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精霊の扉 第9話

オオォォォォォ!!

魔獣の咆哮が戦いの合図になった!


先手必勝!

私は、あらかじめ準備しておいた魔法を放った。

「フレアー!!」

炎が立ち上がり、魔獣達が飲み込まれ、次々と灰になっていく。

もしかして私、威力上がってる? 特訓の成果が出てきたかな?

「ふん、やはり雑魚どもでは相手にならんか。役立たずどもが」


突然、私の周りの気温が下がり始める。氷の魔法?!

危ない、と思って一歩下がる。

次の瞬間、私の足元から氷のツララが伸びた。

「うわわっ?!」

あんなの刺さったら痛いどころじゃ済まないっ!

「フレアー!」

まだ伸びてくるそれに向かって魔法を放つ。氷は跡形も無く飛び散った。

「ほう、なかなかやるな。では、これはどうだ」

次々と氷の矢が飛んでくる。

私は魔法で砕きながら何とか距離を取った。

「ちょこまかと小ざかしい奴め。だが、逃げてばかりじゃ、勝てんぞ」

「うるさい!」


反射神経には自信がある。氷の隙間を縫って、私は奴に向かって魔法を放った。

炎の渦がツヴァイを包み込む!

「ちいっ!」


これなら流石のツヴァイも、と思ったんだけど。

「なかなか強力だな。だがこんなもんでは俺は倒せんぞ」

あまり効いてない、というか、届いてないみたい。


「フレアル!」

「なにぃっ? ぐはぁぁぁぁっ!」

突然背後に現れた炎に、ツヴァイが巻かれた。

「私を忘れられると困るわ」

「お姉ちゃん!」

「直美、集中して! まだよ!」

「うん!」


「貴様……この俺を完全に怒らせたようだな!」

奴の操る氷が、見る見る剣の姿に変わっていく。

「こいつで切り刻んでやる! 覚悟しろ!」


「ちょ、ちょっと! そんなモン持ち出して、卑怯よ!」

「妹の目の前で死ぬがいい」

ビュンッ

姉さんに向かって氷の剣が振り下ろされる。

「お姉ちゃん、危ない!」

「きゃあぁっ」

姉さんの脇腹から血が吹き出した。

「ククク……次は心臓だ」

「お姉ちゃんから、離れろ! フレアー!!」

「ちっ」


ツヴァイが離れた隙を狙って、姉さんの所に駆け寄った。

「大丈夫?!」

「たいした傷じゃ……」

そこまで言って、顔をしかめる。

「ないわよ……な、直美、見てあれ!」

「え?!」


振り向くと、ルビスさんが水流に飲み込まれていた!

「嫌ぁぁぁぁぁぁ!」

「ルビスさん?!」

あ、あれは……水竜?

「どう? フィア特製アクアドラゴンの威力は。さっさと溺死しちゃいなさいっ!」

水竜にまとわり付かれ、もがき苦しむ。

見る見るルビスさんの炎が弱っていく。と。

ドォォォン!!

「きゃっ?!」

瞬間的に爆発が起き、水竜が消滅した。

「げほっ、ごほごほっ……」

水攻めから開放されたルビスさんが咳き込んでいた。

「あれ、消えちゃった。ま、いっか。もうだいぶ弱ってるはずだからね」

そう言ってまた魔法を詠唱し始める。

「死んじゃえ! アクア……」

「フレアー!!」

バシュウッ

「きゃうっ?」

私は、無防備な背後から魔法を放ってやった。

「よくもやったなぁっ」

「油断大敵、だよ」


「その言葉、そっくりそのまま返してやろう」

「え……?」

一瞬何が起きたか判らなかった。

何かが体を通り抜ける感覚。少し遅れて凄まじい痛みが全身を駆け抜けた。

「ごぼッ」


熱い物がこみ上げてきて、地面が真っ赤に染まる……これ、全部、私の血?

「直美っ!!」

姉さんが駆け寄ってくる……が、それより早く私は地面に倒れ伏していた。

「嫌ぁっ、直美、しっかりしてぇっ!」

姉さんの悲鳴が遠く聞こえる。もう駄目かもしれない。

「人間は、やはり脆いな。この程度で動けなくなるとは」

「……アンタだけは、絶対に許さない!」

「そのケガで何が出来る? 死にぞこないが」

「きゃぁぁぁぁっ!」

覚えていたのはそこまで。何も聞こえなくなっていく……



「おい、直美! 大丈夫か?」

へ……? 誰?

目を開ける。そこに居たのは思いがけない人物だった。

「か、和也……?!」

「間一髪だったな。死んじまったら、もう回復させられなかったからな」

「ありがとう……」

涙が勝手に溢れてくる。

「おいおい、泣くなよ。とにかく助かって、良かった」

「そうだ、ルビスさんとお姉ちゃんは?」

「あそこだ」

見ると、強力な炎がフィアを包み込んでいる所だった。

「きゃぁぁぁっ!!」

体が蒸発し、崩れ落ちるフィア。

「しっかりしろフィア! くそっ、こんな奴らに……」

「よくも私の可愛い妹を虐めてくれたわね!」

「仲間の仇、取らせて頂きます!」

「ちっ、必ず殺してやる! 覚えていろ!!」

気絶しているフィアを抱きかかえ、逃げようとするツヴァイ。

「あ、待ちなさい!」

炎が届くより一瞬早く、二匹の魔族は闇へ消えた。

「また、逃げられちゃったね」

「全く、逃げ足だけは、速いんですから……」

ルビスさんの体が崩れ落ちる。

「ルビス!!」

姉さんが駆け寄る。

「だ、大丈夫ですよ。魔力を使いすぎた……だけ、ですか、ら……」

そこまで言って、ふっと力が抜ける。

「ルビスさんっ!」



「さっきから気になっていたんだが……この人誰だ?」

「説明は後! とにかく家に!!」

「わ、判った」


続く


あとがき(という名の雑談)


「どうも。樋口陽子です。ルビスがついに逝ってしまいましたね。

 と、いうわけで、今回から私があとがき担当です。よろしく」

「こらぁ! 勝手に殺すなぁ!」

「あれ、居たのルビス」

「全く、どうしてヨーコはいつもそうなの!」

「だって、からかうの面白いんだもん。つい」

「…………」

「でも、とりあえずみんな無事でよかったね」

「そうですね。彼が居なかったら今ごろナオミは天に召されていたでしょう」

「不吉なことは言わないでぇ!」

「あ、あら、ナオミ……じゃ、ヨーコ、後は任せましたよ」

「え? ちょっと!?」


※光に溶けるように消えるルビス。


「こらー、待てー!」


※その時、影からツヴァイが現れた!


「逃げ足速いのはお前だろうが……」

「あ、出たわね魔族1号!」

「その呼び方はやめろ!」

「ちょっと、この間はよくもぶっ刺してくれたわね!」

「ふん。貴様が弱いだけだ」

「なんですってぇ!」

「お、なんだ。やるのか?」

「今度こそやっつけてやるんだから!」

「どうやら余程死にたいらしいな。いいだろう、覚悟するがいい!」

「ああ、もう……いいかげんに意地の張り合いはやめなさーい!」


※巻き込まれるのが怖いので見てるだけの陽子。


「フレアー!!」

どがぁぁぁぁぁっ

「ぐあぁぁっ?!」

「ひあぁぁぁぁ?!」

「あ、直美まで……」

「全く、何してるんですか。やっぱり私が居ないと駄目ですね」


「さ、事態も収まったことですし、この辺でおしまいにしましょ」

「そうね。ということでお相手は樋口陽子と」

「ルビスでした~」

『それでは、さようなら~』


「こらぁ!私まで吹っ飛ばすなぁ!」


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