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第4部第5話

「ゼクス様……どうしたら許して頂けるの?」

遠い目をして、物思いにふけるセラ。

そして彼女の身体には、怒り狂ったゼクスから受けた傷が、生々しく残っている。

しかし、それ以上に彼女の心もまた傷を受けていた。


「どうした、しけた面して」

「ツヴァイ……」

ツヴァイが声をかけると、うつむいていた顔を起こす。

「お前に言われた通り、人材を連れてきてやったぞ、セラ」

「ありがと、ツヴァイ。助かるわ」

ツヴァイは背負っている2人の少女を床に横たえた。

「しかしセラ、何を考えている? 俺には貴様の真意がさっぱり分からん」

「お馬鹿ねぇ、ツヴァイは。そんな事も分からないの?」

「なにぃっ?!」

「いい? こいつらには、私達の駒として動いて貰うの。元々人間なら怪しまれないでしょ?」

「なるほど、魔力を注いで蘇らすのか。確かにいい考えだな」

ツヴァイは感心している。

「さて、どう洗脳してやろうかしら。フフ……」

にやりと笑みを浮かべるその横で、ツヴァイは恐怖した。

(こいつは本当に恐ろしい女だ……)

ツヴァイは改めてそう感じずにはいられなかった。

「しかしそんな作戦で大丈夫なんだろうな。次駄目なら間違いなく命はないぞ」

「うるさいわね、分かってるわよっ! 死ぬかと思ったわよ、さっきだって!」

「そうか? 俺には悶えていたようにしか……ぐはっ?!」

セラの拳がツヴァイの顔面を捉えた。

「何でツヴァイはやられないのよ?! 鞭打ちの刑!!」

「痛つつ……んなもん知るか!」

「見てなさいよ、ノエル! 私を殺さなかったこと、絶対に後悔させてやるんだから!」

ゴゴゴゴゴゴ・・・・・・

セラの背後に炎が上がる。

危険を感じたツヴァイは、違う話題を振ることにした。

「と、ところで、フィアはどうしてる?」

「まだゼクス様の所よ。あの子があんなに怒られるなんて、思っても見なかったわね」

「そうだな。よほどお怒りなのだろうな……」

「ええ。だからこそ、次は絶対に失敗できないのよ!」

そこへ、一人の少女が現れた。

「あら。お帰り。何か分かった?」

「セラ様。力を持っていると思われる人物を発見致しました」

「よくやったわね。ご苦労様」

「ありがとうございます。それと、気になる場所がいくつか御座いまして」

「どんな?」

「精霊の反応があちこちから出ているのですが、存在が確認できないのです」

精霊という言葉にビクリと反応する2人の魔族。

「そう。前、そこに居た可能性もあるわね」

「はい」

「じゃあ、そのまま監視を続けてくれる? くれぐれも正体をばらさない様にね」

「承知しました」

そういうとその少女は立ち去って行った。

「おい、あいつは人間じゃないか。どうしてお前になついているんだ?」

ツヴァイの疑問にセラが答える。

「5年前に孤児院で偶然見つけたのよ。本当は違う子を連れて来る筈だったんだけど」

「ほう」

「手ぶらで帰るのもなんだし、力を持っていそうな子を引き取ったの」

「なるほど。確かにな」

「そうそう、ツヴァイにお願いがあるんだけど」

「なんだ」

「今みたいな要領で後何人か連れてきてくれる? ハズレはあなたに任せるわ」

「ああ、分かった」



「ご主人、さま……」

部屋に、厳しい形相で入ってくる魔王を見て、フィアは震えた。

(私も、セラみたいなこと、されるのかな……)

偶然、セラと魔王が二人で居るところを目撃してしまったフィア。

だが、こっそりその後を付いて行った彼女が見たものは、信じられないものであった。

鎖に繋がれ、何度も鞭を打ちつけられるセラ。

いかに魔族といえども、精神が子供のフィアには、かなりの衝撃だった。

途中で見ていられなくなり、逃げるように部屋に戻っていた。

あの光景が、フィアの頭をよぎる。


『失敗したな、フィア。悪い子にはおしおきだ。尻を出せ』

パアァァン!

「あぁぁぁっ」

パン、パンパン!

「あっ、んあっ、ふあぁっ!!」

魔王の平手がフィアの白いお尻を乱暴に打ち付ける。

見る見るうちに真っ赤に腫れ上がっていく。

回数が50回を超える所で、ようやく開放された。

「はあっ、はあっ……」

肩で息をして、目には大粒の涙をうかべながら、フィアは許しを乞う。

「すみません、でした、ご主人さまっ……!」

『……まあいい』

その姿を見て、魔王自身も少し感傷的になったのか、フィアの身体から手を離し、衣服を整える。

『……次は上手くやるんだ。いいな』

「は、はい……」

すると、魔王はフィアの手をスッと握る。

『魔力が尽きかけているな。少し分けてやろう』

魔王が、フィアの左腕に腕輪のようなものを嵌めた。すると。


ドクンッ

「っ?!」

フィアは体が脈動するような衝撃に襲われる。

『どうだ、自分の中から魔力が溢れてくるのが分かるだろう』

ドクン、ドクン――

「あ、あぁっ、嫌ぁぁぁぁっ!!」

(体が蒸発する!! 駄目ぇっ!!)


しばらくして、気を失ったフィアが目を覚ました。

『気分はどうだ、フィア?』

「は、はい――大丈夫で……えッ?!」

(私、こんな声だったっけ?)

声色が違うのに驚き、慌てて鏡を見る。そこには、フィアの知らない女性がいた。

(だ、誰……?!)

『どうだ、見違えただろう、フィア』

「こ、これが私……?」

『どうだ、成長した気分は?』

大人に一歩近づいた。そう理解したフィアは、魔王に礼を言った。

「とても嬉しいです、ありがとうございます、ご主人様!」

『よし、いい子だ。今日はもう休め』

フィアの頭を軽くなでて、魔王は部屋を後にした。



>Naomi

8時ごろ、姉さんが帰ってきた。

「お帰り、姉さん」

「お母さん、まだ帰ってないんだ。直美、ご飯ある?」

「あるよ」

「おなか空いちゃって。やっぱり試験は疲れるわ……」

そういえば、姉さんの学校って、模試だったんだっけ。

「姉さんって、どこの大学が第1志望?」

「私は東都女子よ。やっぱりあそこが一番いいかな」

「東都女子って先生と同じところじゃない」

私がそう言うと、姉さんは顔をほころばせた。

「へぇ~。後で私も教わろうかな……家庭教師の人ってどんな人?」

「由希さんって言って、すごく綺麗な人だよ。茶髪に染めてて……左右三つ編みにしてたなぁ」

「大学って、自由なのね……うちは結構厳しいのよ。いわゆるお嬢様校だからね」


そういえば先生、どこに住んでるか聞かなかったな。今度聞いておこうっと。

「あ、そうだ。明日友達と出掛けなくちゃいけないんだけど……天気予報ってやってる?」

「ちょっと待ってね。ニュース見てみる」

『では、次のニュースです』

ニュースでは女子高生の失踪事件が報道されていた。

『行方不明になっているのは、都立南高校の秋本眞奈美さんと春日友子さんの2人です』

「南高って、和也さんの学校でしょ?」

「うん、そうだね……」

そういえば、和也に最近会ってないな……後でメールでもしてみよ……

『二人は小さい頃からの幼馴染で、この日も学校の前で一緒に居たのを目撃されています。

 警察では、2人が一緒に居る時に何らかの事件に巻き込まれたものとして捜査しています。

 この事件以外にも、同年代の少年少女が相次いで行方不明になっております。

 警察は、この事件を重く受け止めており、これらの事件との関連性について――』



続く


あとがき

「こんにちは、由希です」

「作者mです」

「ずいぶん魔族が活発に動き出していますね」

「新キャラも出せたことだし、やっと方向性が決まってきたよ」

「それはそうと、さらわれた彼女達はどうなるんですか?」

「それは本人に聞いたほうがいいかもね」

「ということで、今回のゲストは魔族のセラさんです」

「ゲストね。改めてそう言われると、なんか照れるわね」

「セラ、初めてじゃない? ゲストとしては」

「そうね。前は無理やり乗っ取っていたからね」

「今回はそういうことしないだろ?」

「ええ、まあ、そうね……」

「ん? どうした?」

「い、いや、一応、作者の目の前でもあるわけだし」

「まあ、そうだね」

「ところで、あの子達はどうなるんですか?」

「私の駒になってもらうわ。世間じゃ行方不明ってことになってるみたいだから」

「セラはいろんな事やってるからね。街滅ぼしたり、人操ったり」

「私の手にかかれば、ちょっと小さめの国家なら潰せるわよ」

「……」

「何よ、その目は」

「いえ、なんでもないです」


「ちょっと~。セラばっかりずるい~。私もやるーっ」

「フィアさん……いきなり入って来ないで下さい」

「ずいぶん大きくなったわね」

「セラさんと同じくらいの背丈になったんですね。一瞬誰だかわかりませんでした」

「へへ。見直した?」

「ええ」

「でも、背が伸びただけじゃないの?」

「違うよ、成長したんだよ!」

「じゃあ、何か証拠を見せてよ」

「しょ、証拠?」

「そう。何かあるはずでしょ? 大人の証拠。まさか、何もないなんて言わないわよね?」

「あ、あうぅ~……思いつかないよぅ~」

「ふふ、おつむの方はお子ちゃまのままね、フィア」

「そ、そんなことないもん! 大人だもん!」

「すぐムキになるのも子どもの証拠よ」

「……いいもん、ご主人様にセラの事言いつけてやるんだから。セラが苛めるって」

「え?!」

「ご主人さまぁ~! セラが私に非道いことばっかり言って、苛めるんですぅ~!」

「ちょ、ちょっとフィア!! いい加減になさい!!」

「なによぅ、セラだって、進歩がないっていつもご主人様に言われてるのに~」

「い、言ったわね、このくそガキ!!」

「何よ。やる気?!」

「いいわ、相手になってあげる。手加減なんかしてやんないわ」

「こっちだって! 私が子どもじゃないってところ見せてやるんだから!」



「帰っちゃいましたね」

「ああ。ま、いつも通りじゃん」


「という所で、お時間です。お相手は由希と」

「mでした」

「でも、このコーナーも進歩がないですよね……」

「言うな……」



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