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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
55/80

ハワイ占領の悩み事

最近遅れ気味ですみません。

もう少し頑張りたいと思います。

           ハワイ占領の悩み事





「しかし、困った。」

ハワイ駐屯軍総司令官秋山大将はため息をつきながら書類を見ていた。

彼の困り事というのは、ハワイの流通貨幣についてである。

無論、ハワイの流通貨幣は米ドルである。

日本製のトラックも運ばれてはいるが、

米本土空襲が終わったあとはハワイから撤退することが決まっているため、

十分な数がそろわない。

だから、民間契約の形でトラックを徴収(無論資金は払っている)しているのだが、

米ドルの国内準備高が極端に低い日本にとって困った事態が発生した。

つまり、現地のハワイ人の方が金持ちで、進駐軍の方が貧乏になるという事態である。

現地で徴収する税金で、間接的に進駐軍が潤うにはもうしばらく時間がかかる。

そのため、なんとか工夫して、資金調達をしなければならなかった。

強制徴兵をやればいいと言う軍人もいたが、天皇陛下の、

「我が国は敵国住民を差別することなく戦争を遂行せねばならない。

なぜなら、この戦争は欧米人、アジア人間の差別を撥ね退けるための決断だからだ。」

という勅諭があったため、ハワイ統治もそれに準じて行われなければならなかった。

「そうですね。」

副官の小松少将もため息をつく。

「唯一の救いはトオモロコシの刈り入れ時期を迎えていることでしょうか。」

なにより深刻なのは、食料問題である。

ただでさえ、本国の食糧事情もあまり良くない日本にとってもう一つ問題がある。

それは日本と米国の違い、主食である。

小麦の絶対数が圧倒的に足りないのだ。

ハワイは小麦の生産には向かないためもっぱら米国本土から輸入してきた。

ところが、日本の輸送船に詰め込んできたのは米である。

仕方なく、地元の日系人などには米を、それ以外には小麦を卸している。

「まあ、もうすぐ輸送船が到着します。これで、何とかなるでしょう。」

「そうだな、ところで、まだ、問題があると聞いたが。」

「ええ、工業関係のことですが…。」

秋山はきょとんとする。

「どういうことだ、

工業関係はハワイから大量に鹵獲した工作機器を日本に持ち帰り、

問題があるというよりは日本の工業力の発展になったと思うが…。」

「いえ、そうではなく、ハワイで鹵獲した燃料です。」

「ますます、わからん。聞いたところによると、ハワイの航空燃料は

日本の物より、オクタン価が高く、素晴らしいと聞いたが。」

「そうです、烈風の八四五は二千三百五十馬力ですが、

最大トルクで、二十キログラム、最大馬力で、百五十馬力、増大しました。」

「百五十馬力か…、それのどこが問題なのだ。」

「発動機のシリンダー内圧力が上昇するため、

発熱量が上がり、エンジンが焼きつきやすくなります。

それに、エンジンが過回転し、エンジン破損にもつながります。」

「そうなのか、それではハワイの航空燃料は使えないのか。」

「いえ、現在本土では、ジェット機の開発に力を入れているようですが、

それに使いたいとのことです。それでも多量に残るでしょうから、

あとは現在の我が軍の燃料と混ぜ、オクタン価を下げるしかないですな。」

「ジェット機というと、あのペラがないやつだな。

オクタン価を下げるのはもったいない気がするが仕方ないな。」

「そうですね…。それでは、私はここで失礼します。」

小松はそう言うと秋山の部屋から出て行った。

秋山は小松が出て行った後、煙草を吸いながら真珠湾を眺めていた。

連合艦隊の艦艇がずらりと並んでいるその光景はまさしく壮大だった。

その間からぽつぽつと見えるのは輸送船だろう。

秋山は待望の輸送船団が到着したのを見て、その顔を綻ばせた。





その頃、米国では太平洋艦隊がようやく再建されることとなった。

一九四二年一二月初旬のことである。

その戦力は、

戦艦「アイオワ」「ニュージャージー」

空母「エセックス」「ヨークタウンⅡ」「イントレピッド」「レキシントンⅡ」

軽空母「カサブランカ級」、十隻。

重巡十六隻、軽巡二十隻、駆逐艦四十八隻の大艦隊である。

徹底的に壊滅させられた太平洋艦隊をわずか半年で再建するとは、

やはり米国の工業力は凄まじかった。

しかし、それを眺めるキング海軍作戦部長の表情は硬かった。

一九四三年二月にようやく再建するはずだった太平洋艦隊を、

年内に再建できたのは喜ばしい。

しかし、パナマ運河がやられた今、

ホーン岬から太平洋に廻航しなければならない。

おそらく、日独の潜水艦が大量に待ち受けているだろう。

被害皆無で廻航できるとはキングにはどうしても思えなかった。





新太平洋艦隊司令官に任命されたハルゼー中将は、

訓練に励んでいる戦闘機隊隊長、カイム少佐に話しかけた。

「たしか、カイム少佐だったな。」

「ええ、長官。どうされましたか。」

「いや、エースに一目会っておきたかっただけだ。

それと警告だな。ジャップの野郎は新型戦闘機を出してきたそうじゃないか。

我がF6Fでも歯が立たなかったと聞いているが。」

「仕方ありません。ハワイの航空部隊の錬度は高かったとは言えません。

しかし、現在の太平洋艦隊の搭乗員なら十分やりあえるはずです。」

「そうだな、しかしあの噂は聞いているだろう。」

「……、ジャップの本土空襲ですか。」

「ああ、防げると思うか。」

「正直言って難しいでしょう。

ハワイの航空部隊より、本土の航空部隊の方がまだ錬度が低い。

優秀な奴はみな欧州かこちらに来てますからね。」

「そうだろうな…。」

ハルゼーは前方の戦艦「アイオワ」を眺めた。

満載排水量五万七千トンのその姿は勇壮そのものだ。

しかし、これほどの大きさでもジャップの怪物には及ばないのだ。

ハルゼーはおもわず武者震いしたあと、艦橋の方へ向って云った。





次は米本土空襲の計画案です。


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