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異説大東亜戦争  作者: たこ焼き
一章
3/80

ハワイ沖の死闘

三話目です。よろしくお願いします。

              ハワイ沖の死闘




一方南雲中将の率いる機動部隊は、そのときカウアイ島の西北西一五十海里の

ポイントまで南下していた。

索敵には、利根と築摩から、零式観測機を三機ずつ出していた。

ほかにも赤城、加賀から艦攻を三機ずつだしている。

ほかの航空機は、修理、給油、再爆装、雷装にかかり、搭乗員は休養していた。

索敵の範囲は約二百五十海里。その間に十二本の哨戒線を張ったのだ。

零式水上観測機は最高時速369キロ、航続距離1070キロ、そして

空戦性能に優れていた。格闘戦では零戦を上回っているといわれているほどだ。

利根の策敵機三番機は第十一線を飛んでいた。

搭乗員の秋津飛曹は、ベテランであり、米艦隊を見つけるべく、

必死に目を凝らしていた。機動部隊の戦力発揮は貴様の手にかかっている

と艦長に言われており、何一つ見逃さないつもりだった。

高度は四千。秋津は黒っぽい、いくつかの点を発見した。

体に電流が発したようだった。

「駆逐艦だ。」

そいつは一隻だけではない。そしてひときわ大きな艦影が現れた

「重巡だ。インディアナポリス級…いや、アストリア級だぞ。」

アストリア級は米海軍が誇る重巡である。排水量九千九百五十トン

速度三十二ノット。主砲は八インチ三連装砲九門だ。

重巡のあとから、ぬうっと、さらに大きな物体が現れた。

ヨークタウン級空母らしい。

秋津の胸は轟いた。宝の山、敵機動部隊を発見したのだ。

いそいで無電のキーを叩く。

「我、利根三番機、敵機動部隊発見。空母一隻、重巡三隻と

駆逐艦九隻を伴う…味方からの方位二百十度、距離二百二十海里

ヒトフタサンマル。」




そのころハルゼー中将は、敵偵察機らしきもの発見の報を

艦橋で受けた。双眼鏡で覗くと、たしかに機影が見える。

「戦闘機を上げますか。」

「ほうっておけ。どうせこっちの位置は報告されているだろう。」

少し考えてから、ハルゼーはそっけなく言った。

「それより、こちらはどうなのだ。敵がこちらを発見しているのに、

まだ発見できていないのか。」

「まだなにもいってきません。こちらには、ツキがないようですな。」

「ジャップめ。」

ハルゼーは顔をしかめ叫んだ。

「発見されたからには、すぐにやってくる。対空戦闘準備とF4Fを上げておけ。」

「わかりました。」




「長官、通信が入りました。」

通信長が赤城の艦橋に飛び込んできた。

その電信紙を受け取り、通信参謀が読み上げた。

「我、利根三番機、敵機動部隊発見。空母一隻、重巡三隻と

駆逐艦九隻を伴う…味方からの方位二百十度、距離二百二十海里

ヒトフタサンマル。」

艦橋はどっと沸いた。

「艦長、発艦準備だ。艦爆、艦攻すべてだせ。空母を仕留めよ。」

ほかの空母すべてに信号が送られ、発艦にかかった。




「ほんとに、ジャップのやつらはいるんですかね。」

ドーントレスの後席で、カトル兵曹はぼやいた。

「こんなとこ、うろうろしてるわけないじゃないですか。

とっくに日本に向かって帰ってますよ。」

「無駄口叩く暇があるなら、もっとしっかり見張れ。」

操縦士のハワ―ズ中尉は怒鳴った。もっとも中尉も、彼と

同じ心境ではあった。一時間たつが、影も形もない。

彼らのドーントレスは四百五十キロ爆弾を積んでいる。

敵を発見すれば、そいつをお見舞いするつもりだった。

そのあと、五分は飛んだだろうか、

彼は素晴らしい光景を見ることができた。

一時の方向に、紺碧の海に、真っ白な航跡が見えた。おびただしい数である。

すごい艦隊だ。空母が七隻…いや八隻もいる。前衛には、駆逐艦を従え、

戦艦が二隻いる。こいつは大した獲物だ。

「カトル、通信しろ。我、敵機動部隊を発見せり。空母八隻、戦艦二隻、

重巡二隻、駆逐艦多数…味方からの方位十五度、距離百九十マイル。」

ハワ―ズは偵察に夢中になっていたため、工藤大尉の零戦に気付かなかった。

気付いたときには、猛射を食らい、機体が激しく振動した。

ハワ―ズは横手から、恐ろしくスマートな航空機が突っ込んでくるのを見た。

その俊敏な動きは間違いなく戦闘機であった。

「中尉。」

カトルの悲鳴を聞き反射的に操縦桿を倒した。

しかし遅かった。

次の瞬間機体が蹴飛ばされたかのように一回転した。

零戦の二十ミリ弾が垂直尾翼をふっとばしたのだが、ハワ―ズにはわからなかった。

きりきり舞いしながら、墜ちていく機体を工藤は眺めていた。

それが、米海軍がゼロ・ファイタ-と呼び恐れる零戦と出会う、ハワ―ズ中尉の

最初で最後の時だった。




日本機動部隊から飛び立った、攻撃隊は、真珠湾攻撃の六割強、一九六機だった。

総指揮官は瑞鶴の高橋赫一少佐である。

一九六機の攻撃隊は、一時間ほどで敵艦隊を見つけた。

そのとき、エンタープライズから飛びたった航空隊とすれ違っていたのだが、

彼らは気付くことなく進んでいた。




その航空隊は日本のそれとは、比べ物にならないほど、貧弱だった。

ドーントレス一五機

デバステータ七機

援護のF4F五機の計二七機

これでもハルゼーがせいいっぱい放った攻撃隊である。

この攻撃隊の指揮をとるのはジョンソン少佐であり、彼は進撃を続けた。

どうせ人間いつかは死ぬのだ、どのようにして死ぬか、

それが重要なのだと考えながら。




「レーダーに触接。多数の機影、こちらに向かってきます。

距離五十マイル。」

「多数じゃわからん。何機だ。」

ハルゼーは怒鳴った。

「わかりません。百五十機いや、それ以上です。」

通信員の声は上ずっていた。無理もない、実戦は初めてなのだ。

「戦闘用意。」

ハルゼーは叫んだ。

「ジャップの飛行機を近づけるな。撃って撃って撃ちまくれ。」




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