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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
60/80

B-29との死闘

長めに書けたと思います。

よろしくお願いします。

        B-29との死闘






「敵攻撃隊、大型機多数。」

「敵との距離、十海里ほどです。」

「対空戦闘準備可能。」

慌ただしく入ってくる連絡を小沢中将は瞑目して聞いていた。

上空の直掩隊のほとんどは弾が尽きている。

B-29相手ではさすがの空母直掩隊も苦戦したようだ。

「被弾した艦は下がらせろ。」

小沢はそう言うと言葉を続けた。

「対空戦闘準備はできているな。」

「はい、長官。空母はどうされますか。」

「今更、下がらせたところでどうにもなるまい……、二航戦はまだか。」

「先ほど、発艦させたとの報告がありましたが、まだのようですな。」

「そうか、ところで、戦艦群には三式弾を積んでいたはずだな。」

「ええ、しかし三式弾の効果は疑問視されていますが…。」

「関係ない、戦艦群に連絡したまえ。」

小沢はきっぱりと言い切った。

「了解しました。」





「三式弾だと。」

大和艦長青木大佐は眉にしわを寄せて唸った。

「かなり小沢長官もあせっているようだな。

三式弾は対空攻撃より、対地攻撃に効果があると工廠から報告が出たばかりだが…

確か、ミッドウェーでも三式弾を使用したらしいな。」

「はい、前艦長の門松大佐が使用し、飛龍への急降下爆撃を阻止しています。」

「ということは、まったく効果が無いというわけではないようだな。

よろしい、三式弾準備。距離八千で砲撃を開始する。

現在の距離は。」

「およそ三万です。」

「そろそろだな、主砲発射用意。」

大和の主砲九門は、突入してくる攻撃隊にその砲口を向ける。

武蔵、陸奥も同じく砲口を向けた。

「距離、一万五千。」

「よく狙えよ。」

「距離八千。」

「撃っ。」

合計二十六門の主砲が一斉に吼える。

それと同時に凄まじい爆発音が聞こえる。

主砲からの黒煙で前は見えない。

「状況、知らせ。」

青木が叫ぶ。

「敵機、三機が落ちていきます。」

見張り員の報告を聞いて青木は落胆する。

「たった、三機か…。」

期待はしてなかったが、やはりあの凄まじい音を聞くと期待してしまう。

「再度、装填。四千で砲撃。これで最後だ、よく狙えよ。」

「距離六千。」

祈るように青木は目を閉じた。

「距離四千。」

「撃っ。」

再度主砲が吼え上空には爆炎が花火のように光る。

再び黒煙が晴れ、見張り員が叫んだ。

「敵機、少なくとも十機は撃墜した模様。」

艦橋でどよめきの声が上がる。

青木もにやりと口を歪める。

「やりましたね、艦長。」

「ああ、しかし敵の攻撃はこれからだ。

三式弾は煙がひどい。対空戦闘中にはつかえまい。」

青木は上空の敵機をにらむと対空準備を整えた。





「くそっ、ジャップの野郎。」

米第二次攻撃隊隊長マイヤー中佐は怨嗟の声を上げた。

たった二回の砲撃で十五機のB-29が撃墜されてしまったのだ。

ただ、上空に乱舞する戦闘機の数そうでもない。

おそらく第一次攻撃隊の迎撃で弾が尽きてしまったのだろう。

襲いかかってくる戦闘機の数はさらに少ない。

「もらったな。」

彼はそう言うと、口を歪めた。

対空砲火は凄まじいが一万二千メートル上空まで届くのはほんのわずかだ。

大して意味は無い。

油断が彼の心を巣食っていた時だった。

部下の言葉に彼は愕然とする。

「敵機、突っ込んできます。」

「何だと。」

左上空を見ると、急降下しながら敵機が真直ぐ突っ込んでくる。

機銃を撃つ気配は無い。弾が尽きているのだろう。

では、なにをしに突っ込んでくるのか。

「ジャップめ、このまま突っ込んでくる気か。」

恐怖感が油断の代わりに彼の心に巣食う。

「機銃員、何をしている。奴を撃ち落とせ。」

マイヤーは叫ぶが、機銃はなかなか命中しない。

「直撃します。」

部下の叫び声が聞こえ思わずマイヤーは頭を抱えた。

鈍い音と共に烈風の機体を直撃されたB-29は轟音と共に爆発する。

爆発に巻き込まれながらも必死に脱出したマイヤーの部下のアン少尉は、

もう一つ、空に浮かぶパラシュートを見つけた。

味方かと思ったがパラシュートの色が違う。

ぼんやりと人の姿が見えてくる。

黒髪に黄色の肌、ジャップだった。

おそらく先ほど突っ込んできた機体のパイロットだろう。

ジャップは自分から死にに行くほど馬鹿ではなかったようだ。

アン少尉は悪態をつきながら腰の拳銃を取り出そうとするが見当たらない。

おそらく落としてしまったのだろう。

ジャップのほうもこちらに気付いたらしく、拳銃を持っているが、

銃口を下に向けたまま撃つ気配が無い。

「撃てよ、糞野郎。」

アンは叫ぶが、さっきの野郎はじっとこちらを見つめるだけだ。

こちらが拳銃を持ってないのがわかったのだろう。

奴は拳銃をしまうと、パラシュートを上手く扱いながら味方の艦がいる方に向かっていく。

アンもパラシュートを操作しながらサンフランシスコに向かっていった。

「くそっ。」

自分の機を落とした相手に複雑な思いを持ちながら。





百二十機の第二機動部隊直掩隊が第一機動部隊上空に辿り着いたのは、

それから五分後のことだった。

次々と銃撃を受け、B-29が撃墜されていく。

「ようやく来てくれたか。」

小沢中将はそう言うと脱帽し、戦闘機隊に向かって敬礼した。

被害は第一次、第二次攻撃合わせて、

烈風四十三機撃墜。

戦艦「長門」直撃弾一発、至近弾多数、中破。

重巡「青葉」直撃弾一発、大破。

重巡「高雄」直撃弾一発、大破。

駆逐艦六隻撃沈である。

大した被害は無いように見えるが、至近弾の破片を大量に浴び、

重装甲の空母「信濃」「葛城」以外は甲板が使用不可能の為、

さらに十数機の烈風が海上に不時着陸した。

十数機で済んだのは、角田中将率いる第二機動部隊が、

全速力で第一機動部隊との距離を詰めていてくれたおかげである。

敵の損害は、

F6F七十四機撃墜、

B-29八四機撃墜、百機以上が使用不可となった。

もし、護衛のF6Fの搭乗員がもっと錬度が高かったら、

かなりの成果を上げていただろうが、

新米ばかりの搭乗員では十分にB-29を護衛することはかなわなかった。

世論には無用の作戦で多くの命を失ったと糾弾され、

大統領の立場はかなり危ういものとなっていた。

実際は日本戦艦部隊の艦砲射撃を中止に追い込んだという、

素晴らしい実績を上げていたのだが……。




そろそろ、一部は終わりそうです。

とはいってもまだしばらく続きますのでお付き合いください。

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