米海軍新型戦闘機飛翔す
すごく短いですね、すみません。
次ようやくミッドウェー海戦です。
米海軍新型戦闘機飛翔す
六月十八日、午後。
真珠湾を見下ろすマカラパ丘の上にあるニミッツ大将の司令部で、
ニミッツ、参謀長のドンメル少将、フレッチャー少将、スプルーアンス少将、
リー少将、キンケイド少将などの海軍の首脳、
そして幕僚たちが作戦会議を開いていた。
もっとも作戦の細目はすでに決定されており、その確認に過ぎなかった。
迎撃部隊は二十一日には出港することになっていたのである。
迎撃部隊は第十七機動部隊と第十八機動部隊、
そして、リー少将の率いる戦艦部隊が主軸となっている。
戦艦部隊を機動部隊の護衛とする議論も出たが、
ノースカロライナ級は二十七ノットしかでないため
随伴できないとして反対された。
第十七機動部隊はスプルーアンスが指揮し、空母「ワスプ」「ホ―ネット」からなる。
第十八機動部隊はフレッチャーが指揮し、空母「サラトガ」からなる。
総指揮はスプルーアンスが執ることになっている。
他に護衛部隊として、巡洋艦六隻、駆逐艦八隻を率いるキンケイド、
潜水艦部隊一九隻を率いるリグレット少将がいる。
ミッドウェーの海軍航空戦力は、
最新鋭のF6Fヘルキャット戦闘機六機、
F4Fワイルドキャット戦闘機二一機、
デバステータから更新されたアベンジャー雷撃機十七機、
ドーントレス二十二機、カタリナ飛行艇三十二機が配備されている。
他に陸軍機、B-26が八機、B-17が一九機配備されている。
B-17は空の要塞として名を馳せており、強力な重爆である。
情報参謀がまとめた情報によると、
日本軍は三方向から迫ってくる可能性が濃厚である。
機動部隊、攻略部隊、支援部隊である。
しかし、攻略部隊に機動部隊が含まれているかどうかあきらかではない。
そして、大型戦艦を中心とする打撃部隊も含まれているかは分かっていない。
ジャップが軍縮から抜けたあと、新型戦艦の建造に入ったのはわかってはいるが、
その性能は謎のままだ、米海軍ではサウスダコタ級と同程度だと考えられている。
しかし、大型戦艦がいなくとも、ジャップは恐るべき敵である。
敵機動部隊は、
ハワイ以来歴戦の部隊で錬度も我が軍をはるかに上回っている。
米海軍の望みは最新鋭のF6Fだった。
F6Fヘルキャットのスペックは
最高時速六一二キロメートル
航続距離千六百キロ
兵装
十二,七ミリ機銃六丁であり、
零戦五十二型と同程度の海面上昇率、
そして急降下性能、武装、防弾性能は零戦を上回っていた。
しかし、二千馬力のエンジンを持ってしても、運動性能は零戦が勝っていた。
ただ、F6Fのパイロットは日本海軍に勝るとも劣らぬ猛訓練を行っており、
錬度の方は心配ないと言えるだろう。
唯一心配する点は、日本海軍の空母搭乗員
と違い実戦の経験が少なすぎる点だろう。
それども、
この海戦で負けたら後がないことを知っている米海軍将兵達は必死で
訓練を行っている。油断しきっている日本海軍将兵とは正反対だった。
一方ミッドウェーではカイム少佐率いる、
F6Fヘルキャット隊が飛行訓練をしているとこだった。
カイム少佐は珊瑚海で沈められた空母「ヨークタウン」の搭乗員である。
空母「ワスプ」でハワイからミッドウェーに運ばれ、
ミッドウェーの戦闘機隊隊長を任されている。
彼は猛烈な復讐心に燃えていた。
珊瑚海では多くの仲間や信頼する上司が死んでいった。
彼は零戦に撃墜され機を脱出し、海に浮かんでいるところを駆逐艦に引き上げられた。
ヨークタウンのパイロットで助かったのは彼を含めたった十二人だった。
その内、二名がカイム少佐と同じF6Fに乗って日本海軍の襲来を待ち構えている。
「やっと、ジャップの野郎に復讐できますね。」
無線電話で言ってきたのは同じヨークタウンのパイロットのジョン中尉である。
「そうだな。」
彼はそう言うと目前の空を見つめる。
愛機のエンジン音しか聞こえない中で、彼は死んでいった仲間達に約束していた。
ジャップ達にも同じ苦しみを与えてやると…。