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ギャルの本懐

 これから何が起こりえるのか。

 私はそのことを考える材料を探して、ミノムシのように体をよじりながら周囲を見渡した。

 荷台は大人六人が座ったらギューギューになる程度の広さだ。

 そして備え付けの椅子のようなものがある。

 たぶん物を運ぶ荷台ではない。

 運搬用の荷台なら椅子はいらない。

 だとすると人を運ぶための荷台だ。

 私みたいに捕らえた者を運ぶ護送車のようなもの。

 つまり、私はドナドナされている。

 ふむ。状況は理解した。

 私は最初からここにぶち込まれる予定だったということ。

 つまり、私は人為的にこの世界につれてこられたのだ。

 では私は何のために呼んだのか。

 そしてこれからどうなるのか。

 それを考えてみよう。


 可能性としては三つ。

 一つは盛大なドッキリ。

 実はここは異世界に見立てた現実世界。

 異世界に飛ばされたというとんでもない場面を演出して、精神的に追いやられたかわいい私がおたおたするのをみんなが観察してるの。

 私の可愛さに目をつけたテレビ局が「美少女どっきり!」みたいな感じでドキュメンタリーを撮っていて、水曜日のバラエティで放送するとか?

 うん、言っててありえない。

 テレビだとしたら殴られた時点で放送できないもの。

 それに団長と呼ばれたメルヴィン。

 あの人は本気で私のことを睨んでた。

 その感情に演技はなかったと思う。

 冗談とか通じそうにないし。

 だからテレビとかのドッキリ企画の可能性はなし。


 では次の可能性。2つ目。

 これが一番可能性が高いかも。

 それは私が犯罪者として捕まって護送中ナウ。

 私には心当たりはないけど、不本意に犯罪に加担してしまったということはありえる。

 例えば、ぶーちゃんが言ってた異世界転移?とかいう奴で犯罪組織の拠点に送り込まれたとか。

 メルヴィンが団長と呼ばれていたので、もしかすると軍隊なのかも。

 そうなると犯罪組織の摘発で踏み込んだ時に私が偶然転移されて、「なんだ、あいつは!逮捕だ逮捕!」になった可能性が高い。

 彼らが軍隊なら護送用の馬車があるのも納得がいく。


 ただ、そうなると私は誤解を解かなければ処刑される運命かも。

 処刑されたら私、天国に行けるかな。

 異世界の天国って現実世界の天国と同じだったらいいんだけど、なんだか違う気がする。

 仏教の天国とカトリックの天国は全然違うけど、それ以上の隔たりがありそうだもん。

 お父さんやお母さんとは天国で再会する予定だから、やっぱり異世界では死ねないや。


 そんな悲惨な第二の可能性だけど、三つ目の可能性はさらに最悪なシナリオ。

 もしこれが的中したら、私の人生はジ・エンド。

 即死同然のわかりやすい不幸の最期。

 それは彼ら、メルヴィンたちが犯罪グループだった場合だ。


 団長と呼んでいたから軍隊の可能性も高いけど、盗賊団でも「団」だから団長となる。

 盗賊団。だとしたらどんな犯罪をしているんだろう。

 街を襲って強奪するのかな。

 それだけならまだしも捕まえて人身売買とかも普通にありそう。

 日本ではありえないけど、海外の発展途上国なら人身売買はなくはないらしいし。

 もし、それが当たりだったとしたら、捕まった私はどうなるんだろう。

 真っ先に性犯罪が頭に浮かんだけど、その可能性は低いかな。

 もしヤリモクだったら、その場でやっているでしょ。

 やって、まわして、満足したら殺す。

 これが後処理も楽な方法。

 それをしなかったから彼らの目的はそれではないのかも。

 エノーラお姉様のように女性も普通にいたしね。

 でも油断はできない。

 女性が盗賊団の仲間である場合、捕虜を安心させるための可能性が高い。

 有名な国際テロ組織に女性工作員がいる理由はハニートラップだけじゃないって解説動画で見たことあるし。

 だから、きっと私は人身売買に使われるのだろう。

 奴隷の可能性もあるし、ソープみたいなお風呂屋さん的接客業の可能性もある。

 たしかに私はかわいいけど、ぺたんこだから売り物にはならないと思うけどな。

 いや、この世の中には変態はいっぱいいる。

 DMで「処女を十万で買います!」ってきたこともあるし。

 あほか。それは未来の旦那様のものじゃ。

 しかし、処女を失うくらいならまだマシな展開だってありうる。

 例えば、臓器を売られたら。

 漫画の知識だけど、確か肝臓が三十万だっけ。

 目玉も五万とか十万とか値段がついていた。

 漫画の主人公は自分の臓器を賭けて人生を取り戻すの。

 つまり、私の臓器は金になるということ。

 そうなったら確実に私は殺される。

 

 やばい、やばい、やばい!

 殺される可能性があるなら今すぐに逃げなきゃ。


 でも、体はがんじがらめ。

 ギュウギュウに縛ってある。

 見たところ、ロープを切れそうな刃物もこすりつける出っ張りもない。


 詰んだ。


 もはや自力で逃げることは叶わない。

 きっと助けを呼べる状況でもない。

 絶体絶命、人生最大のピンチ。

 私が普通の女の子ならここで諦めていたかもしれない。


 だけど、私は諦めが悪いんだ。

 だって師と仰ぐギャル先生が言ってたもん。

「どんなにクズって言われてもさ、私らにはやりたいことがあるじゃん。なにがなんでもそれをやり通す。それが私ら、ギャルのモチベーション。誰になんと言われても私たちは私たち。私らの信念は誰にも曲げられない!」

 思い出すだけで、かっこいい。

 惚れる。抱かれたい。ついていきます!

 ギャル先生が諦めない気持ちを教えてくれたのに、私が諦めてどうすんのよ。

 最後まで抗って生き延びてやる。

 そして、最高最強のかっこいいギャルになる!

 そのために頭を使え。

 ギャル先生も言ってた。


 ギャルはバカじゃない。どうでもいいことには興味がないだけ。

 本当に大事なものに力を発揮することに関しては誰にも負けないって。


 今こそ、その力を発揮する時だ。

 考えろ。きっと、これまでの流れで事態を打開できるヒントがあるはず。

 考えろ。考えろ。

 私は必死になって打開策を模索した。

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