第5部第4話
>Naomi
「お姉様? 私の?」
「ええ、ただし、腹違いの、なんだけど、ね」
先生の告白。鷹野さんにとってショックだったに違いない。
いきなり姉が居る事を知ったら、戸惑うよね。私もそうだったし。
「でも私、一言もそんなことは……」
「あなたの父親に捨てられたの。私の母さんが死んだ後ね」
長い沈黙。
「……父は、再婚だったと聞いています。私の母は、病で亡くなりました」
「そう……」
一呼吸置いて、先生が続ける。
「あの男を……父親を殺したわ」
「え!?」
「自分の親でもあるんだけどね……どうしても許せなかったの」
あの後大怪我した彼が病院に運ばれた時には、もうすでに息は無かったらしい。
今やあの広大な家には桐花さん一人しか住んでいない。
「それに私は、魔族にも魂を売ったの」
「魔族……」
「目的を達成するためにはこれしかなかった。後悔はしてないわ」
「そんな……」
「会いたかったわ……本当は会わないほうが良かったのかもしれないけどね」
「いいえ……私も、逢えて嬉しいです、お姉様っ」
二人の瞳から涙が溢れてくる。
「こんな私でも、姉として見てくれるの?」
「もちろんです、家族ですから」
「ありがとう……」
そして二人は、お互いをギュッと抱きしめ合った。
「どうでも宜しいのですけど、そろそろきちんと説明していただけませんこと?」
あ、ここにもう一人居るの忘れてた。
と、姉さんが間に割って入る。
「まあまあ、細かいことはお城で話しましょ」
「うん、そうだね、ルビスも待ってると思うし」
「ちょっと、貴女達人間でしょう? どうしてルビス様の事、呼び捨てで呼べるんですの?」
やっぱりルビスは特別な存在らしい。
「ルビス様は、精霊界の中で、一番高貴なお方なのですわよ」
私たちの言葉が見事にハモった。
『どこが?!』
巨大なコランダム城の門。ここに来るのも随分と久し振りだ。
門番に通行証を見せる。
「ちょっと、どうしてあなた達がお城に入れるんですの?」
やっぱりまだ信じられないんだろうなぁ。
「それに、どうしてアイリまで通行証を持っているんですのっ?!」
「いや、レーコと一緒に前来た事があるから」
「レーコさん、後できっちり説明して頂きますわ」
「……」
うわ、おもいっきり睨んでる。怖っ。
「まあまあ、後で説明するからさ。さ、どうぞ」
恐る恐る足を踏み入れるリュートさん。
彼女の様子を見てると、やっぱり王宮って特別な場所なんだという事が感じられる。
勤務中の彼に声をかける。会うのは随分と久しぶりだ。
「やほ~、カルス」
周りの兵士が何事かとこちらを向いた。
「……馴れ馴れしく声をかけるな! 全く……それにしても懐かしい顔だな」
「へへ、久し振り」
「それにしても、あれだな」
「ん?」
私と姉さんをジロジロ見るカルス。何か、視線が妙にヤラシい。
「そうやって姉妹で並ぶと、どっちがどっちだか判らんな」
『そんなに似てる?』
「声までハモリやがって。そっくりじゃねぇか」
と、カルスの視線が私の後ろに移った。どうやら、リュートさんと目が合ったらしい。
「見ない顔だな。その制服はリヴァノールか」
「は、はい!」
カルスに声をかけられ、慌てて敬礼するリュートさん。
「そういえば、リュートって、騎士団に憧れていたよね」
「……」
カルスを前に緊張しているのか、顔がこわばっているリュートさん。
炎の彼女(確か、アイリさんとか言ったっけ)の言葉も聞こえていないようだった。
でも、あのカルス(へっぽこ)だからね。なんか笑える。
「ほらリュートさん、そんな緊張しなくても」
鷹野さんが彼女をなだめる。
「で、でも、この方は……第二騎士団の……」
カルスの左胸に付いたエンブレム。それが、騎士団の隊長であることを意味していた。
「へぇ~。いつの間にそんな出世したのよ」
「今日付けでな。お前達は、まだ聞いていないのか?」
「え、まだって事は」
「ああ。その可能性はある。それに、ルビス様に呼ばれているのなら、なおさらだ」
なるほど。どうやらここに居る3人は騎士団入隊候補らしい。
「リヴァノールから何人か候補が上がっていたからな。おそらくな」
「彼女は、私と同じクラスなんです」
鷹野さんがリュートさんを紹介した。
「そうか、じゃ、見込みがあるな」
「随分と、信頼されているのですね。レーコさんは」
「ふむ……」
カルスは、少し考えた後、こう言い切った。
「他の女どもは良く分からんが、レーコは俺より強いぞ」
「……えぇ?!」
そこに居る全員が驚いた。
「カルスさん、私貴方にまだ一度も……」
「実力は俺よりあると思うが」
うん、私も正直そう思う。鷹野さん強いもん。
「まあ、そんなことはどうでもいいか。ルビス様がお待ちだ」
「久しぶりだなぁ、ルビスと会うの」
「あなた達、何者ですのっ?!」
謁見室の前には、一人の女性兵士が立っていた。誰だろう?
姉さんが彼女に話しかける。
「スピカさん、ルビスはいる?」
「ああ。だが判らんな。どうしてルビス様がお前達の守護などをしているのだ?」
「色々と事情があってね……あ、そうだ」
私達に紹介していない事に気付き、こっちに顔を向けた。
「紹介するね。この人はスピカさん。今度、ルビスの近衛に抜擢された人だよ」
近衛、という言葉にアイリさんが目を輝かせていた。
「今までは、オニキス様の護衛をしていたから、殆どこの国には居なかったからな」
オニキスという人はルビスの父親で、外交官らしい。
道理で逢った事無い筈だ。昨日まで帰っていたけど、また出掛けて行ったらしい。
ルビスのお父さんか……どんな人なんだろう。会いたかったな。
スピカさんの先導で部屋に入る。普段と変わらないルビスがそこにはいた。
「久し振りだね、ルビス。1年振りかな?」
「そうですね。もうそんなに経ちますか。相変わらず元気そうね」
落ち込んでると思ったけど、どうやら大丈夫らしい。
「レーコ、それからアイリ。無事でよかったわ」
「ルビスさん、お体のほうは大丈夫なんですか?」
「ええ、大丈夫です。随分と心配をかけましたね」
「いいえ、ルビス様……無事だと信じていましたから……」
鷹野さんによると、アイリさんはルビスを崇拝しているらしい。
なんか、すでに目がイッちゃってる……
と、私たちの後ろでただ一人膝まづいている人が。
ルビスが近寄る。リュートさんはさらに緊張して体を固くする。
「リュート=ミシュラルと申します、ルビス様」
「逢えて嬉しいわ、リュート」
「私を招き入れて頂き、光栄です」
「ふふ、そんなに緊張する必要はありませんよ」
ルビスの手がリュートさんの肩に触れる。それだけで体を震わせる彼女。
「へ~、リュートでも緊張することがあるんだァ」
「ちょ、ちょっとアイリ! 何をおっしゃるの?!」
「なんだ、やっぱりいつものリュートじゃない」
どうやらリュートさんは、人前であまり素性を見せない人のようだ。
「もうっ、私だって……」
「へへ、悪い悪い。こんなリュートの姿、初めて見るから」
「ふふ、アイリ、そのぐらいにしておきましょ? ね」
ルビスに指摘されて、ばつが悪そうに顔を赤らめるアイリさん。
と、急にルビスの目つきが鋭くなる。
「……ユキ、妹さんに会った感想は?」
「嬉しかったです、とても」
ニッコリ微笑むルビス。
「その気持ち、忘れてはいけませんよ」
「はい……」
ルビスは先生が魔族だと判っていたんだろう。
やっぱり、ルビスは優しい。
「ところで、ルビス様、どうして私たちが呼ばれたんですか?」
アイリさんの質問に、表情が暗くなるルビス。
「大体はヨーコから聞いていると思いますが――」
ルビスの話はこうだ。
今回の魔族たちの襲撃で、国全体が壊滅的な被害を受けてしまった。
王宮は半壊。街の中心から郊外の広い範囲に渡って建物が倒壊。
お城はすぐに修復されたが、酷いのは人的被害らしい。
サファイア様を始め、近衛で騎士隊長のスヴェンさんなど、騎士団はほぼ壊滅。
また、教会や学校など、人が集まる所を狙われた。
丁度お祭りの最中だった為、かなりの死者が出たらしい。
ルビスは運良く城を明けていた為、無事だったけど。
「ここに居る皆さんの力を借りたいのです。もうあんな思いは沢山ですから」
「でも、力を貸すといっても、何をすればいいんですか?」
鷹野さんの質問に、少し表情が暗くなるルビス。
「これから、貴女方にはこの王宮で寝泊りして貰うことになります」
「王宮で、ですか?」
意味が判らず呆けたアイリさんの前に突然ルビスが歩み寄る。
「アイリ=クリスティア」
「は、はい」
緊張でみるみる体を固くする彼女。
「貴女にはこれからこのヨーコと一緒に私の付き人をしてもらう事にしました」
「つ、付き人、ですかっ?!」
彼女の目の輝きが変わった。
「リュート=ミシュラル」
「はい」
次はリュートさんの前に立つ。
「貴女をコランダム第1騎士団入隊を命じます」
「第1……騎士団」
「この国を平和へと導いてくれることを期待していますよ、リュート」
「あ、ありがとうございます! ルビス様!」
「それからレーコ」
「は、はい」
最後に鷹野さん。
突然振られてドキッとしたようだ。
「貴女にも騎士団に入隊して貰うつもりなの。まだ何処になるかは判らないですけど」
「でも、私は……騎士団なんて……」
彼女なら絶対遠慮するだろうと思った。前回の近衛の話も断ったぐらいだし。
でも今回は事情が違ったようだ。
「ごめんなさいね。本当は貴女の意向も尊重するべきですけど、もう決定事項だから」
「そうですか……」
少し顔をうつむかせる。
「でも、学校はどうするんですか? まだ卒業もしていないのに」
「大丈夫ですよ。あなたたちにはここから通ってもらうことになっていますから」
どうやら準備は万端にしてあるらしい。これなら断る理由も無いよね。
「それから、ミラに3人を特待クラスに編入できるようにお願いしておいたから」
「すごいね、特待だなんて……」
特待クラスというのは、将来の王宮入りが約束されたクラス。
つまり、卒業と同時に即、王宮で働くことになるらしい。
ただし、王宮に寝泊りしている事は、学校にも極秘だそうだ。
「絶対に黙っていてね。色々面倒になるから」
ルビスが皆に念を押していた。
それから、リヴァノールは正式に騎士団養成学校となったようだ。
今回の事件で、兵士の数が減ってしまった為らしい。
「でも、こんなに恵まれてていいのでしょうか」
「何言ってんのよ、良いに決まってるでしょ。もっと自分に自信を持つ。いい?」
姉さんの言葉にも、なんか余り反応しない。何処まで謙虚なんだか。
「では3人とも、これから宜しくね」
ルビスが一人一人にエンブレムを胸に付ける。
3人とも不動の敬礼。
アイリさんは、彼女の念願叶ってルビスの付き人に抜擢されたわけで。
「まあ、近衛にはなれなかったけどね、でも嬉しいよ」
アイリさんはニコニコしながら、
「だって、ルビス様と朝から晩までいつも一緒に居られるんだもん」
いずれバレるな。ルビスの性格。
「ん? どうしたのレーコ。浮かない顔して」
「い、いえなんでも……」
後で聞いた話だけど、鷹野さんも、私と同じことを考えていたみたい。
彼女の幻滅する姿が目に見える。
そんな浮かれているアイリさんに、リュートさんが一言。
「アイリ、あなたがしっかりしてもらわないと、私も自分の仕事が出来ませんわ」
「へんだ。リュートこそ。ヘマをしてルビス様を困らせないでよね!」
「何ですって?!」
「何よ、やる気?」
ばちばちっ、と火花が散る。
『むむむむむむ!』
あー、つかみ合いが始まった……止めなきゃ、まずい、かな?
ふと、横を見ると、姉さんは呆れ顔で、ルビスは苦笑。鷹野さんにいたってはおろおろするだけ。
何、この光景……
「いつものことですから」
「そーなんだ……」
いいのか? それで。
「お前達、うるさいぞ! 」
スピカさんの怒号が響き渡る。ビクリとすくみ上がるアイリさんとリュートさん。
「仮にもルビス様の御前だぞ! 騒ぐなら他へ行け!」
「スピカ、そんなに怒鳴らなくても」
「ルビス様、しかし……」
「いいのよ、スピカ。この子達は私が責任を持ちますから」
ルビスさんに諭され、半ば諦め顔になるスピカさん。
「……判りました……いいかお前ら、ルビス様の迷惑になる事だけはするなよ、いいな」
「はい。すみません……」
なぜか鷹野さんが謝っていた。
「ふふ、レーコが謝ってどうするんですか」
「あ、つい……」
まあ、鷹野さんらしいな、と思ったわけで。
「全く、アイリのせいで怒られたじゃありませんの!」
「なによっ、リュートだって騒いでたくせにっ」
後ろではまだあの2人が言い争っている。
懲りないなぁ……
「――さて、これからが正念場ですね」
それを横目で見つつ溜息をつくルビス。
「この国の未来は、あなた達にかかっているのですよ、レーコ」
「はい……あの、ルビスさん、一つご質問が」
「あら、何かしら?」
「私は、具体的には、何をすれば……」
確かに、王宮の一員といっても、見当が付かない。兵士みたいなことでもするのかな?
「レーコには騎士団の一員として、王宮と、学園の警備に就いて貰う予定よ」
「私なんかで務まるのでしょうか……」
鷹野さんの肩を、ルビスは微笑みながらポンポン叩く。
「大丈夫ですよ。あなたは十分強いですから。もっと自分に自信を持っていいわ」
「はい、ありがとうござ……ひゃぁああ?!」
ボンッ
「レーコ?!」
「鷹野さん?!」
突然、流れ弾が飛んできた。リュートさんの放った魔法らしい。
「……こらぁ! お前達! いい加減にしろ!!」
今まで黙っていたスピカさんがついにキレた。
槍を振りかざして二人に向かっていく。追いかけっこが始まった。
その様子を眺めながらルビスが一言。
「――やっぱり、人選ミスでしょうか……はぁ」
大騒ぎもひと段落したところで、私は、ルビスに聞いてみた。
「でも、どうして急にそんな話になったの?」
私の質問に、リュートさんが反応する。
「そうですわ。それに、なぜ、面識がない私が選ばれたのですの?」
「それは私も思った。ルビス様、私より強い方は、他にも大勢いると思いますが」
すると、ルビスはにっこりと笑って。
「貴女達は、学園を代表して大会に出ていましたよね」
「はい、でも、どうしてそれを……あ、もしかして!」
「貴女達の剣さばきは、他の生徒よりも上回っていました。私がこの目で見ましたからね」
その言葉に、二人はびっくりする。
「え、あの試合、ご覧になっていたんですのっ?!」
「は、恥ずかしい……」
二人とも、見る見るうちに真っ赤になっていく。
「それに、事態は急を要するの。魔族の方でも、新しい王が誕生しました」
「新しい魔王?!」
詳しい話を知らないリュートさんが驚いていた。
「……お母様は自ら望んで命を絶ったようです。恐らく限界を感じていたのでしょう」
少し沈黙するルビス。何を話すべきか考えているようだった。
「ノエルもそれが判っていたのでしょう。あの子がそれを望む筈がありませんから」
ちょっと待って?! 今ノエルって。
「ノエルが……次の魔王、なの?」
「ええ。そうなるでしょう」
凄く意外。セラかツヴァイあたりだと思ってた。
「おそらく、魔全体をまとめるのは難しいでしょう。暫く混乱が続くはずです」
「そっか、じゃ、今までより狙われる確立は減るのかな」
「そうであって欲しいけど、私はそうは思わないの」
「どうして?」
「私は、お母様ほどの力も影響力もない。全ての精霊が従ってくれるとは思ってないわ」
ルビスの話を聞くと、サファイア様がいかに大きな存在だったかが想像できた。
「私を快く思ってない方々が、人間や魔族と手を結ぶという噂も聞くの」
そこまで言った後、フッ、と微笑むルビス。
その時は判らなかったけど、今思えば私達を安心させる為だったのだ、と思う。
「何処まで本当かは分からないけれどね」
リュートさんとアイリさんは、サッパリ判らないらしくお互い顔を見合わせていた。
「ああ、そういえば、二人には判らない話だったわね。ごめんなさい」
リュートさんは軽く首を振り、つかつかと鷹野さんに歩み寄って。
「レーコさん、説明していただけますね?!」
……いや、だから怖いんですけど。
「あらあら。もし良かったら、私が説明しましょうか、リュート」
「い、いえそんなっ、ルビス様にわざわざ……」
「いいんですよ。それに、この子達は、私の命の恩人ですからね」
「それは……どういう事ですか?」
「私は、お母様の命を受け、騎士団の一員として逃げた魔を追っていたの――」
続く
あとがき
「こんにちは、鷹野です。
前回アイリさんが天に召されてしまったので、今回から私が司会をする事になりました」
「まだ死んでなぁ~い!!」
すぱーん(ハリセン)
「ひゃあぁぁぁぁっ?!」
「レーコ! アンタ、いつからそんな性格になったのよ?! 全くっ」
「(スリスリ)それにしても、前回は災難でしたねぇ」
「よく言うわ、ホント……ところで、今日のゲストは?」
「今日は、私のお姉様に来てもらってます」
「へー、レーコのお姉さんか、って、また魔族じゃない!!」
「嫌ですか?」
「う~ん。レーコには悪いけど、やっぱりちょっとね」
「そう、随分な嫌われようね、私も」
「あ、お姉様」
「前回何があったか知らないけど、そうやってすぐ敵視するのはよくないと思うの」
(お姉様、知ってるくせに)
「何か言った、玲子?」
「い、いえ。なにも」
「それにしても、私、お姉様がいたなんて、びっくりでした」
「あの男のことだから、どうせ貴女には教えていないと思っていたけど……」
「あの、話が全然見えないんだけど」
「あ、すいません、アイリさんは知らなかったですね」
「私が魔族になったのは、生き別れた玲子を探すためだったの」
「レーコを探すために?」
「ええ。父親に捨てられて孤児院で過ごしていた時、セラ様が私を拾って下さったのよ」
「でも、それって、紅蓮のセラの誘惑に負けたってことじゃ……」
スパーン
「うう……おねぇ様まで……」
「玲子、貴女は少し黙ってて貰える?」
「ごめんなさいぃ」(しくしく)
「セラ様の手伝いをしながらずっと玲子を探し続けていたのよ」
「大変だったんですね……魔族になったこと、後悔してますか?」
「――そうね、もっと色々やり方あったかもしれないわね。でももう遅いの」
「お姉様……」
「今じゃ、この体も結構気に入ってるの。一生付き合っていかなきゃいけない体だしね」
ズズーン
「何の音?!」
「ああ、たぶん結界に誰か引っ掛かったんだと思いますよ」
「誰かって、誰?」
「さあ、たぶんセラ辺りじゃないですか? お姉様を取り返すとか何とか言ってましたから」
「ああっ?! セラ様が黒コゲにっ?!」
「レーコ、いつの間に結界なんか……」
「いえ、今日お姉さまがゲストだって言ったら、なんか凄い喜んでいましたから」
『あんたたち! 覚えときなさいよ!!』
「あ。逃げてった」
「セラを罠にハメるなんて……」
「お姉さまがいつまでも魔族から足を洗わないのがいけないんですよ」
「……ねえ、アイリ、玲子っていつもこうなの?」
「いや、私もレーコの本当の素顔って、知らないですから……」
「二人とも、何コソコソ話してるんですか?」
「や、やーね。こっちのことよぅ」
「そ、そうよ」
「さ、さて、そろそろお終いの時間です。本日は鷹野由希さんをお迎えしてお送り致しました」
「皆さん、さようなら~」
「何か腑に落ちない点があるのですが……」