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第4部第7話

深夜の薄暗い公園。その外灯の下にたむろしている不良たち。

そこ2人の少女が歩み寄っていく。

「よう、久しぶりだな」

「誰だ、てめえは?」

男は一瞬驚いたが、すぐにその正体が分かった

「お前は……この間の女じゃねぇか。何しに来やがった?」

ずぶり。

「ぐはっ?!」

友子のナイフが腹に入る。もんどりうって倒れる不良。

「お返しだ! あんたら全員相手にしてやるよ!」

「こ、このくそアマ!!」

「もう前のアタシとは違うぜ。束になってかかってきな!」

「やれ、やっちまえ!!」

リーダー格の怒号を合図に、不良達が一斉に襲い掛かってくる!

それと同時に友子の影が蠢き、四方八方に分かれた!

ズッ、ドッ。

「ぎやあぁぁ!!」

眞奈美の髪が男達を絡め取り、友子の影が胸板を次々と貫いていく。

「あ、殺しちまった……加減が難しいなぁ」

「トモ! やりすぎよ!」

「気にすんな。こいつらは生きていてもしょうがねぇろくでなしさ」

「で、でも……」

一人取り残された不良。完全に腰砕けを起こしていた。

「さて、あんたで最後だな。」

友子の声で我に返り、きびすを返して逃げ出した。

「ひ、ひぃぃぃ!! ば、化け物っ!!」

「逃がすか!」

さらに影が伸びていく。そのまま逃げる相手を捕まえた。

「うわあぁぁっ?!」

「あたしの影からは逃れることが出来ないよ。覚悟しな!」

血が飛び散り、崩れ落ちる。男が再び動くことはなかった。


「アタシを殺した罰さ。地獄の底で後悔するんだな」

「これでよかったのよね……多分……」

満足げな友子。その反面、眞奈美の顔色は優れない。

「もうアタシらは人間には戻れないんだ。それに、マナ、力を使うとき、何か感じなかったか?」

「――すごい勢いで身体が引っ張られるの。でも、この感覚、嫌じゃないわ……むしろ――気持ちいい」

眞奈美は気が付くと、全身を覆う高揚感に襲われていた。

「やっぱりマナもそう感じていたんだな。この感覚、癖になりそうだ」

力――闇の魔力は、気づかない間に、二人の身体を魅了していたのだ。

「でも……やっぱり、これって殺人なのよね」

戦い終わって、我に返ると、周りは凄惨たる状況。

周囲に漂う血の匂い。もはや引き返せないところまで来てしまった。

眞奈美はそう感じずにはいられなかった。


帰ろうとする二人の前に人影が現れる。

「なかなかやるじゃない。これなら安心ね」

「ユキさん……私は――」

「秋本さん、何も言わなくていいわ」

由希は眞奈美を手で制した。

「私もね、これが終わればあんな所とはおさらばするつもりだし」

「でも……あの人に命を助けられたのでしたら……」

「確かにセラ様には感謝してるけど、これは別。人を殺すのはやっぱり気が進まないし」

この人も同じだ。眞奈美はそう思った。

「私は、違う目的があって魔族と一緒に行動しているだけ。後悔はしてないわ」

「なんでもいいさ。もうアタシの命は無いんだろ? 今更いい子ぶれるかよ」

「トモ……」

「さて、それじゃ、例の誘拐の件、マナに任せるよ」

「そんな、私、自信無い……」

下手をすると殺してしまうかもしれない。いや、逆に殺されるかもしれない。

そう思うと体が震えてきた。

そんな眞奈美を友子がそっと抱き寄せる。

「心配すんな。無理そうだったら加勢してやるよ」

「判った……やってみる」

「じゃ、その調子でね。私、これから用があるから」

そう言って二人に背を向ける由希。

「これからどこに行くんですか?」

「バイトよ」



「誰だ、お前は?」

夜道を歩く和也の前に一人の女性が立っていた。年は彼と同じぐらいだろうか。

「乃沢和也さんですね?」

「その制服は……うちの生徒か。何の用だ」

「私の気持ち、受け取ってもらえますか?」

和也はこういうシチュエーションで告白されたことが何度かあった。

「――悪いが、皆断ることにしてるんだ、済まないが……」

「どうして?」

上目遣いに和也の目を見つめてくる少女。

そして、その目を見て、和也は違和感に気が付く。

何かがおかしい。異様な雰囲気がその女性から発せられていた。

「こ、こいつは……」

ざわりと空気が動いた。

突如として女性の髪が和也に向かって伸びる。

「ちぃっ!」

和也は後ろに飛ぶ。しかし、それを追って髪がさらに伸びる。

アスファルトの道路を砕きながら、それは和也に迫った。

和也は何とかそれを電柱で遮った。大きな音を立ててコンクリートにヒビが入る。

「うふふふ……まさか、避けるなんて思いませんでした」

一瞬の判断のおかげで、間一髪逃れられた和也。下手をすると足元の道路のようになっていただろう。

「く、お前、何者だ?!」

「私はマナ。魔を司る者です」

いつの間にか髪は元の長さに戻っている。

だが、砕け散ったコンクリートがそれが幻ではない事を物語っていた。

「魔族か……俺に何の用だ」

「一緒に来てもらえませんか。悪いようにはしません」

「断る、と言ったら?」

マナと名乗った女はクスリと笑った。

「力ずくでも」

「面白ぇ。相手になってやるよ!」



和也の身体から稲妻がほとばしり、眞奈美の全身を切り刻む。

「ッ、きゃぁぁっ?!」

制服が裂け、血が噴き出して、ぼたぼたと赤く染める。

痛みに顔をしかめ、肩で息をしながらも、その表情にはまだ余裕がある。

「……やはり一筋縄ではいきませんか」

「悪ぃが帰ってくれないか? いくら魔族でも、女を殺したくはないんでね」

そう言いつつも、和也は構えを解かない。

「そうはいきません。どうしても貴方を連れて帰らなくてはいけませんから」

眞奈美は髪を伸ばし、今度は四方八方から和也を襲う。

「させるか!」

和也は後ろに飛ぶ。しかし、そこにも髪が迫ってきていた。

「何っ?! ぐあぁぁっ!」

次の瞬間、和也の全身に黒い髪が絡みつき、締め上げる。

そのままコンクリートに叩きつける。

「く、くそ……」

そのまま和也の意識は暗転した。


しばらくして、眞奈美も落ち着きを取り戻していた。

目の前には、自らの髪の毛でからめ取られた和也の姿が。

「……いけない、ボーっとしていちゃ……早く移動しないと……」

眞奈美はそのまま和也の身体を抱え、闇に紛れる。

辺りは、砕かれたコンクリートだけが残されていた――




>Naomi

「あ、先生。こんばんは」

「こんばんは。じゃ、今日もはじめましょうか」

「はーい」

由希さんのお陰で、最近勉強が楽しい。成績も上がってきたし、すごい順調。


数十分後。

ふと本を開こうとした瞬間、手が触れ合った。

バチッ

「?!」

「痛ッ!」

火花が散った。静電気かな?

「ご、ごめんなさい」

「……」

先生の様子がおかしい。ずっと黙ったままだ。

「先生?」

「あ、だ、大丈夫。気にしないで」

「本当に大丈夫ですか?」

「ええ、それじゃ、34ページの問題やってみて貰える? ちょっと席を外してるから」

それだけ言うと由希さんは、部屋を出て行ってしまった。


何だろう、気になる……



続く


あとがき

「こんにちは。由希です」

「作者のmです」

「4部も中盤といったところでしょうか」

「そうだね。出したくても出せないキャラとか居るけど、何とか頑張って書いてますので」

「期待していますよ。サボるのだけはやめてくださいね」

「は~い」


「さて、前回話した通り、和也にはちょっと痛い目をみて貰ったわけだけど」

「作戦が上手く行き過ぎてて怖いぐらいです」

「それに由希も直美の正体に気付いてしまったことだし」

「本当にびっくりしました。何でこの子が、って」

「由希もうすうすは気付いてたんでしょ?」

「ええ。でもやっぱり認めたくはなかったです。自分の生徒が敵だったなんて」

「それは直美も一緒だと思うけどね。ま、まだ向こうは気付いてないようだけど」

「でも時間の問題ですよね」

「まあ、直美にとっては由希より、和也のほうがダメージ大きいと思うし」

「そういえば、和也さん、水口さんの恋人なんですよね」

「そう。だから直美にはちょっと堪えるかもね」

「なんか少し可哀想になってきました」


「さて、今まで由希について触れてなかったので、今回は色々と話してみようか」

「そうですよ、言われてみれば私、司会なのに全く紹介されてないんですね」

「ということで、由希に自己紹介してもらおうかな」

「19才、大学2年です。好きな人はセラ様です。

彼女は命の恩人で、ずっと私を育てて下さいました」

「って、おい、由希」

「優しくて、頼りになって……ちょっと怒ったりすると怖いけど」

「ちょっと待てぇ!」

「なんですか。人がせっかく話しているのに」

「誰がセラの自慢話をしろと言った!」

「いいじゃないですか。けち」

「何か言ったか?」

「(ぎく)な、なんでもないです」

「しょうがないから俺が簡単に紹介してやるよ。

 由希は父親に借金のかたにして売り飛ばされたんだよな」

「え、ええ」

「そして巡り巡って孤児院に預けられる。そこでセラに引き取られたわけだ」

「セラ様……」(妄想)

「由希は生き別れになった妹を探しているんだよね」

「そう。妹に会うため、そして父に復讐するため、私はセラ様に力を貸したの」

「で、セラから、手を触れずに物を動かす力――浮遊レピデーションを受け取ったんだったな」

「そうそう。こうやってね」

ヒュン(どこからかナイフが飛んでくる)


「危ねぇなぁ、おい……て、何だ、その刃物の数はぁ?!」

「今まで散々苦しめてくれたわね、m。覚悟はいい?」

「わ、待て、やめろ! お前これがどういう事かわかってんのか?!」

「うるさい! 死ね!」

(血の飛び散る音)


「さて、mが沈黙したところで、丁度お時間となりました。それでは、また次回~♪」


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