良すぎるでしょう。」

「何か良い考えは無いかね、キング君。」

「我が潜水艦部隊の報告によるとジャップは優秀な対潜哨戒機と駆逐艦で

東南アジアと日本を繋ぐシーレーンを維持しているとのことです。

ホーン岬を廻航するときは戦闘機の数を減らし、哨戒機を増やすというのはどうでしょう。

航空機だけならこちらにも十分ありますし。」

「わかった、そうしよう。」

会議が終了した後、ルーズベルトは隈の浮き出た眼で窓の外を見ていた。

「これが私の最期の意地だ、見ていろ、ジャップ。」

彼はそう呟くと会議室を後にした。





一方、英国首相チャーチルは諜報部からの報告を聞き、顔を歪めていた。

独逸、イタリアが艦隊を集結させていることは重々承知だったが、

東洋艦隊の空母「インドミダブル」が座礁し、

本国への帰港が不可能になったことは予想外だった。

報告を受けた後、チャーチルは側近に尋ねた。

「現在の独逸、イタリア海軍の我が国に対する陣容はどれくらいだ。」

「諜報部の報告によりますと、独逸海軍は、

戦艦「ティルピッツ」

巡洋戦艦「シャルンホスト」「グナイゼナウ」

正規空母「グラーフ・ツェッペリン」「ペーター・シュトラッサー」

駆逐艦十二隻、それにU-ボートが多数…。

イタリア海軍は、

戦艦「ローマ」「インペロ」「リットリオ」

改造空母「アクイラ」

重巡四隻、軽巡四隻、駆逐艦二十隻とのことです。」

「ムッソリーニもヒトラーも本気というわけか…。」

チャーチルは目頭を押さえながら言った。

「海軍の錬度ではU-ボートを除けば、我が国が圧倒しているはずだ。

英国艦隊の全力を向けたら勝てない相手では無いな。

だが……、本当に独逸はあのアフリカの悪魔を艦戦にはしていないんだな。」

「諜報部が命がけで入手した情報です。確かでしょう。」

アフリカの悪魔とはアフリカ戦線で米英航空部隊を恐慌させた、

ジェット戦闘機Me262である。

スエズを取られたのもこの機の活躍が大きかったと言っても過言ではない。

「ならいいのだが。」

そういうとチャーチルは軍港へ目を向ける。

まだ東洋艦隊が集結していない軍港は閑散としており、

彼の心に不安をもたらしていた。





「これでハワイを見るのが最期だと思うと少しさみしい気分になりますね。」

第二機動部隊参謀の秋津少将は第二機動部隊司令長官角田中将に話しかけた。

「これが最期とは限らんよ、

戦争が終われば観光として訪れることもあるかもしれん。」

そう言って角田は周囲を眺める。

米本土空襲作戦から帰港した戦闘部隊の中に輸送部隊が収まっている。

本来なら護衛艦隊がするべき護衛だが、ハワイからトラック島までは、

連合艦隊が輸送部隊を護衛する手筈になっていた。

かなりぎこちない護衛だが、哨戒機の数がそれを補っている。

ハワイ詣と呼ばれた本国への物資の移動はこれが最後となる。

「観光としてですか、そんな時代がくるのでしょうか。」

「いずれは来るさ。」

耳になれたペラの音と共に天山艦攻が第二機動部隊旗艦「大鳳」から

発艦していく。

「少し仮眠してくる、指示は任せた。」

角田は帽子を被り直すと自室に戻っていった。







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