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古代人類

 暁から助けを求める依頼。

平凡な学生で、平和ボケしているただの日本人に、正直何ができるのかはわからない。

だけど、願ってもない非日常的なことに、白夜は心が躍る。

「さっきまで死んでいた俺に、何ができるかわからないけど、

 俺にできることであればなんでも協力するよ!」

「・・・。ありがとうございます。」

暁は、またもや申し訳なさそうにする。

寒さで白夜はくしゃみをし、暁は笑顔で笑った。

「その恰好じゃ、人間は寒いですよね。風邪を引く前に衣服を見つけましょう。」

今の白夜は、ほぼ裸同然だったので、二人は遺体安置所を後にした。

「・・・。とりあえずこの服を着てもらうか、それとも他の方の服を着るかですけど。

 どっちにします?」

遺体が身に着けていた物品が保管されている部屋が見つかったが、

白夜が来ていた服には、べっとりと血の跡がついていて、とても外には出られない状態だ。

他の服も寝間着や女性もの、サイズの合わない服しかなく、

組み合わせもできそうで、絶望的状況だった。

「うーん、自分の服を着るしかなさそうだな。外に出たら俺はどこかに隠れて、

 この人のお金で、暁に服を買ってきてもらうしかなさそうだね。それでいいかな?」

「大丈夫です。裏口は暗って、人はいなそうだったので、そちらから行きましょう。」

「そうしよう。それにしてもよく侵入できたね。」

「古代の技術は、現代の技術とは比べ物にならないくらい発展していましたからね!

 いろいろできるんです。例えばこう見えてあなたより怪力なんですよ?」

暁は握りこぶしをして自慢をしたが、まったく筋肉はついてなく、

非力にしか見えない。

「流石にそれはないよ。こう見えて俺も鍛えてるんだ。ベンチも100超えたし!」

「ベンチというのは分かりませんが、私は鉄の扉をこぶしで破れます。」

「・・・。」

暁に殴られないように気を付けようと、白夜は心に決めた。

暁の案内で裏口まで辿り着き、扉のドアノブが引きちぎられているのをみて、

本当のことを言ってたのが明らかになった。

「あの辺りの茂みに隠れていてください。あなたが着れそうな上着を買ってきます。」

暁はそういうと、人間離れした速さで服を買いに行った。

言われた通り、茂みの中に身を潜め、スマホで情報収集をするが、

古代人類については、ネアンデルタール人やホモ・エレクトゥスなど、

歴史の勉強をしていれば知っていることしか見つからなかった。

「ネットにそんな情報載っているわけないか。今後どうなるんだろう。」

ふと物思いにふけ、一気に不安になる。

家族はもういないが、友人たちにも心配をかけてしまったり、

今後の人生はどう歩めばよいのか、何でもかんでも不安になる。

「なんか、眠くなってきたな。」

急な眠気に襲われ、白夜は眠ってしまった。


 「どうしましょう。どこもお店が閉まってます。困りましたね。」

少し陽は上がって、明るくなってきたが、こんな時間に空いている服屋はなかった。

「危険かもしれませんが、白夜さんの家で調達するしかないですね。」

白夜の自宅には、keep outのテープを張られ、玄関ドアも施錠されて入れない。

暁は少し迷ったが、後で謝ればいいと思い、鍵を壊して中に入った。

血の跡がまだ残されており、また申し訳ない気持ちに見舞われた。

近距離から撃たれたからか、貫通した弾が後ろの壁に突き刺さっている。

「白夜さん、痛かったですよね。この恩は必ず返します。」

白夜の部屋から上着とシャツ、必要そうな財布を手に取り、足早に家を出ようとしたとき、

たまたま玄関に飾ってある写真が目に入る。

「これは白夜さんの両親。」

自宅を背景に、赤ん坊の白夜を抱えた両親の写真で、とても幸せそうな家族写真だ。

神風カミカゼさん。息子さんは私たちが責任を持って保護いたします。安心して眠ってください。」

両手を合わせ黙祷し、写真も持って家を後にした。


 夢を見た。

久しぶりの両親との夢だ。

生きていたら実現していただろう。

白夜がサッカーをしているのを、両親が応援してくれている。

終わった後に、食事に行った。

楽しい食事だった。

だが、突如として爆音が鳴り響き、地面が揺れた。

店を出ると、空から隕石らしきものが地上に降り注いでいた。

「おとうさん。おかあさん。怖いよ。」

「大丈夫だ白夜。お父さんがついている。」

「お母さんが守ってあげるわ。大丈夫よ。」

しかし、真上から赤く燃え上がる球が落ちて、死ぬ寸前に覚醒した。

「・・・さん。白夜さん。起きて、」

「暁、いつのまにか寝ていたみたいだ。」

「寝ちゃって当然です。もともと寝ようとしていましたし、

 傷の修復にも体力を使っていますからね。」

「そういえばどうやって生き返らせたんだ?」

「修復指示したナノマシンで、傷と傷んだ体を修復し、脳内の電気活動を再開させました。」

「すごいSF映画見たいの設定だな!かっけえ!」

「設定じゃありませんから。」

ぷんぷんしている暁がシャツと上着を渡してきたので、着替えた後、

袋から食べ物と温かいココアを出した。

「血が足りないと思いますし、体も冷えていると思うので、これをどうぞ。」

「ありがとう。いただくよ。」

冷めきった体が温かいココアで温められて、眠気も吹き飛んだ。

お腹も空いていたので、あっという間に完食した。

「そろそろ移動しましょう。白夜さんの遺体がなくなったことが分かったら、

 また追手が来るかもしれません。」

「そうだね、行こう。行き先は?」

「今はまだ、あまり詳しく伝えられないので、東北のほうとだけお伝えいたします。」

「ここからだと、公共交通機関を使わないと厳しい距離だな。」

「公共交通機関は難しいです。私は身分証を持っていません。」

「あっ、、、」

現在、公共交通機関は日本国民であれば、誰でも無料で利用できるようになっている。

それは身分証だ。

この身分証には、免許や電子マネーなどの情報が入っており、

日本国民でない暁は持っていない。

借りた身分証は、今日の午前中には無効処理が施され、使用できなくなるだろう。

「なので徒歩での移動になりますし、あまり監視カメラが設置されていないところを通らないと。」

「レンタカーで車を借りて移動するのはどうかな。」

レンタカーは顔確認があるが、契約者だけ確認が必要なので、白夜だけの対応で済む。

「それだったら監視カメラを気にしないで、すぐに目的地に着きそうですね!そうしましょう!」

近くのレンタカーで車を借り、二人は目的地に向け出発した。

だが二人は、犯してしまった過ちに気づくことはできなかった。

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