第4部第4話
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とある学校の校門の前に、一人の少女がたたずんでいた。
ここの学校の生徒ではあるが、着ているのは普通の私服。
彼女の名は春日友子。いわゆる落ちこぼれで、学校にはほとんど行っていない。
やがて一人の女生徒が校門から出てきた。
こちらは秋本眞奈美。学校でもトップクラスの成績をとる、優秀な学生である。
この2人は幼馴染であり、毎日必ず顔を合わせるほど仲が良い。
「よう。マナ」
「その荷物……また家出したの? トモ」
「ああ。それで……」
「今日の夜、泊まりに行っていいか、でしょ?」
「……」
友子は、ギクリ、とした後に下を向く。
「家出って言ったらそれしかないものね」
眞奈美はクスリと笑った。
「うちは当分留守だけど。あんまりご両親を心配させないほうがいいわよ」
「はん、心配するかよ、あんな親が」
「もう、そんなこと言わないの。あれ? その傷……」
彼女は、友子の足の傷を見逃さなかった。
「またケンカしたの?」
「……なんだそんなことか」
「なんだじゃないでしょ、こんな傷作って」
「いいじゃんか。別に」
「もう、心配する私の身にもなってよ」
「マナ、あいつらは言葉で解るような相手じゃないんだ」
「だからって、毎日してたら、体が持たないでしょ」
「……分かったよ。じゃ、適当に夜行くぞ」
背を向ける友子。
「あ、トモ! 待って!」
「じゃあな」
「もうっ」
心配そうな視線でトモを見送る眞奈美。
彼女達はまだ知らない。自分達の運命を。
>Naomi
「え~。家庭教師~?!」
突然お母さんに言われて、びっくりする。
「そうよ、だってこのままじゃ直美大学行けないでしょ」
「でも、そんなの頼まなくても。姉さんに教われば大丈夫だって」
「陽子だって、一緒にいる時間少ないでしょう? 学校も違うんだし」
それは、そうかもしれないけどさ。そんな突然言われても、心の準備ってもんが。
「母さん、直美が出かけている間、学校に説明するの大変だったんだからね」
そう、私と姉さんは異世界に行っている間、学校をずっと休んでた。
お母さんはそれを心配しているんだと思う。
「分かったわよ。それで、いつその人が来るの?」
「今日の夕方、早速頼んであるから」
「え、もう決まってるの?!」
今日はユミちゃんと約束していたのにっ!
「あ、それと、これから母さん出かけるから。ちゃんと教わるのよ」
なんか、ハメられた気がする……
ユミちゃんに断りの電話を入れ、しばらくするとインターホンが鳴った。
ドアを開ける。この人が家庭教師の人?
「はじめまして、由希です。今日からよろしくね」
「よ、よろしくお願いします。ど、どうぞ」
「ふふ。おじゃまします」
綺麗な人だな。大学生かな?
「私ね、あなたのお母さんの所でアルバイトしてたの」
へ~。それ初耳。
「普段良くして貰っているから、役に立てればいいとずっと思ってたの」
「そうなんですか」
「水口さん、大学はどういう所行きたいの?」
大学なんて言われてもまだそんな実感湧かない。
「それが……まだ良く分からなくて」
「最初は誰でもそうかもね。進路にあわせて大学を選ぶといいかも」
大学か……姉さんはどこ行くって言ってたっけ?
「将来、どんな職業に就きたいの?」
(王女様になりたいっ)
――って言っても笑われるだけだしなぁ。
「世界の人に認められるような仕事……かな」
適当にはぐらかしておいた。
「そう。じゃ、外語大に行ったほうがいいかな。英語は得意?」
得意って言うわけじゃ無いけど、向こうの言葉と似ているから、何とかなるかも。
「はい、まあそれなりに……」
「行きたい学校や学部が決まってるなら、無理に不得意科目をやらなくてもいいのよ」
「へ~」
「私もね。理系科目があまり出来なくて、途中で文系受験に切り替えたの」
「そうなんですか。由希さんって、どこ通ってるんですか?」
「私は東都女子よ」
「え、あの有名な?」
東都女子って、偏差値80の超エリートじゃない! 何か、物凄い人来ちゃったな……大丈夫かな……
「凄いなぁ……頭いいんですね」
「そんなでもないわよ。大学なんてどこも一緒でしょ。教授なんか年寄りばっかりだし」
由希さんはそう言って苦笑した。
「大事なのは、どこに行くか、じゃなくて何をやりたいか、よ。英語の教科書ある?」
「あ、はい」
こうして、私は週に2回、家庭教師の先生にお世話になることになったんだ。
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「遅くなっちまったな」
暗闇の中を友子は歩いていた。
マンションまであと少しといったところで、彼女は囲まれていることに気がつく。
「全く、面倒くせぇな……」
不良の集団だった。
「あんただな、春日友子は」
「そうだと言ったら?」
「よくも仲間をヤッてくれたな!」
手に持っているナイフがギラリと光る。
「っ?!」
腹部に鋭い痛み。
刺された?!
「てめぇ……きたねぇぞ……」
「ケンカにきたねぇもくそもあるか。やっちまえ!」
数分後。そこには動くこともなく転がっている友子の無残な姿があった。
「ボス、動かなくなっちゃいましたよ」
「はん、他愛もねぇ奴だな」
「トモ?」
「ちっ、誰か来やがった、逃げるぞ!!」
一斉に散っていく不良たち。
「しっかりしてよ! トモッ」
友子の傷からは大量の血が流れ、服を、地面を赤く染め上げている。
眞奈美の呼びかけにも、全く動かない。
「こんな……こんなのって……」
『何故、こんなところで泣いている』
いつの間にかそこには一人の男性が立っていた。
「だ、誰……ですか?」
男は答えなかった。ただ友子の方をじっと見ている。
『その女は、死んでいるのか?』
「……」
無言で頷く。
『生き返らせてやろうか』
「え?」
眞奈美は耳を疑った。
「生き返る――ん、ですかっ?!」
『ああ。但し、その為には、見返りが必要だ』
眞奈美は、男にしがみつく。
「本当に生き返るんですかっ?!」
『もちろんだ。だが、タダで治してやるほどお人よしではない』
「で、でも……私、お金ないんですけど」
『金などいらん』
「じゃあ、何をすればいいんですか?」
『俺達の手伝いをしてくれればそれでいい』
それならなんとかなるかもしれない。眞奈美は承諾した。
「……分かりました」
『よし、約束だ。では、目を瞑れ』
「は、はい……ぐッ?!」
目を閉じた瞬間、鈍い衝撃が眞奈美を襲い、彼女の意識は、闇へと消えた。
続く
あとがき
「こんにちは、ユキ、改め、由希です。やっと私の出番が来た~。長かった……
今日はmさんもいないので、新しい人たちを紹介します。
秋本眞奈美さん=通称マナさんと、春日友子さん=通称トモさんです」
「自己紹介する前に一言いいか?」
「はい、トモさん、どうぞ」
「勝手に人を殺すんじゃねぇ!!」
「と、トモ、落ち着いて!」
「後でmさんに言っておきますね」
「こら、m!! アタシは謝ったって、許さねぇからな!!」
「ユキさんごめんなさい、騒がしくて」
「いいえ、いいんですよ、私もトモさんの気持ち、分かりますから」
「お前に分かるって言うのか? アタシの気持ちが?」
「私の分も含めて、後でmさんに言っておきます」
「そうか、お前も苦労してるんだな」
「少し話し変わりますが、お二人は小さい時からの幼馴染だそうですね」
「ええ。小学校の時からずっと一緒の学校なんです」
「そういえばそうだったな」
「あの時はもっと女の子で可愛かったんですよ、トモ」
「ま、マナ! それはどういう意味だ?!」
「トモ、顔が赤いよ」
「っ!」
「あはは……仲がいいんですねぇ~」
「お前、ホントにそう思ってるのか?」
「さあ、どうでしょう」
「……」
「それよりも気になるのが、お2人がどこに連れて行かれたのか、ということですけど」
「さあ? 彼は付いて来れば分かるって言っていましたが?」
「あのな、マナ、アタシが言うのもなんだが、あれは怪しすぎだろ」
「その点は心配ないと思うわ。だって、トモを生き返らせてくれるって」
「いや、それが怪しいって。それに、どう見たって、あれは魔――」
「きっと悪い人ではないんですよね?」(聞いてない)
「なんか、こういう天然キャラ、増えてる気がする……この作品、どうなるんでしょうか……」




