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第3部第12話

>Naomi

あれから、今日で5日目の朝を迎えた。

サファイア様はあの後なんとか一命を取りとめ、歩けるまでに回復した。

「皆さんのおかげで、この国が救われました。ありがとうございました」

サファイア様が私達にお礼を言ってくれる。

「あなたはこの国を救ってくださいました。何かお礼をしなくてはいけませんね」

サファイア様の言葉に、ノエルはブンブンと首を振る。

ノエルは、サファイア様が回復するまでの間、王宮に寝泊りしていた。

最初、王宮の精霊達は、みんな猛反対だった。

だけど、献身的に看護している彼女の姿を見たら、そのうちに何も言わなくなった。

後から聞いた話だけど、あのガロン代表が実はディストの部下だったらしい。

彼が諜報スパイ活動をして、攻め込む機会を伺っていたっていうから恐ろしいよね。

ちなみに、そいつはノエルの手によって処刑されたらしい。

彼女いわく、“害虫は生かしては置けません”だそうだ。

あの冷たい目でそんなこと言われたら……想像しただけで、怖っ。

「いいえ。私は、本当はここに居てはいけない者ですから」

こんな恥ずかしそうに辞退する姿を見たら、誰も彼女が魔族だなんて思わないよね。

「で、ノエルはこれからどうするの?」

「私は、魔王ゼクスの企みを阻止しなければなりません。なので、彼を追って魔域へ帰ります」

「危険だよ。一人で行くなんて!」

「いえ。自分の罪は自分で償わせてください」

「そっか」

「それから、女王。同僚が迷惑をおかけしたことをお許しください」

「いいえ。あなたのような方がいれば、未来は明るいかもしれませんね」

「そうであって欲しいです」

ちなみに、フィアは、あの後すぐに、帰って行ったらしい。

あの子の事だ、ただ遊びに来ていただけなんだろう。

相手するこっちの身にもなってって感じだよね。


「……それでは、女王。お元気で」

「また会えるといいね。ノエル」

「はい。皆さんもお元気で」

何処からともなく風が吹いてきた。

そのまま風に溶けて見えなくなる。風が収まる頃には、彼女の姿は見えなくなっていた。

「じゃ、シイル。私達も行こっか」

「はい、マスター」

ユミちゃんとシイルは、シイルの村に寄ってから戻ってくるらしい。

「歩くの面倒だから、飛んで行っちゃおうか」

「そうですね。じゃ、皆さん、少し離れて下さい」

そういえば、シイルの竜形態見るの始めてかも。

何か呪文のような言葉をシイルが発した途端、見る見る竜の姿に変わっていく。

「すごーい! かっこいい~」

『全く……見せ物じゃないのよ?』

そう言いながらも、褒められて満更でもなさそうだった。

「やはり竜の姿は目立ちますね。見物人が集まってきましたよ」

そう言ってサファイア様が苦笑する。

「じゃ、そろそろ行きましょ。騒ぎになるとめんどいし」

そう言ってユミちゃんがシイルの背中にまたがる。

「よっ、と。それではサファイア様。色々お世話になりました」

「またいらしてくださいね」

「はい、もちろんです!」

『いきますよ、マスター』

「OK!」


シイルの翼が羽ばたく。物凄い風圧。

一人と一匹は、空高く舞い上がって、そして見えなくなった。


「行っちゃったね」

「そうね……」

まだ周りがざわついてる。ますますひどくなってるような気が。

「お母様、収拾つかなくなりそうですよ」

「説明が大変ねぇ。困ったわ。まあ、何とかなるでしょう、きっと」

「そうですね」

こ、この母娘おやこは……楽天家にも程があるって。


そのとき、カルス達の騎士団が到着した。

「あ、カルスさん」

そう言って鷹野さんが駆け寄る。

「よお」

なんかいい感じなんですけど……この二人、絶対にデキてない?

「それより、何だ今の竜は?」

「カルス、お友達に失礼でしょ」

「誰が竜と友達になど……あ」

カルスがぽんと手を打つ。

「そうよ、あれシイルだもん」

「まったく。人騒がせな奴だ」

「何言ってるの。貴方位でしょ。竜と対等に話せる精霊は」

「まあな」

「自慢しちゃえば? 同僚に」

「嫌だ」

「なんでよ」

「話のネタにされるのは嫌だ」

ホントに嫌そうだった。

「いいじゃない。別に」


「ところで、カルス。今度はお城の中に配属になったんだって?」

「ああ。お前らには感謝してるぞ。兵士らしい仕事も出来るようになったしな」

「よかったですね」

上目遣いで見上げる鷹野さん。

「ああ。まあな」

照れるカルス。

ああもう、こいつらは……

「で、鷹野さんはやっぱりこっちに残るの?」

「はい、教会でしばらく生活したいと思っています」

「とか何とか言って、本当は違う目的があるんじゃないの?」

「え、あ、あの……」

真っ赤になって俯いちゃった。分かり易いなぁ。

「そう言えば、お前、ルビス様の近衛の話、断ったんだってな」

「ええ。私にはまだ力が足りませんから。もっと強くなって、その時また考えてみます」

「そうか。まあ、それがいいかも知れないな」

鷹野さんらしいなぁ。

「あ、あの、これを」

「あれ、学校の制服じゃない。いいの?」

「ええ。こっちでは必要の無いものですから」

そう言って鷹野さんは、畳んである制服一式を私に渡した。

洗っても落ちなかったのだろうか。所々に血痕が残っている。

「父に“家には戻れない”と、伝えてもらえませんか?」

親御さんに凄い誤解を与えそうな気がしたが、あえて指摘はしなかった。

「判った。そう言えばいいのね」

「すみません。ありがとうございます」

「ところで、ルビスはこれからどうするの?」

「私は、ここに残ります。しばらくはお母様の代わりも勤めなくてはいけませんし」

「そっか。そうだよね」

姉さんは残念そうだった。

「このオーブは? 返そうか? ルビスのだし」

「いえ。それはナオミが持っていて下さい。あなたが私の継承者である証ですから」

以前は‘継承者’と言われてもピンと来なかった。

でも、今なら、この重要性と、重さが良くわかる。

「……うん、わかったよ」



お別れの時が来た。

私と姉さんだけでは移動する事が出来ないので、ルビスに魔力を借りることにする。

ルビスが書いた魔法陣の中に私と姉さんが手を繋いで入る。

「またいらしてくださいね」

「はい、サファイア様もお元気で」

「じゃあ、鷹野さん頑張ってね」

「はい、お二人ともお元気で」

「またそのうちそっちにも行きますよ」

「うん。待ってるよルビス」

手を握る。これで本当にお別れだ。

「ナオミ。目をつぶってください」

言われるがまま目をつぶる。

「これから、あなたの力を狙って、魔が近寄ってくるかもしれません」

手を伝わって、ルビス暖かい力が伝わってくる。

「お守りです」

「んん……っ?!」

いきなり唇を塞がれた。

「これで大丈夫。下級魔族程度なら、力を弾いてくれます」

いきなりの口づけは心臓に悪い。するならするって言ってほしい。

「ちょっと、ルビス、いきなりは……あ、あれ?」


すでに魔法が発動していた。

光の向こうには、微笑んでるルビス、サファイア様、鷹野さん……


直ぐに視界が白くなって、何も見えなくなった。

こうして私達は精霊の国を後にした。


また、遊びに来よう。

そして、絶対、ルビスに一言文句言ってやるんだ。




魔域の最下層――

『ディスト、貴様は何をしている!?』

ディストの失敗に、魔王の怒りは頂点に達していた。

「も、申し訳ありません……ノエルの邪魔さえ入らなければ……」

『言い訳が通用するとでも思っているのか、愚か者がっ!』

「……ゼクス様、今一度チャンスを! 次こそ必ずや!」

「貴様には用はない。消えろ!!」

そう言うと魔王は手を振りかざした。

「あ、お、お許しください!! ゼクス様っ!! うぎゃあぁぁぁっ!」

ゼクスの魔法を受け、ディストは瞬時に塵と化した。



「おのれノエルめ……どこまで邪魔をする気だ……我に楯突く者は一人残らず消してくれるわ!」




第3部 FIN







あとがき

「こんにちは。鷹野玲子です。このコーナーを担当するのも、今回で最後となりました」

「いやぁ、やっと終わったよ。第3部。長かったなぁ」

「わ、いきなり現れないで下さいよ、mさん」

「ごめんごめん。では改めて。このストーリーを書いているmです。よろしく」

「それにしても、なんですか、この終わり方は?」

「いや、次の4部に含みを持たせようと思っただけなんだけど?」

「まさか、ディストがこうもあっさりと消されるなんて……」

「そろそろ新しい展開を考えないといけないからね。ずっとこのままじゃ面白くないし」

「では、誰か代わりに魔王の下に付くという事ですか?」

「それはまだ決めてないけど、一応構想だけは決まってるから」

「そうですか。ところで、私はどうなるんですか?」

「言ったろ。しばらく精霊の国で暮らしてもらうって」

「じゃあ、私の出番は4部にはないんですね」

「今のところは考えてないけど、もしかしたら出すかもしれない」

「はぁ」

「ほらほら、司会は落ち込まない。今回は全員に来てもらってるんだから、早くしないと」

「は、はい。それでは、まずはルビスさんとサファイア様親子です。どうぞ」

「こんにちは。ルビスです」

「今回、城の中に魔族を入れられたせいで、偉い迷惑を被りました、サファイアです」

「うわ。もしかして怒ってます?」

「もしかしなくてもそうです。全く、こっちは死にかけたんですからね」

「お母様がこんなに怒るの珍しいよ……」

「城の兵士もほとんど殺されてしまうし……これでは国が成り立ちません」

「だから、玲子に二人の守護に就いて貰おうと思ったんだよ。なのに断るし」

「私のせいですかぁっ?!」

「玲子なら兵士3人分は働けるからね」

「勝手に決め付けないで下さいっ!!」

「では、次はその兵士の中で運良く生き残った人~」

「あ、カルスさん///」

「こら、運良くとは何だ、運良くとは!! まるで我々が役立たずみたいじゃないか!」

「その通り」

「なにぃっ?!」

「何言ってるんですか、mさん。カルスさんは役立たずじゃありませんよっ」

「そう言ってくれるのはお前だけだ」


△しばし見つめ合う二人。


「ね」

「ホントですね……mさんの言った通りですね」

「え、何がですか、ルビスさん?」

「あ、ううん、こっちの話」

「まあ、カルスも実は結構強いから。じゃなきゃ、こんな何話にも登場させないし」

「その通りだ」

「自分で言わないの」

「では、続いて森野さんとシイルさんの主従コンビです」

「主従コンビって……そう呼ばれると、あんまりいい気はしないわね」

「私もイヤです。もっとちゃんと紹介して下さい」

「あ、ごめんなさい」

「まあ、いいじゃない。玲子も悪気はないんだし」

「mさん……」

「はいはい、そんな目でオレを見つめない。カルスがヘコんでるよ」

「あ」

「まあ、すぐ立ち直るよ。単純だし」

「なんだとっ!!」

「ほら」

「ぐっ……」

「と、ところで、シイルさんは森野さんの事どう思ってるんですか?」

「はい、マスターは、とっても良い方ですよ。優しいし、強いし」

「じゃあ、逆に嫌な所は?」

「ちょっと怒ると怖いトコです」(即答)

「ふうん――シイルはそう思ってたんだ――」

「え、あ、あの……」

「うふふ。シイル。後でちょっと“話がある”から」

「は、ハメられました……シクシク」

「では、最後になりましたね。直美さん陽子さん姉妹です」

「待ちくたびれたわよ。全く」

「そうよ。私達は、ホントは最初に呼ばれるべきじゃないの?」

「いいえ。私はそうは思いません」

「どうして? 鷹野さん?」

「やっぱり主役は最後に登場するべきだと思いますから」

「そうなの?」

「ええ。ヒロインであるあなた方はやはり最後に出てこそだと思います」

「そっか。ちゃんと考えてくれてるのね」

「ありがと。鷹野さん」

「な。言った通りだったろ」

「そうですね」

「え? 何が?」

「そのままの意味だよ」

「誤魔化さないで、ちゃんと教えてよ」

「じゃあ、ついでだから魔族も呼んじゃおうか」

「ちょっと、私達で最後じゃなかったの?」

「オレはそんな事一言も言ってないだろ」

「……」

「という事で、ノエルとフィアの二人に来てもらったよ」

「mさん、誰もディストを殺してくれとは言ってないんですよ」

「そうよ。ディストを返しなさいよ」

「あれは魔王の意思だよ。オレの意思じゃないさ」

「ほんとに?」

「最初はディストは生かしておくつもりだったんだから」

「そうなんですか?」

「うん。さもなくば、ノエルに殺させる、とかね」

「そんな事したくありません!」

「そうかなぁ? 結構絵になると思うけど」

「嫌ですっ!!」

「まあ、とにかく、最初はディストは生かしておくつもりだった。

 というより、直美達が帰った時点で終わる予定だったんだ。

 書いているうちに頭の中にあのシーンが浮かび上がって、書き直した」

「ふぅん、そんなことって、あるんだ」

「予定に無かった事、または書いてて急に思い付いた事は今までにも結構あるよ」

「例えば?」

「じゃあ、もう一つ。第2部で、ノエルとルビスが初めて会うシーンがあったよね。

 あの後、もう一度二人を会わせて、対決させようと思ってたんだ」

「ノエルとルビスって、どっちが強いのかな?」

「書いてみようか?」

「なんか、見たいような見たくないような」

「まあ、そういうことも考えてはあるけどね、一応」

「一応って、アンタ」

「後はあとがきだね。このコーナーは、即興で思い付いた事どんどん書いてる。

 だから、本文のキャラの性格とかなりの差があったりするんだよね」

「それはあんたが悪いんでしょうが」

「本文も頑張って書きなさいよ」

「へいへい」

「いい加減な返事ねぇ」


「では、そろそろお時間となりました。第3部のお相手は、鷹野玲子でした。次回もお楽しみに」


「m、ちゃんと続き出るんでしょうね?」

「多分……」


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