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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
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超空の要塞、猛攻す

    超空の要塞、猛攻す





「司令官、偵察機からの連絡です。」

戦艦部隊を進出させようとしていた、

第一機動部隊司令長官小沢中将は、無表情のままで尋ねた。

「何だ。」

「敵攻撃部隊を発見したとのことです。

数はおよそ四百機、四発の爆撃機を含むとのことです。」

「B-17かな。」

「いえ、偵察員の報告によるとB-17より、大型の機体だそうです。」

「確かなのか。」

「ええ、この偵察員はミッドウェーでB-17を発見しています。

確かだと思われます。」

「B-17より、大型機だと……、新型機の可能性が高いな。

とりあえず、直掩隊を全部上げてくれ。

それと、角田君に連絡を取ってくれ。」

「了解しました。」

立ち去っていく報告員を見ながら小沢は黒田参謀長に尋ねた。

「君はどう見る。」

「おそらく、新型機でしょう。

戦闘機隊には注意しておきましょう。」

「頼む。」





「高度一万二千、隊長、この機は素晴らしいですね。

この高度でこの速度を維持できるとは。」

「ああ、だが気を抜くなよ。

ジャップの空母直掩隊の腕はかなりのものだと聞く。」

「ここまで、飛んでくることができるでしょうか。」

そういって、コモンズ少尉は護衛のF6Fを見る。

「見てください。F6Fですらこの高度は飛べませんよ。

ジャップの艦載機では不可能でしょう。」

史実でのF6Fの公式最高上昇高度は一万二千メートルだが、

本当に一万二千の高度で戦闘ができる機体は大戦末期になってようやく完成された。

実質、この世界のF6Fは高度一万が限界だった。

フランコ少佐は部下の言動に沈黙で返した。

コモンズはまだ本当の戦闘を体験していない。

いや、このB-29を中心とする爆撃隊員のほとんどが戦闘を体験していない。

体験したものは死んだか、欧州の戦線で戦っているか、再建した艦隊に所属しているかだ。

フランコは一抹の不安を抱えつつ、敵艦隊に向かって歩を進めた。





第一機動部隊空母直掩隊が空に飛び立ったのは発艦を開始してから二十分後のことだった。

戦闘機隊隊長は室井少佐。機数は百三十三機だ。

それから十分後、敵爆撃隊を発見したのは、

第一航空戦隊「信濃」分隊長である、笹井中尉だ。

史実の笹井中尉は、

ラバウルのリヒトホーフェンの異名を持つ、

推定撃墜数五十七機の輝かしい戦功を誇った男だ。

坂井や、西澤など素晴らしい列機にも恵まれるが、

一九四二年八月二六日、米海兵隊撃墜王、カール大尉を単機で追尾し、

敵基地の上空で航空戦を行うという勇猛さを見せるもカール大尉の一撃を浴び、

笹井はガダルカナルに散った。

この世界では基地航空隊から引き抜かれ、第一航空戦隊所属として戦っている。

「敵機、発見。数およそ四百機。護衛戦闘機はおよそ百機。」

「高度は一万二千辺りだな。」

列機の坂井少尉がそう呟く。

「ああ、少しばかりきついな。」

烈風の最大上昇高度は一万二千、限界ぎりぎりである。

笹井達は高度を上昇させ、敵機の真上に付く。

それと同時に凄まじい機銃射撃が彼らを迎えた。

たちまち二機の烈風が火を吐きながら落ちていくが、

笹井は弾幕の中を潜り抜け、機関砲をB-29に直撃させた。

だが、爆発する気配は無い。

「…、かなり硬いらしいな。」

笹井はそう言うと再び上昇を始めた。





機関砲の直撃音が聞こえる。

「被害状況を知らせろ。」

フランコが叫んだ。

「大丈夫です。飛行に支障はありません。」

「もっと弾幕を集中させろ。」

先ほど機関砲を命中させた機体が再び上昇するのをフランコは視界の端でとらえた。

「十四時の方角、敵機だ。降下してくるぞ。」

コモンズが必死に機銃を撃ち込んでいるが顔が引き攣っている。

恐怖感から撃った弾はなかなか当たらないものだ。

バリバリという音が聞こえるのと同時にコモンズの頭が砕けた。

それと同時にオイルの匂いが鼻を突く。

どうやらタンクに命中したらしい。

「くそっ、脱出するぞ。」

フランコの提案に皆がうなずく。

次々と脱出していく乗組員達を尻目に、フランコは操縦桿を握りしめた。

前方にはジャップの艦隊が見える。

彼の眼についたのは、馬鹿でかい戦艦だ。

「貴様も道連れだ。」

彼はそう叫ぶと戦艦に向けて機体を向けた。





「直掩隊は奮戦しているが、いかんせん数が多いな。」

撃墜されている大型機もちらほら見えるが、大部分は艦隊上空まで辿り着いた。

「見張り員、気をつけろよ。雨のように爆弾がくるぞ。」

重巡「青葉」艦長がそう言ったと同時に落下音が聞こえてくる。

見張り員は目を皿のように見開いた。

本当に雨のような爆弾の量だ。

熟練の見張り員も顔を強張らせるが必死に投下予測位置を叫ぶ。

艦長も必死に艦を操るが、あまりにも多すぎる爆弾を避けきれない者も出てきた。

特に鈍重な戦艦は避けにくい。

重巡「高雄」に命中弾が出ると、凄まじい音を立て高雄はその動きを止めた。

千キロ爆弾が高度一万二千から落ちてくるのだ。

命中率は低いが、その威力は凄まじいものだった。

駆逐艦に命中すると爆発音とともに駆逐艦は消え去った。

各艦長たちは鬼のような気迫で艦を操る。

しかし、ついに戦艦に命中弾が出た。

長門である。艦尾に命中したがスクリューに被害は出ず、航行は可能だった。

爆弾の嵐も影をひそめる。ようやくほっとした空気が艦隊を包んだころだった。

「敵爆撃機、突っ込んできます。」

見張り員の叫び声に戦艦「大和」青木艦長は顔を歪める。

「取り舵いっぱい。」

三十ノットの最高速度で航行していた、大和はゆっくりと向きを変える。

「対空砲火、撃て、撃て。」

必死の対空砲火を敵に撃ち込むが、なかなか当たらない。

もう駄目か、誰もがそう思った時だった。

二十五ミリ機銃が直撃したらしく、敵爆撃機は轟音と共に四散する。

その破片が大和の甲板に降り注ぐ。

歓声と共に命中させた機銃員はもみくちゃにされる。

「危ない所でした。」

「ああ。」

青木はそう言うと額に浮き出た汗を拭う。

冬だというのに、滝のような汗が出ていた。

「敵第二次攻撃隊です。距離八十海里、数二百。」

「何だと。」

電探員の報告に再び青木の顔が歪む。

「まずいですね、直掩隊も弾が無いでしょう。」

「しかたないだろう、対空戦闘準備。」

浮かれていた機銃員達も再び自分の持ち場につく。

「第二機動部隊はまだか。」

青木がそう呟くが答える者はいない。

「くそっ。」

やるしかない、青木は覚悟を決めると息を吐きだした。





悩みましたが、二部構成にすることにします。

ご意見ご感想よろしくおねがいします。

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