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JCギャル、エルフに囲まれる

 ザッザッザッザッ!


 大勢の足音が迫ってくる。


 え、なに?なに?なに?


 ビクビクしている中、現れたのは白いワンピースを着た一団だった。

 アバウトに二十人くらいは駆け込んで来ている。


 その人達は松明を持っていたので、その姿はよく見えた。

 全員、綺麗な金髪ロン毛をなびかせている。

 羨ましいほどのサラッサラ。

 てっきり女性なのかと思ったけど、よく見るとほとんどが男性だった。

 細身の体に、サラッサラの金髪ロン毛の男。

 どの人も西洋風の顔立ちをしていた。実に美男子。


 いきなりのイケメンぞろいに思わず夢見心地になるのだけど、呆けてもいられない。

 なぜなら、みんなすごく怒っているから。

 みんな、眉を釣り上げて私を睨んでる。

 なんなんだ、この状況。


 私は瞬時に推察する。


 寝て起きたら見知らぬ場所。

 それも洞窟のような特殊な空間。

 すでに消えてしまったけど、床には漫画で見た魔法陣のような模様。

 そして目の前には大勢の美男美女が服装を揃えて集まっている。


 情報を整理する中で、私は一つの答えにたどり着いた。


 きっと、ここはコスプレイベントの会場だ。


 よく見たらみんな耳を加工して長くしている。

 明らかにファンタジーを意識した装いだ。


 そういえば、友達のぶーちゃんに教えてもらったことがある。

 最近は異世界物と呼ばれるアニメで面白い新作が流行っているそうだ。

 その中の登場人物に、ロン毛で耳が長く、ローブを身につけることが多いエルフという種族がいる。

 ぶーちゃんは巨乳が好きなので、高身長爆乳天然のお姉さんエルフが一押しだとか。


 なるほど、謎は全てとけた。


 この人たちはファンタジーアニメが大好きなコスプレイヤーの方々だ。


 かなり忠実に再現していることからも、熱狂的なジャパニーズアニメのマニアたちなのだろう。

 だとすると彼らが怒っているのも理解できた。


 コスプレはどうしても奇異の目で見られがち。

 だからコスプレを楽しむために人目を避けて洞窟に集まっているのだ。


 私に対して怒っているのも、せっかくのイベントを邪魔されたからに違いない。

 私は腕を組んで頷いた。


 わかる、わかるぞ。

 私だって根っからの正統派ギャル。

 そのために日焼けして、髪も染めて、カラコンだって入れてる。

 ギャルであり続けるために大好きなギャルの服を頑張って作って、部屋の中で鏡に向かってK-popのエロいダンスを練習したりもしてる。

 この姿を見られたら死ぬ自信がある。

 彼らにとってはそれと同じくらい本気なのだろう。


 私は服についた砂を払いながら立ち上がり、自慢の超絶かわいい笑顔を彼らに向けた。


「みんな!ごめんね!私、あなたたちの邪魔をするつもりはなかったの」


 私がそう声をかけると、エルフに扮した人々は困惑しながら顔を見合わせる。

 ふふ。どうやら私の魅力に怖気ついているみたい。

 私はもっとエルフの扮装をした方々の警戒心を解くべく、聖母マリアのほほえみをイメージしながらフェミニンに笑顔を振りまいた。


「コスプレだからって引け目を感じているの?そんな必要はないわ。むしろ、私たち、日本人にとってはそれは嬉しいことよ。だって日本の文化が世界に認められている証拠だもの!」


 喜びを表現すべく、両手を上げてジャンプする。

 しかし、みんなキョトン。

 日本語では伝わらないのか。


「コスプレ、イズ、ベリーファンタスティック!ユーアーナイス!」


 サムズアップとウインクをして英語で褒め称えてみた。

 だが、みんなギロリ。


 ふむ。英語もダメか。

 見た目がヨーロッパっぽいし、フランス語とかオランダ語じゃないと通じないかな。

 さすがに習ってない言語はわからんぞ。


 しかし、私はギャル。

 社交性とノリの良さで逆境を渡り歩くハッピーヒロイン。

 人生のテーマは人類皆友達。

 心がつながれば戦争もなくなって世界をハッピーにできる。

 さあ、みんな。

 心を開いて友達になろうよ。


「オープン・ユア・ハート!」


 そう言ってハグするように手を広げた時、私は全身が凍りついた。


 シャキン。


 金属音と共に、私の目の前に剣先が向けられてる。

 正面に立つエルフのコスプレをした男性が親の仇か!という表情で剣を突きたてていた。


「ぎゃあ!」


 思わず叫んでしまう。


 叫んだ挙げ句、後ろにひっくり返って尻もちをついた。

 恐怖は痛みも消す。

 痛みなど忘れて、私は叫びながら翻してダッシュした。


 逃げねば!逃げねば!殺される!


 ぎゃあ。ぎゃあ。ぎゃあ。

 洞窟の中にこだまする自分の悲鳴を聞きながら、私は奥の方へと走った。


 すると男性の怒声が聞こえてきた。


「ウベクルム、ハセオッシャ!」


 なんだ、その言語!

 東南アジアなのか!それともアフリカか!

 ツッコミを入れようと振り向いた次の瞬間、信じられないものを見た。


 それは炎だった。

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