信濃級空母就役す
信濃級空母やっと出せました。
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信濃級空母就役す
一九四二年七月八日の朝、瀬戸内海は深い霧に包まれていた。
「今日は中止した方がいいのではないかな。
漁船などにぶつかったらことだぞ。」
艦政本部の大佐が造船中佐に話しかける。
「電探のテストも兼ねていますから、大丈夫です。
霧もまもなく晴れると思います。」
「しかし……。」
「大佐、彼が悪いのではない、
私が軍機を優先させたのだから私の責任だ。」
連合艦隊司令長官山本五十六はそう言った。
「長官。」
艦政本部第四部長が頭を下げる。
「いいんだ。」
山本はそう言うと第一航空艦隊司令長官小沢治三郎に話しかける。
「小沢君、君はもう見たのかね。」
「いえ、今回が初めてです。」
小沢中将がそう言った時、双眼鏡を目にしていた造船中佐が声を上げる。
霧をかき分けるように出てきたその艦は目を疑うほどの巨大さである。
満載排水量は七万五千トン、大和級戦艦すら超える巨大さである。
そのスペックは、
排水量六万八千トン
全長三百二十五メートル
全幅三十六,五メートル
機関二十二万馬力
速度三十五ノット
兵装
十二,七センチ連装高角砲十基
二十五ミリ連装機銃九十二基百八十四丁
搭載機百三十五機である。
大鳳級空母と同じように甲板に装甲を施したため、
大きさの割に搭載機数は少なめだが、
あまり機数が多すぎると指揮統制能力に問題が出てくるためこの搭載数となった。
甲板は二つの滑走路が端で交差するような形をとっており、
一方が待機場所となるが、緊急時には二機同時発艦が可能とされている。
対空電探は百四十五キロメートルを誇っており、
対水上電探は五十キロメートルと高性能である。
同型艦である「葛城」が寄り添うように波を立て海面を滑っている。
信濃、葛城は一航戦に編入することが決定されており、
搭乗員は基地航空隊から引き抜いたものと、
予備空母搭乗員から腕の良いものを厳選している。
史実ではラバウルで活躍した笹井、坂井、西澤、本田などの撃墜王も
信濃の搭乗員である。
「凄まじい艦ですな。日本がこんなものを作れるようになるとは…。」
感嘆の声を上げる小沢中将に山本長官は苦笑した。
「米国も今頃急ピッチで空母を量産しているのだろうな。」
信濃、葛城は速度を上げている。
「三十三ノット、三十四ノット、三十五ノット。」
計測官の緊張した声が聞こえる。
甲板からは同じく七月に生産が開始された新艦上戦闘機烈風が発艦していく。
日の丸を朝日に輝かせながら六機の編隊をなし、東の空に飛び去っていく。
烈風のスペックは
最高速度六百四十二キロメートル
航続距離千六百キロ
兵装
二十ミリ機関砲二門
十二,七ミリ機銃二丁である。
エンジンは『八四五』十一型、二千三百五十馬力である。
空戦フラップは装備していない。
防弾性能は抜群で、実用上昇限度は一万二千メートルという
最新鋭の名に恥じない高性能艦上戦闘機である。
後継機陣風の開発も始まっている。
「他の航空戦隊も烈風の訓練に励んでいるそうです。」
「そうか、そろそろ私は失礼するよ。」
「どこか行かれるのですか、長官。」
「ああ、ミッドウェーの戦だが…、君は何か疑問に思わなかったかね。」
そう尋ねる山本に小沢は返事を返した。
「そうですな…、米機動部隊の配置が、
我々が来るのを知っていたような配置だったのは驚きましたが…、
まさか暗号が読まれていたと?」
「確信は持てんがおそらく…。軍令部も同じ考えらしい。
だが新型暗号がすぐできるわけではない、
当分は乱数表の変更で乗り切るしかない。」
「そうですか。新型暗号について軍令部と議論に行かれるわけですな。」
「ああ、後はよろしく頼むよ。」
去っていく山本に小沢は敬礼する。
ミッドウェー海戦の後、日本は講和を米国に呼びかけたが応じる気配はない。
まだまだ連合艦隊は働かなければならないだろう。
八月には、日本、満州国、中国国民党、タイ、ベトナム、フィリピン、ビルマ、
インドネシア、自由インド仮政府の九カ国による大東亜会議が開かれる。
仮インド政府はアンダマン諸島、
ニコバル諸島を領土としたチャンドラ・ボース率いる政府である。
日本としては一九四三年五月にはインド奪還の支援を行う予定である。
それには英東洋艦隊の殲滅が必要不可欠である。
日本陸軍の中ではソ連侵攻の案も出ている。
まだまだ日本は落ち着くことはできそうになかった。
ちなみに今後、空母搭乗員で活躍するのは
折笠少佐、工藤大尉、笹井少佐、結城少佐の四人です。