表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
48/80

日米戦艦部隊激突す

           日米戦艦部隊激突す





米戦艦部隊旗艦「サウスダコタ」の前方に飛来した、

四六センチ主砲弾は凄まじい水柱を作り出した。

リー中将は信じられないものを見るような眼でそれを見た。

「敵戦艦の距離はどれくらいだ。」

「およそ四十キロです。」

「四十キロでとどくとは…、

ジャップの怪物はやはり十八インチのガンを持っていたということか…。」

それでもリー中将はめげなかった。

「最大戦速。射程距離に入り次第撃て。」

水平線にはぼんやりと八隻の戦艦が並んでいるのが見える。

主砲から煙を上げているのは先頭の二艦だけだ。

あれがヤマトクラスという奴だろう。

三十秒ごとに撃ってくる主砲弾は次第に散布界を狭めていく。

ようやく三万五千メートルにまで近づき、主砲を撃とうとしたときだった。

大和の発射した主砲弾がサウスダコタの艦橋を直撃した。

リー中将他、艦橋にいた者は炎に包まれた。

指揮官を失った米戦艦群は混乱する。

射程距離に入った長門、陸奥も主砲を撃ち始める。

命中弾を得た大和はサウスダコタに狙いを絞り猛射する。

砲塔もすべてやられ、サウスダコタはスクラップと化した。

それでも米軍も必死の反撃を見せる。

四十センチ主砲弾が大和、武蔵に降り注ぎ、甲板を破壊する。

しかし、バイタルパートを破るには四十センチ主砲弾は非力すぎた。

ノースカロライナ、ワシントンの艦橋は血で滑り、

ばらばらになった死体が、いたる所に転がっていた。

それでもリー中将の猛訓練を受けた米戦艦は怯むことなく主砲を唸らせる。

「敵ながら凄まじい者達だった。」

高須中将にそう言わせるほど、米戦艦群は奮闘した。

それでも、伊勢、日向、金剛、榛名が命中弾を得るころには、

四隻の米戦艦は三隻が轟沈し、ワシントンのみが艦としての形を保っているだけだった。

「もういいだろう。」

高須中将はそういって射撃を中止した。

有無を言わせず沈めるのが正しいこととはわかっていても、

ここまで奮戦した無抵抗の艦を攻撃することは彼にはできなかった。

ワシントンからは乗員が次々に飛び降りていく。

「駆逐艦に救助させろ。」

水雷戦も戦闘が終わり、日米の駆逐艦が救助活動を開始する。

この時ばかりは、共に救助活動を協力しあった。

ワシントンがゆっくりと沈んでいく。

救助された米乗組員の中には泣く者もいた。

高須達も同じ軍艦乗りである。

敵艦とはいえ、

沈んでいくワシントンを見るのは忍びなかった。

高須はワシントンの最期に敬意を表し、敬礼した。

大和の甲板に並んだ水兵たちは捧げ銃をした。

それでもまた朝が明けたら、

次はハワイ上陸の支援をするためまた戦うのだ。

ただ、この時だけは日本海軍は米海軍のために黙祷を捧げた。





報告を聞いたニミッツは茫然として、

一分近く口もきけないありさまだった。

あの怪物と戦っても十分やれると考えていたが、

その結果は虎の子の戦艦四隻を失うというものだった。

対する敵艦は二隻が中破、一隻が小破という軽微なものである。

巡洋艦群も殆どやられ、帰ってきたのは駆逐艦六隻のみである。

これで、制海権も完全にジャップのものとなった。

彼は米本土に戦況を連絡するため電話を取った。

夜中にも関わらず、大統領が電話口に出てきた。

「戦況はどうかね。」

しばし躊躇ったが、意を決して報告する。

「はい、大統領。航空部隊は敵新型戦闘機に殲滅され、

戦艦部隊も先ほどの夜戦で壊滅しました。」

二分ほどの沈黙だったが、ニミッツには何時間にも感じられた。

「そうか、ジャップのハワイ占領は防げるのかね。」

「制海権、制空権が日本の手に渡った今、かなり厳しいと思われます。」

「何日持ちこたえられる。」

「ヴァンデグリフトに相談しないとくわしいことはわかりませんが、

一か月が限界かと…。」

「わかった、まだ艦艇はあるだろう。君は本土に戻りたまえ。」

「大統領、その命令だけは聞けません。」

「何を言う、ニミッツ。艦隊が崩壊した今、君が残っても何もならん。」

「私はあの男のように部下を置いて逃げるのだけは嫌なのです。

私の指揮を部下たちは信頼して私についてきてくれました。

その部下の信頼を裏切る真似だけは絶対にできません。

申し訳ありません、大統領。これは私の意地です。

もし、日本軍の捕虜になっても交渉の道具にだけはなりません。」

しばらく沈黙が続き、大統領が重い口を開く。

「私は君を買い被っていたようだ。」

ニミッツは目を閉じる、これで自分のキャリアは終わった。

後は真珠湾を枕に死ぬだけだ。

再び大統領が言葉を続ける。

「君がこれほど熱い男だったとは、冷静な男だと思っていたよ。

よろしい、真珠湾で思う存分、力の限り戦いたまえ。

ただし、死ぬことだけは許さん。

戦争が終わった後も君が必要になるだろうからね。」

「大統領……。」

ニミッツの胸に熱いものが流れる。

「もうすぐ太平洋艦隊が再編する。

そうすれば、君を迎えに太平洋艦隊は必ずハワイにやってくる。

それまで待っていてくれ。」

「わかりました、大統領。お待ちしています。」

そう言ってニミッツは電話を切る。

彼の周りには信頼する部下たちが集まっていた。

「さて、諸君。ジャップにひと泡もふた泡も吹かせてやろうではないか。」

勝利の雄たけびかと思うような歓声が司令部を揺るがした。

航空部隊も戦艦部隊もやられたが、

彼らの不屈の意志は揺らぐことなく日本軍に注がれていた。




あの男とはマッカーサーです。

一応書いておきます。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ