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第3部第7話

少し過激な表現があります。苦手な方はご注意ください。

>Yohko

2日ぶりのお風呂。

今まで立ち寄った村は、こういった浴場のような施設は無かった。

水浴びのようなものはできたけど、サッパリとまではいかなかった。

小さい村だったから、仕方ないのかもしれないけど。


それにしても、とてつもなく広い。

来賓に使われているということだけあって、設備も整っている。

無駄に豪華な装飾品とか、それっぽい。

私たち4人が入っても、まだかなり余裕があった。大きな旅館の露天風呂のような感じ。


「おお~、シイルの胸大っき~……」

「ちょっと、ヨーコ、そんなに見ないで」

「形もきれいだし。何食べたらそうなるの? それとも竜族はみんなこんななの?」

下手なタレントやモデルさんでもなかなかいないんじゃないかな?

「うん、初めて見たとき、私もびっくりしたよ。それにね……それっ」

「あ……?!」

森野さんがシイルの下着をずり下げる。と、私の目の前にとんでもないものが飛び込んできた。

「そ、それ……」

女の人の体には、絶対にありえないもの。

ついまじまじと見つめてしまった。

「……」

鷹野さんにいたっては、顔を真っ赤にして目を逸らす。

「シイル……男の人……じゃないんだよね?」

「竜族の女性は、誰でも持ってるんですよ」

人間や、精霊、魔族に比べて個体数が少ない竜族。

少しでも子孫を残すために、こういう身体になっているんだとか。

ちなみに、竜族の男性は普通らしい。ちょっとヤバイ想像していた自分が嫌になった。



「あれ? 鷹野さん、どしたの? 早く入ろうよ」

「え、ええ……」

彼女はまだ服を着たままだった。私に促されるとゆっくりと脱ぎ始める。

「入りたくないの? あ、シイルのせい?」

「い、いえ、そうではないんですが……あの、皆さん、その……綺麗な身体だなって思って」

「あらら」

恥じらいながら自分の胸元に手を当てる。

「そんなことないって。鷹野さんだって綺麗じゃん」

「で、でも、その……」

「小さいの、気にしてるの?」

「……はい」

またもや、真っ赤になって俯いてしまった。

「早くお湯に入りなよ。風邪引いちゃうよ」

「あ、はい」

言われてそそくさと湯船に入ってくる。そこをすかさず。

「えいっ」

私は後ろから羽交い絞めにしてやった。

もにっ。

「ひぃあぁぁっ?!」

可愛い悲鳴を上げて逃げようとする。でも離してあげないもんね。

「何だ、けっこう胸あるじゃない。鷹野さんって、着痩せするタイプでしょ?」

「ゃ、ちょっとやめ……」

確かにちょっと小ぶりだけど、日本人にしちゃ結構あるほうじゃないかな?

お嬢様育ちだから、肌も白くてスベスベだし、柔らかい。

……何かムカついてきたので、意地悪することにした。

「こんなにあるんだから、気にするほどでもないわよ。ほれほれ」

「だ、だめ、そこ……ぁ……っ」




「暑ぅ~」

「誰のせいですかぁ! もう……っ!」

ちょっと風呂場で暴れたせいか、部屋に戻っても、なかなか汗が引かなかった。

涼しいから、下着のままでいようかな。

「陽子さん……誰か来たらどうするんですか?」

「大丈夫よ、どうせ私達の貸しきりだし」

なんて言って、結局みんなそのままの格好でいた。

でも、鷹野さんだけは、そそくさと服を着始める。

でも、こんな時に限って悪い事って起きるんだよね。

急にバンッと戸が開いて。

「おい。全員いるかおまえたち……うおわっ?!」

『きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!』

4人同時に悲鳴をあげる。

「ちかーん! 変態ー!」

「ま、待て、誤解だ」

ばき。どか。どす。

「ぐぁぁぁっ!!!」




「いつつ……少しは手加減しろ! 暴力女」

「冗談じゃないわ。ノック位しなさいよ、カルス」

「仕方ないだろ。まさかあんな格好で……格好で……」

ぎゅ~。

耳をおもいっきり引っ張ってやる。

「いててててて! なにするんだ!」

「なんか変な想像してたでしょ。全く……で、何の用なの」

「ああ、そうだったな。王宮からお呼びだ」

どうやら私達がサファイア様に呼ばれたらしい。

「全く羨ましい奴らだ。人間のくせに王宮に入れるんだからな」

カルスが皮肉たっぷりに言う。

「お前らサファイア様に感謝しろよ。今回の事は特例だからな」

「分かってるわよ。そんな事」

「じゃあな。俺の役目はここまでだからな」

そう言うとカルスは背を向ける。

「あれ? カルスは行かないの?」

「俺みたいな下っ端は勝手に城の中へ入る事は許されないんだ」

ここからは、彼の上官の管轄になるらしい。

「だったら私が頼んであげるよ」

「お前らの頼みなど、サファイア様が聞いてくれるわけ無いだろうが」

まあ、普通はそう思うよね。

「平気平気。さ、一緒に来て」

「おい、ちょっと待て、腕を引っ張るな!」

すると、向こうから甲冑のようなものを着込んだ兵士らしき男性が歩いてきた。

「お、どうしたカルス。急ぎの用か」

「あ、上官」

敬礼。

この人が、王宮まで案内してくれるはずだった兵士かも。

「これからこいつらを連れて王宮へ行く所です」

「人間の女じゃないか。不審者か」

「失礼ねぇ」

「何だ、違うのか」

「呼ばれているのは私達で、彼はその付き添いですよ」

「何だ、連行ならお前がしなくてもいいぞ。持ち場に戻っていろ」

あくまで私たちを不審者にしたいらしい。

「いえ、どうやらルビス様に面識があるようなのです。」

「なるほど。言われていたのはこいつらのことだったか。ところで、ルビス様のご様子はどうだった?」

「はい特には……変わった所と言えば……髪の色ぐらいでしたか」

「か、髪の色……だと? そんな馬鹿な?! ルビス様ともあろうお方が……さてはお前たちが!」

「だから違うって言ってるでしょ! 相手にしてらんないわ。行くわよ」

「お、おいこら、だから腕を引っ張るなと言うに!」

面倒くさくなってきた。私は、カルスの手を掴んで、その場を後にすることにした。

兵士が後ろで何か言っていたけど、聞こえないふりをする。

トラブルの巻き込まれるのはごめんだし、時間の無駄だもんね。



>Naomi

しばらくティータイムを楽しんでいると、一人の兵士が入ってきた。

「お待たせ致しました。人間たちをお連れしました」

「あら、あなたは先程の」

そういえば、見たことある。さっき門の所にいた人物だ。

「あ、ルビス様、先程は失礼致しました」

「構いませんよ、カルスといいましたね。いつもご苦労様です」

そう言って労う。それに敬礼で答える。

なんかこういうやり取りを見ると、お城にいるんだなぁって実感する。

「おい、おまえ達、入れ。くれぐれも粗相の無いようにな」

「失礼します」

先頭に姉さん、続いて鷹野さん、ユミちゃん、最後にシイルが入ってきた。

入った瞬間に、サファイア様はシイルがドラゴンだって解かったらしい。

「あなたが、竜族の子ですね。話は聞いていますよ」

「はい、白竜ホワイトドラゴンのシイルと申します。初めましてサファイア様」

「な、なんだと? お前、竜族だったのか? 全然気付かな……むぐ」

「うるさいわよ、黙ってなさい」

姉さんが口を塞ぐ。

「本日はお招き頂きまして、有難う御座います。とても光栄です」

シイルがひざまずく。

「あらあら、そんな律儀な挨拶は抜きにしましょう。公式の場では無いのですから」

「は、はぁ……」

シイルは戸惑っているようだった。

「それに、ああいう張りつめた雰囲気って私苦手なんですよね。性に合わないの」

「お母様っていつもそうですよね。だから守堅派の方たちも……」

「こら、ルビス、お客様の前で。もう……」

そう言いながらも、サファイア様はなんだか嬉しそうだった。

「あれ、ルビスの髪、戻ったんだ」

姉さんがいち早く気付く。

「ええ。お蔭様で」

「ルビスさん、こんな綺麗な赤髪だったんですね」

「こら、おまえ達、ルビス様と呼べ」

「構いませんよ。それに、今更様付けされても、ちょっと変な気がしますし」

「は、はぁ……」

こんどはカルスが首をかしげる。

「今日は無礼講ですから。あなたも、そんなに緊張なさらずに。ね」

「は、はい。そ、それでは、私はこの辺りで失礼します」

この独特の雰囲気に困惑したのだろう。そう言って、足早にこの場を去ろうとする。

「あ、待って。折角いらして下さったんですもの。お茶、飲んでいかれませんか」

「い、いえ。私は公務があります故……」

「まあまあ、そう言わずに、カルスも一杯」

「よ、宜しいんで御座いますか?」

「ええ。みんなで頂いた方が美味しいですよ」

「そ、それでは一杯だけ……頂きます」

「どうぞ」

緊張した面持ちでカップを受け取り、それを静かに口に運ぶ。

「……」

「美味しいですか?」

「はい。とても美味しいです」

笑顔。こんなカルスの表情、会ってから初めて見たかも。

「感動です。ルビス様の煎れたお茶を飲めるだなんて……今日はこれまでで最高の日です」

「大げさですよ。それは」

「お前らにも礼を言うぞ。すまなかったな色々と」

さっきの生意気な態度は何処へやら。

「いいって別に」

「折角名前を覚えてもらったんだから、がんばって出世しなさいよ」

「ああ。では、そろそろ持ち場に戻ります。本日は有難う御座いました。失礼致します」


「彼、嬉しそうだったね」

「ですね。あまり今までこういうことはありませんでしたから」

「そうなの?」

「ええ。謁見の間でお茶会なんて、普通はやらないでしょ」

確かに。

「そう言えば、今まで下々の方々をあまり招待していませんでしたね」

サファイア様の顔が心なしか曇る。

「王たるもの、全ての人々に対して平等に接しなければいけないのに……」

「お母様……」

「少し考える必要がありますね。とは言っても、急には変えられませんし」

「守堅派の方々ですか?」

「ええ。彼らは自分たちの考えに合わない人たちを排除しようとしますから――」

ここまで言ったところで、話が止まる。

「あらいけない。あなた方にお話しする事ではありませんでしたね。ごめんなさい」

「そんな、とんでもないです」

サファイア様は、しばらく考え込んでいたが、急に私たちのほうに向き直って、

「そうだ、今日はみなさん泊まっていって下さい」

「そんな。そこまで気を使っていただかなくても」

「スヴェン、食事と部屋の用意をお願いするわ」

「はっ、畏まりました」

聞いちゃいねぇ。

「ルビスは城内を案内して差し上げて」

「はい、お母様」

「どうか、ゆっくりして行ってくださいね」

そういって、部屋を出て行く女王。

「ありがとうございます。サファイア様」

何か、至れり尽くせりだなぁ……

お城に泊まれるなんて、思ってもみなかったよ。


続く


あとがき

「こんにちは、水口直美です。鷹野さんが今回は出たくないって言ってるんだけど……

 あ、ほら、そんな陰に隠れてないで、一緒にやろうよ」

「で、でも……」(顔を真っ赤にする)

「mには後で私がちゃんと言っておくからさ」

「は、はい……で、では改めまして。司会の鷹野玲子と」

「(切り替え早いなぁ)水口直美です」

「今回は、サファイア様にお越しいただきました。色々とお話を聞きたいと思います」

「初めまして。ご紹介に預かりました、サファイア=フィオラ=コランダムです」

「サファイア様、よろしくお願いします」

「よろしくね。みなさん。ルビスは……来てない様ね」

「いつもは来るんですけど……サファイア様だから遠慮しているのでしょうか?」

「あの子はそんな性格じゃありませんよ。目立ちたがり屋ですから」

「あ、それは当たってるかも」

「それに、昔から負けず嫌いで……」

「そ、そうなんですか?」

「ええ。学校の昇格試験の時、通過順位が一位じゃなかったって拗ねるんですよ」

「へぇ~……意外~」

「お母様ぁ~何バラしてるんですかぁ!!」

「あら、来たわねルビス」

「これじゃ、私が築き上げてきたイメージがぁ」

「イメージって……ルビス、何を考えてたのよ」

「え、だって、王女って言えば、綺麗で繊細でおしとやかな人じゃないですか」

「ルビスはそれに、酒好きで天然を合わせればいいのよ」

「うう~非道いですよ、ナオミ」

「まあ、読者様はもうルビスの性格知ってると思うけど」

「そんなことないですよぅ」

「じゃあ、昼間っからお酒飲むのやめなさい!」


「今回はそろそろお終いです。サファイア様には次回も来て貰おうと思っています」

「またよろしくお願いしますね」

「こちらこそ。それではまた次回お会いしましょう~」

「私って一体……しくしく」



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