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ポンコツ勇者と性格の悪い姫  作者: 明けの明星


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買い物に行ってみたら

ネオ・トワイライトでのお買い物。

翌朝、ホステルで軽く朝食を摂ったあと、またコンベンションセンターのインフォメーションに向かう、イレーネとハンス。

今度は買い物のためお店のリサーチだ。


「食堂で会った人たち、買い物ならカインモールだって言ってたわよ。何でもそろってお安いんだって」

とイレーネが言う。


このホステル・フロンティアに泊まっているのは宿泊にはあまりお金をかけない旅行者のようだ。

昨日のレストランにいた客とは客層が全く違っていた。


インフォメーションに着くと、前と同じくアリスが対応してくれた。


「お店ね、今は収穫祭が近いからどの店もセール中よ。いい時に来たわね」

と言いながら、いくつかのお勧めを教えてくれる。


「でもやっぱり一番はカインモールかしら。その中にヘイリーズって衣料品店があるわ。

そこならカジュアルからドレスまでなんでも揃うわよ」

アリスにそう聞き、そのカインモールへ向かうことにした。


カインモールそこは、たくさんの店が入ったショッピングセンターだ。

まだ開店したばかりだというのに、すでに多くの人がいた。


「あ、あそこアリスの教えてくれたヘイリーズってお店よ」

イレーネが指さしながら早足になる。


店内には若者向けの商品が並んでいた。

目を輝かせるイレーネ。


「そういえば、イレーネって普段はどんな洋服を着ていたんですか?あの、王宮で」

とハンスが聞いた。


ハンスの知っているイレーネ王女の恰好といえば、いつもかしこまったドレス姿ばかり。

王宮で一日一度の散歩の時間でさえ、少しだけ大人しめのというだけの一般庶民とはかけ離れたドレスをまとっていた。


「いつも?ドレスだよ。私のために布を織り、型を取り仕立てたドレス。

専属の衣装係が用意してくれていたわ。

でもねこんな風にお洋服が売っているのは知ってたわよ。お買い物視察で見たもの」

とイレーネがさらっと言う。


「ねえ、このお洋服、同じものなのにサイズが違うわ」

と驚くイレーネ。


「それは、いろんなサイズの人がいるからですよ」


イレーネもハンスもこの、ネオ・トワイライトで目立つこともなく、引け目を感じることにもならなそうな洋服をいくつか買い求めた。

イレーネはそれに合わせた靴やバッグも手に入れた。

大きな買い物袋をかかえて、店を出ようとしたとき、

その片隅に、


「期間限定、デザイナーフローラの店」

と書かれたスペースがあった。


そこにいたのは、フローラというデザイナー、自分の服をここで売っているようだ。

そのフローラ、イレーネを見つけると手を振って近寄ってきた。


「あの、昨日、レストランで会ったわよね」

そう言いながら。

昨日のレストランで隣のテーブルにいた男女、その女性だ。


「偶然ね。私はフローラ。ファッションデザイナーよ。まだ駆け出しだけどね。

ここを借りて自分のデザインした服を売ってるの。

昨日は私たち結婚記念日で、奮発してあのレストランでお祝いをしたのよ」

と話すフローラの元に一人の男性がやってきた。

昨日の男だ。


「あ、これが旦那のイーサム、よろしくね」

そう言うフローラ。


「ここにはお買い物?」

フローラに聞かれて、服の調達をした経緯を話す二人。


「そっか、あまり目立たない恰好ね。ならうちの服も見てくれればよかったのに」

とフローラ。


そう言われて、小さなフローラのショップ内にある服をみるが、どれも奇抜なデザインだ。

これはかなり主張が強そうだ。


「そっか、残念だけど、もういろいろ買ったあとで。ごめんね」

とイレーネ。


そこに、

「収穫祭、キング&クイーンコンテスト」のチラシがあるのを見たイレーネ、


「あ、そうだ、ハンス、これに出てみようよ」

と思わずハンスに声をかけた。


「え、出る気あるの?じゃあこっちに出てみない?

コスプレ部門。これ、男女がテーマを決めたコスプレをするんだけど、衣装担当係にも賞がでるのよ。

私達プロデュースで、どうかしら?」

と会話をきいたフローラがすかさず口をはさんだ。

これで入賞でもすれば、デザイナーとしてもハクがつくそうなのだ。


「でもイレーネ、そんな目立つことしていいんですか?」

とハンスが小声で言うが、


「大丈夫でしょ、それにコスプレしちゃえば私だってわからないよ」

とイレーネ。


「じゃ、決まり。私とイーサムがプロデュースってことでとりあえずエントリーしちゃうね」

と早速、店内の端末機から仮申し込みをするのはフローラに指示された夫のイーサム。


「うーん、どんなのがいいかな」

イレーネとハンスをまじまじと見つめ、しばらくして、


「やっぱり、これが一番ぴったり」

と言って、出してきたのは、

ドラマ「ベッキーの旅」の載った雑誌だ。


「あなた、イレーネだっけ、ベッキーになってもらうわ。そして、ハンス、あなたはロイドに」

衣装もメイクもまかせて」

とフローラは楽しそうだ。


「あのドラマ、見てるの?」

とイレーネが聞くと、


「もちろん、毎週あのドラマを見るのが楽しみで楽しみで。でも明日で最終回。ロスになりそうよ」

とフローラが熱く答える。


「私も、昨日最終回直前スペシャルっ言うのを見てすっかりハマったわ。

明日の最終回、絶対に見る」

とイレーネも熱い。


「ねえねえ、ベッキーって何者かしらね、明日全部わかるんでしょーどうなるんだろう。

ロイドとは結ばれるのかしら。あー楽しみ」


フローラとイレーネがドラマの話で盛り上がる中、

「あいつのあのドラマへの愛はすごいから、完璧なコスプレにすると思うぜ。

イレーネはいいけどあんたはロイドになりきれるかな」

とイーサムがハンスにつぶやいた。


そのドラマの事を全く知らないハンス。

フローラの持っていた雑誌を眺めてみると、そこにはベッキーというきれいな少女と青年ロイドがツーショットで載っていた。

イレーネは確かにベッキーにぴったりだ。

旅をする最寄りのない少女、という設定らしいのだが、そうは思えない身なり、容姿。

だからこそ、謎は深まりドラマの人気は凄まじい。

そしてその傍にいる、ベッキーを支え、ともに旅する青年ロイド。こちらもなかなかのイケメン。

勇者なのか、マントと剣がかっこいい。


今や国民的アイドルと言ったこのカップルのコスプレ、誰にでもなりきれるというレベルではないようだ。


「これは無理があるだろう」

ハンスはうなだれながらつぶやいた。

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