第3部第9話
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「こんにちは。カルスさん」
「お前は――」
公務中、突然後ろから誰かに声を掛けられ、ビックリして後ろを振り向く。
そこには見覚えのある顔があった。
「――ああ、確か昨日来た人間だったな」
「はい。鷹野玲子と申します」
そういえばそんな名前だったな。物覚えは良い方じゃないからな。
「こんな所に何の用だ。はぐれたのか?」
「いえ、教会の場所を教えていただきたいのですが」
教会? 随分と信仰深い奴だな。
「初めてなので、何もわからなくて」
「で、オレに案内しろと」
「すみません。お願いできますか?」
やれやれ。こいつらが来てから、どうも振り回され気味だ。
人間のお守りなど御免だったが、下手に動き回って迷子になられるよりかはマシだ。
折角だから付き合ってやることにした。
「まあ、少しぐらいなら時間もあるし、いいだろう。よし、俺に任せておけ」
「ホントですか?」
「ああ。人間に嫌悪感を抱く者もいるからな。そんなやつらに捕まれば何をされるか」
「ありがとうございます」
もちろんこの女のことを心配などしていない。だが、万が一ということがある。
この女はルビス様と大層仲が良いように見えた。ルビス様は失望されるだろう。
「よし、付いて来い」
「あれがそうだ」
しばらくして、教会の屋根に取り付けてある十字架が見えてきた。
「どうもありがとうございました。では――」
そう言うと、女は勝手に入ろうとする。
「まあ、待て。知り合いがいるんだ。折角だから紹介してやろう」
いきなり入っても、追い出されるのがオチだろう。
扉を開ける。すぐに目的の人物は見つかった。
祭壇の床に座り込んで、瞑想をしている女に声をかけた。
「よお、ルーナ」
女の名前はルーナ=フィン=プルピット。
金髪のセミロングと金目が眩しい。
髪の色と目の色は、自分の種族と魔力に密接に関わっているとされる。
もちろん例外はあるが、こいつは元々が司祭の家系だけに特別だ。
魔力も高いし、何より、オーラがある。器量もいい。高嶺の花ともいえる存在だ。
本人が言うのもなんだが、土属性の俺とつるんでるのは本来はありえない。
ただ、それは、こいつがただ黙って突っ立っていれば、な話だが。
「あ~ら、珍しいわね、カルス。貴方がここに来るなんて、どういう風の吹き回し?」
「なんだと?」
「明日は雪になるかしらね。それも大雪かしら?」
コランダムは、有史上、まだ一度も雪が降ったことは無い。それほど温暖な地域だ。
こいつは、いつも俺に対して減らず口を叩く。
だからこそ、幼馴染として成立してるんだろうな……
いつもなら言い合いになるのだが、今回はグッとこらえた。
「……そんなことより、お前に客だ」
「私に?」
「は、初めまして……」
ルーナは一目見て、人間だと分かったらしい。
「あなた――人間の子ね?」
「はい」
「昨日話しただろう。人間の街から来た奴等が居るって」
「なるほどね」
そう話すとルーナは納得したらしい。
「それで?」
「あ、あの、私、宗教にとても興味があるんです。色々教えてくださいませんか」
相変わらず人見知りが激しい奴だ。
「いいわよ」
「ホントですか?」
「ええ。但し、入信する事が条件」
「おいおい。随分と急だな。いきなり入信させる奴があるか」
「それでいいかしら?」
「はい。構いません」
即決だった。
「私もあなたの事色々聞きたいしね」
そりゃ、そうだろう。何せ何百年も前から交流途絶えたままだからな。
「ありがとうございます。ルーナさん」
「ところで、あなたはなんていう名前?」
「鷹野玲子といいます。玲子と呼んで下さい」
「よろしく。レーコ」
「じゃ、俺はそろそろ行くからな」
「はい、ありがとうございました」
出て行く間際にこう言ってやった。
「じゃあな。仲良くやれよ」
>Reiko
帰り道、私は知っている姿を見つけて声を掛けた。
「カルスさん 」
「お、また会ったな。どうだったか?」
「はい、優しい方で良かったです。ありがとうございました」
「そりゃ良かった」
私は、ここに来る時からずっと考えていたことを頼んでみることにする。
「それと、もうひとつお願いがあるんですけど」
「なんだ」
「剣のお相手をしてもらいたいのです」
「お前……本気か?」
やっぱりこれには驚いているようだった。
「多分、これからルビスさんのお手伝いをすることになるでしょう。
その為には、まず自分の実力はどの程度なのか、知っておきたいのです」
彼は少し考えて。
「よしわかった。相手になってやる。場所を移動しようか。街中ではまずいからな」
「ありがとうございます」
着いたのは彼の仕事場。初めて会った門だった。
「ここなら大丈夫だ。さあ、かかって来い! 」
「はい! いきます! 」
私は力いっぱい剣を振った。
だけど、全部避けられる。まるで相手にされていない。
段々と、私の息が上がってきた。でも向こうはまだまだ余裕みたいだ。
「ハァ、ハァ……避けてばっかりなんて……」
「何を言うか。生きるか死ぬかの瀬戸際で相手の攻撃を避けないでどうやって勝つんだ」
確かにその通りだった。だったら――
「……」
「お、どうした。もう降参か?」
『奥義! 閃光斬!! 』
「何ぃっ?!」
ドオォォォォン
光の刃が、一直線に彼に襲い掛かる。だけど・・・
「危ねぇなぁ、おい……」
信じられなかった。傷一つ負っていない。
「嘘?! これも当たらないなんてっ!」
「そんじゃ、今度はこっちから行きますか」
「え?!」
ビュンッ
彼の姿が視界から消えた……と思ったら、後ろから羽交い絞めにされていた。
そのまま、喉元に槍の切っ先が突き付けられる。
「ぁ……ッ?!」
「防御に関しては素人以下だな。
こんな俺に負けてるようじゃ、ルビス様のナイトは勤まらねぇぞ」
「強いですね、やっぱり」
「バカ言え。俺はまだ門番だぞ。俺より強い方はまだ沢山居る」
やっぱり私の実力はまだまだみたいだ。
「でも、筋は悪くねぇ。さっきの技は俺でも教わりたいぐらいだ」
「ホントですか? 」
「ああ。俺は人を見る目はあるつもりだ。よし、明日から稽古つけてやる」
「よ、よろしくお願いします」
良かった……これで私も皆の役に立てるようになれるかもしれない。
「それに、丁度俺も練習相手がほしかったんだ」
「え……どうしてですか?」
「近いうちに試験があってな、それに受かれば昇格できる。
1年ごとに試験がある。ランクが上の人でもいつ落ちるかわからないから気が抜けない。
こうして強い兵力を維持でき、この国の平和は守られているのだ」
「そうなんですか」
私もがんばらないと。
「ところで、あっちはどうするんだよ」
「何がです?」
「教会だ、教会。お前、体もつのか?無理はしないほうがいいんだぞ」
「はい、両方するつもりですから」
「両方って、お前……」
「以前、学校行きながら教会に通っていたことがありますから」
「お前、実はすごい器用なやつなんじゃ。一つに絞ればすごくいいと思うが」
言われてみても、そんな実感はない。
「でも、一つには絞れません。二つともやりたいことですから」
「神官戦士にでもなるつもりか。まあいい、お前のやる気には恐れ入った。
うかうかしてるとすぐに抜かれるな……大したやつだな、お前は」
>Naomi
「えぇ?! ホントに入信しちゃったの?! 」
帰ってきた鷹野さんの話を聞いてビックリした。
「はい、住み込みは明日からですけど」
絶対お嬢様のすることじゃないよ。
「数年間帰れなくなりますよ。それでもいいんですか?」
ルビスも心配している。
「向こうの生活よりマシです」
お嬢様育ちだから市民の生活に飢えてるのかな。
それとも何か帰りたくない事情があるのかな? まあ、本人に直接聞く事じゃないか。
鷹野さん居なくなるとかなりの戦力ダウンになるなぁ。
「あ、それから、カルスさんから皆さんにお話があるそうです」
「カルスが?」
続く
あとがき
「こんにちは。鷹野玲子です。
mさんの思いつきで精霊の世界に留まることになってしまいました」
「でも半分は君の意思だろ」
「そうですけど……でも展開が速すぎるじゃないですか」
「まあ、一応予告してあったからね。早めに流れを決めといた方がいいし。
それに、君だって、満更じゃないだろ?」
「え、ええと……それは、そうですけど」
「こら、バカ作者! あんまり鷹野さんを苛めないの!」
「あ、直美さん」
「人をバカ呼ばわりするな! それに、主人公を君に決めたのはこの俺なんだぞ」
「うっ、そ、それは、判ってるけど……そ、そんな事より、私の部活の話はいつ書いてくれるのよ?」
「あ、それ書くのやめたから」
「ええ~……じゃあ、なんでテニスが得意なんて設定にしたのよ?」
「最初はそういうシナリオも書きたかったんだけどね。
描写が難しいのもあるし、ちょっと前まで王子様、流行ってただろ?
真似してると思われたくないし」
「じゃ、何でテニスなの? 他のスポーツでも別に良かったじゃない」
「元々はオレがそれを考え付いた頃、丁度テニス部だったからだよ。
上手くなりたいなーと思って、君を作ったわけ。君のモデルとなった子もテニス部だったし」
「え……そうなんだ。恋人?」
「違う違う」
「何だ違うんだ、がっかり」
「何期待してんだ、お前……」
「ねえ、和也との話、もっと書いてよ。私、このままじゃ」
「このままじゃ?」
「あ……」
「そんなに欲求不満か?」
「う、うん」(/////)
「まあ、今回は異世界に来てるからね。ちょっとムリかな」
「外伝でもいいから。お願い」
「……ここに裏シナリオ載せるわけには行かないしなぁ」
「いや、私は別に……それを書いて欲しいとは言ってないんだけどさ」
「でもなぁ……ラブラブシーンばっか書いてもなぁ……空しくなるだけだし」
「そ、そうだね」(笑えないよ)
「少しネタバレになるけど、直美が大学生の時点でこの話は終わらせようと思ってるんだ」
「え。そうなの?」
「まあね。あんまり長くやってもしょうがないし」
「えっと、今私は高2という設定だから――かなり先じゃない」
「まだ書きたいの沢山残ってるからね」
「そっか。じゃあまだ私達は当分あんたに振り回されるのね」
「まあね。期待しててよ」
「期待なんかしてないわよ、全く……私の青春を返せ~!!」
「性春の間違いじゃない?」
「う、うるさいよ!!」
「はい、お話もまとまった所で、そろそろお時間です」
「まとまってないわよ。それに鷹野さん、いつからそんな性格になったのよ」
「それでは、この辺で失礼します。お相手は鷹野玲子でした。さようなら~」
「あ、ちょっと、待ってよ、鷹野さん!!」
「段々玲子も黒くなってきたな。誰のせいだ?」
「あんたのせいでしょ、あんたの!!」