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追われる少女

平凡で平和な日々。

普通なら幸せであるはずだろう。

他国では今なお、争いで命が失われている。

だけど、俺は非日常を求めている。

異世界転生で勇者として召喚されたり、

魔法が使えるようになったりなんでもいい。

そう思い続けていたときに突如として、、、

 息が白くなるくらいに寒い冬の夜に、

薄着の少女が駆け抜けている。

「こちら021、予定通りアプローチに入る。」

少女は後方から追ってくる車をまくために、全力で走っていた。

「特務、少女を見失った、捜索を要請。繰り返す、少女を見失った。早急に見つけだして捕らえろ。」

「・・・了解。」

「多少傷つけてもいい、必ず生きたまま捕まえるんだ。」

「・・・了解。捜索を開始する。」


 キーボードを打つ音が鳴り響く部屋で、

今年大学生になったばかりの男が、バトルロワイアルゲームをして楽しんでいた。

しばらくするとヘッドホンを置いて、結果に落胆した。

「また負けたか~、最近全然勝てないな。うまい人しかやってないじゃん。」

PCの電源を落とし、寝る準備を始めていると、インターホンが鳴った。

ピンポーン。

「こんな時間に誰だよ。サークルの誰かかな。」

似たようなことがあったため、

インターホンで誰が来たか確認せず、そのまま玄関ドアを開けた。

「もう寝ようとしてたんだ。今日は別の奴の家に行ってくれ。」

「すみません。助けてください。」

そこには、知らない少女が立っていた。

大学であったことはなさそう。

だけど、見覚えはある気がする。

「あの~、どちら様でしたっけ。サークル何十人もいるから、全員は覚えてなくって、、、

 俺は白夜ハクヤっていうんだけど。」

「初対面です。悪い人たちに追われているので、匿っていただきたいのです。

 事情は話したいのですが、近所の目があると思いますので、、、」

確かに薄着だし、近所の目も気になったので、とりあえず家に上がらせた。

ソファーに座らせ、白夜は温かいココアを作り始めた。

ココア以外あったかい飲み物を用意できなったので、特にリクエストは聞かなかった。

「とりあえず、これでも飲んで温まって。」

「ありがとうございます。ですが、まずは事情を聞きたいですよね?」

「まあ、気になるね、、、」

少女はカップを手に取り、事情を話し始めた。

流れるような説明だったので、全体は把握できなかったが、

大まかなことは理解できた。

「つまり、自分は現代人類の文明の前に栄えていた、古代人類の末裔で、

 そのことを知っている謎の組織が君を捕まえて、古代技術を得ようとしているってことだよね。」

「簡単に言うとそうなります。随分と要約されますね。」

「そういう仕事に就こうとして、勉強しているから自然にね。」

正直、ゲームしていた後で、寝る前でもあったので、

頭が少ししか働いていなかったのは言わないでいた。

非日常は求めていたが、そんなものはないと自覚はあったので、

驚いてはいたが、不思議と冷静にいた。

「それで、この後はどうするの?」

「しばらく匿っていただいた後、一緒に来ていただきたいです。」

「一緒に?」

「はい。」

「なんで?」

「それは、、、」

ピンポーン

本日二度目のインターホンが鳴った。

「ごめん。こんどこそ多分、サークルの誰かだ。今日は泊まらせてあげられないって言ってくる。」

「・・・了解。」

今度もインターホンで誰が来たか確認せず、玄関ドアを開けた。

またもや知らない人たちだった。

そして察した。

こいつらが彼女の言っていた謎の組織の連中だと。

「どっ、どちらさまですか?」

「こんばんは。夜分遅くに申し訳ございません。」

女の声!?

長身である程度がたいもよさそうだったので、男だと勘違いしていた。

ローブを深く被っており、顔は見えない。

「こんばんは。何の用でしょうか?」

「ここに赤髪の少女は来ませんでしたか?」

赤髪の少女?

彼女は普通に黒髪だった。

逃走中はウィッグでも被っていたのかと、自己解決した。

「赤髪の少女は見ていません。」

「赤髪の少女は見ていない?ということはそれ以外の人はいるのですか?」

「いっ、いえ、寝る前だったので頭が回っていなくって。今日は誰も来てないですよ。」

「そうですか。どうして誰が来たか確認せず。出迎えてくれたのですか?」

「サークルの人が、今ぐらいの時間に来たりすることがあるからですが。」

「そうですか。誰かと住んでいる。もしくはだれかいるのですか?」

「いません。」

突如、その女性は笑みを浮かべた。

今の会話で、来たことがばれたと焦り、冷や汗が出てきた。

「どうなさいました?」

「その靴、女性用ですよね。」

目をしたにやると、彼女が履いていたと思われる靴があった。

もう言い逃れしても、謎の組織の連中は家に入ってくると思い、

少し大きめの声で会話を続けた。

「いや。これは元カノが置いて行ってしまった靴です。捨てるに捨てきれなかっただけですから。」

「すみませんが、家の中を調べさせていただきます。」

「不法侵入です!勝手に入らないでください!」

バスッ

急に胸が熱くなるのを感じ、手で触れると生暖かい液体の感触がした。

血が噴き出し止まらない。

力なく地面に倒れ込んだが、まだ意識があった。

すぐに死ぬもんだと思ったけど、死なないもんなんだな~っと、

心の中でつぶやいた。

謎の組織の連中が、自分の上をまたいで家の中に入り込み、

彼女を探し始めてしまった。

「しくじったな~。まさか普通じゃない死に方になるとは。うまく逃げ延びてく、、、れ。」

そこで白夜はこと切れた。

白夜が大きな声で話していたおかげで、

組織が来たことに気づき、暁はすでに逃げられていた。


「速報です。22日の1時頃、神奈川県横浜市の住宅で独り暮らしの大学生が、射殺されました。

 胸を撃たれ、ほぼ即死だったそうです。聞き込みから銃声はしなかったことが分かり、

 サイレンサー付きの拳銃が使用された可能性があるとして捜査が進められております。

 引き続き情報が入り次第、続報をお伝えいたします。次のニュースです。・・・」


横浜市内のとある遺体安置所

「この子、ヤクザとかとトラブルがあったのかしら。」

「どうですかね。僕は政府の人に暗殺されたのかと思ってますけど。」

「その可能性もありそうね。ほんとかわいそうに。」

「そうですね、あとは明日にしましょう。事務仕事が残ってますし。」

「そうね。後片付けも終わったし行きましょうか。」

遺体安置室の扉が施錠され、部屋の中は静かになった。

しばらくすると施錠されていた扉がこじ開けられて、誰かが入ってきた。

部屋の明かりをつけ、白夜の遺体の前までくると、

青白く輝く液体を、白夜の口内に流し込んだ。

すると、白夜の胸の銃創が青白く輝き、傷口が塞がる。

脈が戻り、体温も少しずつ上がり始め、呼吸を始め、

部屋に入ってきた人物は、白夜の頭に手を当てて、言った。

「戻ってきて。」

白夜は飛び起きたが、寒さで体が震えていた。

「俺、生きている。感覚がある。撃たれた後は!?」

銃創があった場所に手をやるが、後が無かった。

「どうなっているんだ、、、」

「ごめんなさい。」

聞き覚えのある声、あの少女の声。

そこには、匿ってあげた少女がいた。

申し訳なさそうな表情で、こちらを見つめている。

「俺は撃たれて死んだはずだよな。なんで生きているんだ。」

「あなたは一度死にました。ですが生き返らせました。」

少女は白夜の手を取り、少し取り繕った笑顔で話した。

「私はアカツキ、古代人類の末裔です。

 どうか私たちを救ってください。」

これが非日常的な物語の始まりになることに、俺はようやく実感し、心を躍らせた。

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