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第4部第9話

>Naomi

「先生?!」

私は目を疑った。

何で先生がここに? それに、今フィア様って?!

「こんな形で会いたくはなかったわ。水口さん」

「どうしてっ?!」

私はかなりショックを受けた。

先生が、魔族だったなんて!!

「セラ様から貴方達の抹殺命令が出ているの。水口さん、悪いけど死んで貰うから」

セラ様って……そんな!

「それじゃ、私の事知ってて?!」

「さあ、どうかしら?」

「……」

偶然にしては出来すぎている。私は背筋が寒くなった。

私たちの会話にフィアが口を挟む。

「ユキ、余計なことは言わなくていいよ。こいつらは私が殺すんだから」

私の隣では、ユミちゃんがさっきからずっと黙っている。何か様子がおかしい。

「ユキ……ってまさか、本当に由希……さん?!」

「……由美子……さん、なの?」

しかも、ユミちゃんの知り合い?!

「やっと……やっと会えた!」

ユミちゃんが先生に駆け寄って抱きつく。だけど!

「え……?」

驚いた表情でユミちゃんが離れた。

ナイフが胸に深々と突き刺さっている。

「ユミちゃん?!」

「森野さん!!」

フラリ、とよろめきながら、ナイフを抜き取る。血がゴボリ、と噴出した。

「ッ……!」

「こんな廻り合わせがあるとはね……驚いたわ」

「く、由希さん、何で……! 魔族の仲間なんかやめて!!」

ユミちゃんの悲痛な叫び。だけど、魔族と化した友人には届かない。

「出来ないわ。いくら貴女の頼みごとでもね!!」

ナイフがユミちゃん目掛けて次々と飛んでいく!!

「嫌ぁぁぁ!!」

ユミちゃんの足や腕に次々と傷を作っていく。

「由希さん! どうしてっ?!」

「もう、あの時の私達じゃないの!!」

「はぁ……はぁ……目を覚まして、由希さんっ!」

「残念だけど、私は正気よ。5年前から魔族側に居たの。自分の意志でね」

「そ、そんなっ!!」

ユミちゃんはかなりショックみたい。

でも、私には先生の動揺が感じられた。何かムキになっている感じがする。

人間と魔族の間で板ばさみになっている……そんな気がした。

「さあ、終わりよ!!」

「危ない!!逃げてぇ!!」

私の叫びは届かないのか。ユミちゃんは一歩も動かない。

ぱぁん!!

身体に突き刺さる直前、ナイフが弾かれる。

「な、何……結界?! それに、この霧はッ!!」

驚いて辺りを見回す先生。

突如、霧が立ち込めて、急に寒くなってきた。

「召喚! 白竜ホワイトドラゴン!!」

ユミちゃんが叫ぶ!! 魔法陣が消えた後には、シイルの姿が。

「マスター、大丈夫ですかッ?!」

「ごめん、シイル……後は、お願い」

そのままがっくりと倒れこむユミちゃん。

慌てて私と姉さんが駆け寄る。

「2人とも、マスターを頼むわ」

シイルの言葉に、頷く姉さんと私。

「森野さん、今治すから!」

「陽子さん……私……ごぼっ――」

「喋らないで!」



「こんなところで竜と出会うなんて、世界は狭いのねぇ」

「マスターは私が守るっ!!」

「へぇ、契約したんだ……その割りには弱かったじゃない。主人があの程度なら怖くなんてないわね」

ちらりとユミちゃんのほうを見やり、すぐに視線を戻す。

「サンプルとして持ち帰れば、さぞセラ様もお喜びになるでしょう!」

由希の足元のコンクリートが砕け、その破片が次々とシイルを襲う!!

「ちっ!!」

身軽な動きで破片をかわし、先生目掛けて剣を振り下ろす。

キィン!

鋭い一太刀を、ナイフであっさりいなす。

「くっ」

「ふふ、この程度? 竜族なんて、たいしたこと無いわねぇ」

「貴様……!」

「悔しかったら元の姿に成って御覧なさい。まあ、変身しても弱っちいんでしょうけど」

「……」(ぷつん)

この一言に、シイルが切れた。突然、物凄い冷気が集まり出す。

『私を怒らせたことを、後悔させてやる!!』

強烈な吹雪が先生を襲う! たちまち足元が凍り付いてしまった。

「流石に強力ね……けど、これで勝ったつもりかしら?」

足が凍っているのに、先生はまだ余裕の表情だ。まだ切り札が!?

パチン。

先生が指を鳴らす。影から誰か出てくる。

「さあ、目の前に居る敵を殺してしまいなさい。カズヤ」

「えっ?!」

『承知』

そんな、どうしてっ! なんでっ?!

「か、和也?! う、ウソでしょ……何で……和也ッ!!」

こんな……こんなのって無いよ!!

「和也!! 私よ! 分からないの?!」

「ムダよ」

「そんな!!」

「直美、気を付けて!! そこにいるのは和也さんじゃないわ。魔族よ!」

姉さんが叫ぶ。

「判ってる……そんなことは判ってるよ! でもっ!」

そんな私たちの様子を見て、薄ら笑いを浮かべる先生――いや、魔族ユキ。

「さあ、その娘を殺しなさい!」

和也がゆっくりと近付いて来る。


『――死ね』

私に向かって剣が振り下ろされた!

「和也! 私、あなたと戦いたくな……きゃぁ!」

虚ろな目のままで剣を振り下ろしてくる」

ザンッ

彼の剣に私の制服が切り裂かれる。

胸元のボタンが弾け飛ぶ。

「直美! 戦って! このままじゃあなたが!」

そんなこと……出来るわけないじゃない!

「和也!! 何も覚えてないの?!」

「ふふふ……恋人同士の殺し合いもいいわねぇ」

こんなことさせて喜んでるなんて、狂ってる!!

「先生! もう止めて! 和也とも、先生とも、戦いたくないのっ!」

「……水口さん、甘いわね。それに、よそ見をしてると危ないわよ?」

「え……?」

突如腹部に激しい痛みが走った。熱い物が喉の奥から込み上げてくる。

「――ッ!」

「直美!!」

『死ね』

「か、和也……」

ガクリと体が傾く。

『終りだ』

激しい衝撃の後、視界にモザイクが掛かった。

そのまま何もかも真っ白になっていった。


続く



あとがき

「こんにちは、由希です……って、あれ? あんまり強くないですね、私……」

「ま、そんなもんだろ?」

「そ、そうかなぁ……でも、簡単にやられ過ぎてない? それに、何かキャラ変わってる?」

「所詮サブキャラだろ? いまさら何を言うか」

「……」(ぐさっ)

「性格の悪さだけは目立ってるけどな」

「……」(ざくざくっ)

「おっと、挨拶がまだだった。作者のmです。ん? どうした由希?」

「……いっぺん、逝って来いぃぃぃぃっ!!」

ぐしゃ。


「というわけで、今日もゲストに来てもらってます」

「こんにちは。森野由美子です。2回目だね~」

「やっぱり友達は多く呼びたい、ということで勝手に呼んじゃいました」

「ところで、いいの? 作者沈黙させて」

「大丈夫よ。死にゃしないから」

「それはそうだけど……」

「ま、気にしないことよ。気が付いてしゃしゃり出でもしたら、困るからね」

「それもそうだね。じゃあ、改めて、友達に裏切られた森野で~す」

「……やっぱりまだ根に持ってたんだ」

「当たり前でしょ。痛かったし。シイルが居なかったらと思うと……」

「多分、ってたと思う」(えっへん)

「えばるなぁ!!」

「でも、竜を従えているなんて、思わなかったけど」

「偶然だけどね。折角だから改めて紹介しようか。白竜のシイルだよ」


▽魔法陣が輝く


「お呼びですかマスター……なッ?!」

「ん? どしたの、シイル?」

「お前は……魔族ユキ! 何故マスターと一緒に居る?!」

「落ち着いて、シイル。由希さんは元々人間よ」

「そ、そうなの?」

「まあ、ね。今はこんなだけど……」

「どうして魔族なんかに……」

「話せば長くなるけど、仕方なかったの」

「気になるなぁ」

「その話はたぶんそこに寝てる人が次辺りで書くんじゃない?」


△mの方を見やる由希。


むくり。

「わ。起きた」

「……君の嫌な記憶を引きずり出してあげようか、由希? ん?」

「け、結構です」

「遠慮することはないよ。さて、たっぷりとお礼はさせてもらうか」

「いやぁぁぁぁ!!」

由希をむんずと捕まえて、引きずっていく。

「あ……由希さん……」

「行っちゃいましたね、マスター……」

「そ、そうね~……ま、命取られる訳じゃないし、大丈夫でしょ……たぶん」


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