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ポンコツ勇者と性格の悪い姫  作者: 明けの明星


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思いがけない再会

ルイザとの再会です。

収穫祭のフローラの店でイレーネを待っていたのは、

ホッピイ農場でイレーネと共に働いた魔法使いのルイザだった。


「ルイザ、本当にルイザなの?」

ルビア魔法学校に入学したはずのルイザが何故ここにいるかわからず、喜びながらもとまどうイレーネ。


「何故ここにいるの?魔法学校に入ったんじゃなかったの?」

とイレーネ。


「れっきとしたルビア魔法学校の生徒だよ。校外実習でここに来たってわけ」

魔法学校では卒業が近くなると、学校を出て実地訓練を行うという。

でもまだ入学してからさほど経っていないルイザがもう実地訓練だなんて。


訝しげな顔をしているイレーネに、

「最近はね、学年を問わずコンスタントに校外実習をするんだよ」

と解説するように言うルイザ。


「この子がね、いきなり店にやってきて、今日イレーネが来るでしょう、それまで待ってていい?だって」

ルイザはフローラの店でかなりの前から待っていたようだ


「あれ?ヤアナ?なんでここにいるの?」

ヤアナの姿を見たルイザが言った。


「それはこっちのセリフよ」

とヤアナ。


「ルイザはヤアナのこと知ってたの?」

イレーネはホッピイ農場ではヤアナと会うことがなかった。


「そうだよイレーネ達が行っちゃったすぐ後かな。竜巻被害の修復のためにホッピイ農場を手伝いにきたんだよ。そこで会ったの。私もその後すぐにルビアに行ったから会ったのは一度か二度だけどね」


「そうなんだ、アイルの奥さんっていうから私と会わなかっただけで、普段もホッピイ農場で働いているのかと思ってた」

というイレーネ。


「私は普段はあのあたりの農場の子供たちを相手に絵画教室を開いているのよ。

ホッピイ農場のお子さんたちも私の生徒よ。

そういえば、農場主の息子のルシアンはよくあなたの絵を描いていたわ。

あまりに似ていないからわからなかったけどね」

とヤアナ。


「あの子、イレーネと結婚するんだってずっと言ってたわよ」

ルイザの言葉に、


「だから、私モテるでしょ」

とイレーネがおどけて言った。


「それはそうと、何故私に会いに来たの?なにか用でもあった?」

とイレーネがルイザに聞くと、


「あの、イレーネに話したいことがあって」

そう言いながら、フローラとヤアナを見るルイザ。


「じゃあ、何か甘いものでも食べながら二人で話すといいわ」

とフローラ。

どうやらルイザは聞かれたくない話をしたいようだ。


ルイザとイレーネの二人で、フローラの店を出た。

そして数ある露店のなかから、イレーネが一番気に入っている甘いスイーツを買い、収穫祭会場の至る所に設置されているベンチに座った。


周囲に人がいない事を何度も確認したルイザが、声を潜め

「あの、この国には実地訓練で来ていたのですが、おばあちゃんに言われて貴女に会いにきました」

ルイザはいつもより丁寧な口調で話した。


「おばあちゃん?アゼリアが?」

とイレーネ。


「やはりおばあちゃんの事を知っているんですね。最近になっておばあちゃんと連絡が取れるようになったんです。そのおばあちゃんが、貴女に会いに行ってそしてお守りしろと私に伝えて来たんです」


ルイザの話では、ルイザの祖母、アゼリアとは長く交信が途絶えていた。それがここ最近、アゼリアの言葉がルイザに届くようになったというのだ。


「ルイザ、私の事」

イレーネの言葉を遮り、


「私に貴女をお守りさせてください、イレーネ王女」

とルイザが膝まづきながら言った。


「あの、その堅苦しいの、やめようよ」

とイレーネがルイザの手を取りながら言う。


「あなたは私の正体を知っているかもしれないけど、今の私はホッピイ農場で一緒に働いて、暴漢をやっつけて竜巻に立ち向かった、ただのイレーネよ」


「それでも」

と口ごもるルイザ。


「おばあちゃんから、秋の国にいるイレーネをお守りせよ、って言われて、なぜかすぐに貴女の事をおもったの。そうしたら貴女の事がどんどんわかるようになって。

あなたはアデーレ王国、王女イレーネだってはっきりとわかったのよ」

とルイザ。

ルイザはアゼリアの言葉がきっけけでイレーネに強く興味を持ったのだ。


「アゼリアは私のために尽力してくれている、偉大な魔法使いよ、とても感謝しているの。

でも、いますぐにあなたに守ってもらう必要はないわ。あなたはこのまま魔法学校で勉強を続けて。

そしていろんなことを学んでほしい」


「でも貴女専属の魔法使いが消滅してしまって」


アゼリアはシャロンが消えてしまったことも知っているのだ。

アゼリアがとても可愛がっていたシャロン。


「シャロンがいないのはとても寂しくて心細いわ、でもねこの旅をしている間はシャロンには頼らないつもりでいたの。だからこの旅の間は専属の魔法使いは必要ないわ。

それがアフロディーテの意志でもあると思うから」

そう言うとイレーネは、


「ねえ、アゼリア聞こえているでしょう。貴女の孫、ルイザには素晴らしい才能があるけれどきちんと学ぶことも必要だと思う。だから彼女がルビア魔法学校を卒業して認定魔法使いになったとき、改めて考えましょう」

と遠くにいるアゼリアに語り掛けるイレーネ。


すると、イレーネとルイザの心にアゼリアの声が届いた。


「イレーネ、私は少し先走ってしまったようですね。

私がこうやって声を届けることが出来るほど、貴女の心は変化しているんですもの。

この旅は貴女自身で乗り切らなくてはいけないわね。

ルイザ、貴女の才能はずば抜けているわ。だからこそ貴女の両親は貴女を魔法使いにはしたくなった。

魔法学校への入学も難色を示したのです。

でも貴女の意志は変わらなかった。ルビアで心身ともに成長してちょうだい、貴女ならできるはずよ」


アゼリアの言葉を聞いて顔を見合わせほほ笑む二人。


「今、ルイザのお陰でイレーネの元気な姿を確認できた、それだけで十分。

イレーネ、よい旅を。それからルイザ、しっかりと勉強するのですよ」

と言うと、二人の心からアゼリアの気配が消えていった。


「あなたが会いに来てくれて本当にうれしい」

そう言って、ルイザを抱きしめるイレーネ。


「そんな、身に余る光栄で」

と言いかけたルイザだが、


「もう面倒くさい、イレーネ、本当に会いたかったんだよ」

とホッピイ農場で一緒に働いていた時と同じ口調にもどっていた。


「貴女が王女なこと、わかっているけどあなたのこの旅の間だけはお友達のイレーネでいて」

上目遣いにイレーネを見ながらルイザが言う。


「もちろん、私はずっとそのつもりだよ」

とイレーネが答えた。


「で、さあイレーネ、あなたコスプレ大会の優勝者なんだって?」

とルイザ。

フローラから「キング&クイーンコンテスト コスプレ部門」で優勝したことを聞いていたのだ。


「明日のお祭り最終日の表彰式でもう一度コスプレするんでしょ、私も見に行くね」


「もう一度?」

ルイザの言葉を聞いて驚くイレーネ。

表彰式に参加することはわかっていたけれど再度コスプレとは。

フローラの事だ、またなにかすごい衣装を作っていることだろう。


フローラの店に戻ったイレーネとルイザ。

そこで明日の表彰式のことを聞いてみる。


「あ、せっかくだから衣装は用意した方がいいかと思って。

これ見て、とっておきの力作。ドラマ、ベッキーの旅の最終回エンディングで流れていた

ベッキーの花嫁姿よ」


人気ドラマ「ベッキーの旅」の最終回のエンディングで、王女に戻ったベッキーの花嫁姿が一瞬映ったのだ。純白のドレスを着たベッキーが物思いにふけりながら一人で佇む、そんな映像だった。


ベッキーの結婚相手は明かされぬままだったが、視聴者の間では大きな話題となっていた。


「王女なんだから、親の決めたとこかの王子と結婚させられて、あんな浮かない顔なのよ」

「やはり、王女の地位をすてて、ロイドの元に嫁いだんだ。でも国を思ってあんなに寂しそうなんだ」

そんな意見が飛び交っていた。


その時の花嫁衣裳そのものをフローラは既に作りあげていた。

「あとは、明日イレーネに着てもらうだけよ」

とフローラ。


「明日の表彰式にはフーベル伯爵夫妻も列席なさるのよ、すごいわ。伯爵が直々にお選びになる特別賞も発表されるわよ、受賞できたらそれはすばらしいわ」

とフローラがワクワクした様子で言う。


フーベル伯爵夫妻、馬車で一緒だったあの伯爵夫妻だ。

「こんなところで会えるなんて」

イレーネもうれしい気持ちを抑えることが出来なかった。

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