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第4部第6話

友子は目を覚ました。辺りの様子が変わっていることに彼女は気が付いた。

「――」

「どうやら気が付いたようだな」

いつの間にか知らない男が目の前にいる。

「誰だ……お前は?」

「なんだ、その口の利き方は? それが命を助けてやった者に対する言葉か」

長い銀髪、金の瞳の男が友子を睨みつける。

「命……だと?」

「お前の肉体はもはや死んでいる。この女がお前を生き返らせてほしいと言って来たのでな」

「トモ……! よかった!」

眞奈美が泣きながら抱きつく。友子は訳が分からず困惑している。

「マナ? どうして、マナがここに?」

「お前のことが心配で様子を見に来たそうではないか。人間らしい友情だな」

「トモ、あの不良たちに殺されちゃったの。よかった、生き返って……!」

そこで、ようやく理解した。あの後、眞奈美が発見してくれたのだと。

だが、そこで、矛盾に気が付いた。

「ちょっと待て、アタシは死んだのなら、なぜ?」

友子の疑問に、男が答える。

「本来、死者を蘇らすことは出来んが……」

「私がわがままを言って、トモを生き返らせてもらったの」

眞奈美の言葉を無視して、男は続ける。

「闇の力で蘇らせておいたぞ。まあ延命措置にしか過ぎんがな」

「死んでいるのに変わりは無いわけか。ところで、お前は何者なんだ?」

「我はツヴァイ。魔族だ、とだけ答えておこうか」

「魔族だと? 何を言っているんだ、お前? 人間じゃないのか?」

友子は目の前にいる男が信じられなかった。

「さて、下らん挨拶は抜きにして本題に入ろう。約束通り、俺たちの手伝いをして貰う」

「約束?」

「お前を生き長らえる代わりに、手伝って貰うことになっているからな」

「マナ、お前、何勝手に……」

「だって……またトモと一緒に居たかったの……っ」

「全く、しょうがない奴だな」

まだ腕の中でしがみついている眞奈美の頭を撫で、友子は苦笑した。

「話はまとまったか? お前達にやってもらいたいことは山ほどあるからな」

「で、何をすればいいんですか?」

「なあに、簡単なことだ。指定した人物をここに連れて来ればいい」

「連れてくるって……ここがどこだかも判らないのに」

「ここは人間界と魔域の境界だ。ここに居れば愚かな人間どもに見つかる事は無い」

ツヴァイは二人に1枚の写真を見せた。

「まず、この人物を連れてきてほしい」

「誰だ、こいつ?」

写真には、制服姿の高校生らしき男子が写っていた。

「この人……うちの学校の3年生よ」

「マナ、知ってるのか?」

「ええ。彼、去年の文化祭で実行委員やってたので、覚えてるんです」

これにはツヴァイが驚いたようだ。

「ほう、それは丁度いい。やはりお前達が適任だな」

「でも、どうして彼なんですか?」

「すぐに分かる。お前達は言われた通りにしていればいい」

ツヴァイはきっぱりと言い切った。

「だけどどうするんだ? 普通に来いって言ったって、付いて来る訳無いだろうが」

「安心して。そのために準備はきちんとして置いたから」

突然暗闇から赤毛の眩しい女が現れる。年は2人と同じぐらいか。

「誰だ、お前」

「紹介しよう。俺と同じ魔族のセラだ」

「この女も魔族だと?」

友子は驚きを隠せない。

「貴方達の力を引き出させてもらったわ。しばらく私たちのために働いて貰うわよ」

「力……? まさかアタシ達の身体にっ?!」

「ご名答」

「断りも無く他人の身体弄るんじゃねぇ!!」

「命を助けてあげたのよ。見返りは当然。抵抗したらその力でねじ伏せちゃって構わないわ」

「力ずくでというのはちょっと……」

「ま、方法は任せるわ。生きたまま連れて来てね。殺しちゃ駄目よ」

「けッ……わあったよ」


パンパンッ

セラが手を叩く。するとどこからともなく一人の女が現れた。

「お呼びですか、セラ様?」

「ユキ。この子たちに付き合ってあげて」

セラの前に来ると、膝まづいて、頭を下げる。

「はい、解かりました。お任せください」

「なあ、その前にちょっといいか?」

「なに?」

「それで、貰った力っていうのは、どうやって使うんだ?」


>Naomi

「ちょっと早く来すぎちゃったかな……」

駅前の時計塔の下。ここが今日の待ち合わせ場所だ。

まだ10分もある。どうしよう。コンビニでも行って時間潰してくるかな……

あれ、目の前から歩いてくる人は――

「和也?」

「よ」

彼が右手を上げる。間違いなかった。

「和也ぁ!!」

私は彼の胸に思いっきり飛び込んだ。

「おいおい、危ねぇな」

「だって、会いたかったんだもん」

「そういや、ずいぶん久しぶりだっけな」

彼とこうして顔を合わせるのは半年振りぐらいだ。

「向こうに行くって聞いたときはびっくりしたけどな」

「ごめんね、埋め合わせするから」

「ね、家泊まらない? 今日はお母さんも姉さんも留守だから」

「ん~、そうしたいんだけど……今日は駄目だ」

「どうして?」

「ダチと約束があってさ。悪いな」

「ううん。無理言ってごめんね」

私が謝ると、彼に頭を撫でられた。

「まあ、近いうちに泊まりに行くよ」

「うん、待ってる」

「それじゃ、行きますか」

腕を組んで、さりげなく身体を寄せてみる。

「な、なあ、直美」

「ん?」

「今日、やっぱり泊まっていくわ。予定変更だ」

「え、いいの? ほんとに?」

「まあ、たいした予定じゃないしな」

「あ、ちょっと待って」

行こうとした彼を私は引き止めた。

振り向きざまに顔を近づけた。

唇が触れる。

一瞬びっくりした顔をする和也。しばしの沈黙。

すごい恥ずかしい。心臓が高鳴ってる。


「ありがと、和也」

一言告げて、手を解いて先を歩くことにした。

まともに目を合わせられない。すごくこっぱずかしい。

公衆の面前でべたべたするのはもうちょっと慣れてからのほうが良いかも。

お互いにね。


このときの私は、のんきに浮かれてた。

そう、この後、大変なことが起こってしまうことも知らずに。


続く


あとがき

「こんにちは。由希です」

「作者のmです」

「水口さん、幸せそうですね」

「まあ、今まで我慢して頑張っていたから、ささやかなご褒美かな」

「いいなぁ……私もあんな人と巡り会えたらいいのに」

「それはそうと、やっと由希の正体が判明したね」

「ふふ。私が魔族側の人間でびっくりした人も多いんじゃないでしょうか?」

「これだと直美の幸せも長く続かなそうだなぁ」

「何言ってるんですか。それが狙いなんでしょう?」

「まあね」

「でも、作品中の私は、まだ水口さんの正体に気付いてないんですよね」

「うん、でも近々分かるよ。困惑する直美の顔が手に取るようにわかるなぁ」

「やっぱり鬼ですね……」


「さて、今回は和也をゲストに呼んでるよ」

「初めまして、乃沢和也だ。よろしくな」

「こちらこそ初めまして」

「最後に出たのが第2部のあとがきだったから、忘れてる奴もいるんじゃないのか?」

「そうかも」

「まさか3部に1度も出られないとは」

「いや、忘れていたわけじゃないぞ、うん」

「ホントかよ」

「怪しいです」

「信用ないな。まあ、仕方ないが」

「それより、直美をあまり苛めないでやってくれ。見てて痛々しい」

「あれは作者なりの一種の愛情表現だよ」

「大怪我させることがですか?」

「いくらヒロインだからって、ちょっとやり過ぎだと思うぞ」

「私もそう思います」

「由希もよく言うな。直美の精霊反応をしっかりチェックしているんだろ?」

「あ、分かるぅ?」

「……で、これから俺はどうなるんだ?」

「しばらくは直美といちゃいちゃしていればいいぞ」

「なッ?!」

「お、赤くなったね」

「他人をからかうんじゃねぇよ!」

「まあ、そのうちに進展があるよ。和也は4部は出てもらうことになってるし」

「本当か? 嘘じゃないんだろうな」

「多分、最後まで出る機会はあると思うよ」

「期待していいんだな?」

「ああ。もちろん」

「mさんの言うことには、必ず裏がありますけどね」

「それは言わないお約束♪」


「さて、そろそろ時間です」

「ちょっと待て、なんだ今のは?! ちゃんと説明しろ!!」

「お相手は私、由希とmさんそしてゲストの乃沢和也さんでした」

「それではまた次回~」

「こらあ!そのまま終わりにするなぁ!!」

「次回、和也に思わぬ不幸が舞い降りる?!」

「マジか?!」

「ふふふ……さあ、どうでしょう?」




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