インド洋の激戦
突然ですが、ずーと謎だったんですが、
サマービルですか?ソマービルですか?
それともどちらでもいいというやつですか?
悩みます。
インド洋の激戦
四月四日、日本艦隊は敵偵察機によって発見されたが、直掩の零戦が撃墜した。
しかし報告が送られてしまったことは確実である。
「直掩機を増やしますか。」
参謀長の草加少将は第一航空艦隊司令長官南雲中将に提案した。
「そうだな。」
新たに二十一機の零戦五十二型が舞い上がっていく。
しかし、敵艦隊に出会うことなくコロンボに接近してしまった。
じつは東洋艦隊はセイロンの東に進出して日本艦隊を探し求めており
燃料が減ってきたので、アドゥにもどって補給をしていたのである。
アドゥ環礁はイギリス艦隊の秘密基地であり、
日本艦隊はセイロンが本拠地だと信じ込んでいた。
偵察機の報告を受けたソマービル提督は補給の終わった、
戦艦一隻、空母二隻、軽巡二隻、駆逐艦六隻の高速部隊を率いて出撃した。
残りは補給が終わり次第日本艦隊の後方に回らせることにした。
四月五日、日本機動部隊は水偵と艦攻を出し、索敵と偵察を始めた。
相前後して、敵飛行艇がこちらを発見する直前に飛龍の直掩機がそれを撃墜した。
十時四十分、真珠湾奇襲の英雄、淵田中佐率いる航空機百二十四機がコロンボ
上空に侵入。港に残っている艦船や港湾施設の攻撃を開始した。
この時コロンボ上空には、ハリケーン、フェアリー・フルマーなどの戦闘機
およそ三十機が待ち構えていた
「くそ。」
戦闘機隊隊長リガル少佐は悪態をついた。
艦爆を一機撃墜したまでは良かったが、後方に敵戦闘機が張り付いてきた。
急上昇してこれを逃れようとしたが敵は執拗に張り付いたままだ。
汗がにじむ。視界の端では部下がバタバタと落されていく。
敵戦闘機の噂は聞いていたがここまでとは思いもしなかった。
日本のパイロットの錬度は稚拙で爆撃機にさえ落されるという開戦前の評価は
出まかせだったようだ。南方ではこのスマートな機体を
落した者は皆無だったと聞き警戒はしていた。しかしここまでとは……。
後方から激しい銃撃音が聞こえ、機体に衝撃が走る。
「煙草が吸いたいな。」
リガルがそう呟くと同時に激しい爆発音が聞こえリガルの愛機は
コロンボの空に散った。
リガルの機を撃墜した折笠少佐は周りを見渡した。
コロンボ港はもうもうたる黒煙に覆われてはいるが正直撃ちもらした物が多い。
上空には味方の戦闘機が乱舞しており、敵戦闘機は見渡らない。
リガルが落ちた場所に黙礼すると、折笠は母艦である赤城の方へ戻っていった。
「どうするべきか。」
南雲はそう呟いた。
淵田からは第二次攻撃の要請が打電されたが、源田中佐に反対された。
「長官。今は第二次攻撃より敵艦隊との遭遇に備えるべきです。」
そう力説する源田に動かされて、南雲は決断した。
「第二次攻撃はしばらく見合わせる。索敵を十分にし、敵艦隊を発見せよ。」
「わかりました。」
動きが取れない空母ほどもろいものは無い。
米国では卵を入れた籠と呼ばれるほどだ。
第一次攻撃隊がやがてぞくぞくと帰還し始め、午後1時までには全機収容できた。
南雲の判断の正しさを裏付けるように、ちょうどそのとき重巡「利根」が放った
策敵機から敵発見の報告が入った。
「敵巡洋艦らしきもの二隻見ゆ。基点よりの方位二百五十度。距離二百カイリ。」
すこしおくれて、軽巡「阿武隈」の策敵機からも同じ報告が入った。
南雲長官は「蒼龍」爆撃隊隊長の井草少佐に艦爆隊の指揮を命じた。
艦攻隊も新鋭の天山艦攻を出した。艦にとどめをさすのは魚雷である。
その間利根策敵機から詳細な報告が入ってきた。
「敵巡洋艦はケント型、針路二百度、速力二十六ノット。」
ケント型はサー・ダインコートの傑作であり、居住性、航洋性に優れた艦である。
それを受けて、「赤城」「加賀」「蒼龍」「飛龍」からの航空隊は発艦した。
井草少佐が敵艦を発見したのは五十五分後のことである。
敵艦にとって不幸なことに直掩機はいなかった。
急降下爆撃は指揮官機にならって槍のように降下する。つまり指揮官機の判断が
命中を左右するということだ。
井草は命令を下した。
「突撃せよ。爆撃方向四十五度、風向二百三十度、風速五メートル。」
艦爆隊は傾きつつある太陽を背に二隻の巡洋艦に襲いかかる。
一番艦「ドーセットシャー」、二番艦「コンウォール」だった。
このときの艦爆隊の命中は驚異的な命中率を示した。
その命中率は八八パーセント。ドーセットシャーには三十一発、コンウォールには
十五発が命中した。
二百五十キロ爆弾とはいえ、それだけの爆撃を食らえばどうしようもない。
艦攻隊の出る幕は無く二隻は横転して沈んでいった。
しかしイギリス艦隊の悲運はそれだけでは終わらなかった。
トリンコマリ港の攻略に向かった機動部隊は空母「ハーミス」を発見。
ここでの艦爆隊長は千早少佐だったが、ここでも命中率八十二パーセントという
驚異的な数字を出した。
ハーミスは艦内のいたるとこで大爆発、火災を起こし二十分後には、沈没してしまった。
ハーミスを護衛していた駆逐艦二隻もついでのように撃沈された。
しかし、日本機動部隊も敵戦闘機の奇襲を受け三機が撃墜された。
ハーミスの沈没で完全に戦意を失ったソマービル大将はこれ以上の戦いは東洋艦隊を
すり減らすだけと判断、残りの部隊をアフリカに引き上げる決心をした。
インド洋には敵艦隊の姿はなくなった。
しかし、日本艦隊もまた、新たな任務を果たすため帰路についた。
次は欧米の戦況の説明です。
多少おかしな点もあるかもしれません。