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精霊の扉 第5話

放課後、姉さんに声をかけられる。

「今日は会ってほしい人がいるの。後で神社に来てくれる?」

「う、うん」

事件の日から一週間。あの神社には行ってなかったから、ちょっと動揺した。

「じゃ、私は準備があるから先に行くわ」

そう言って姉さんは一人で学校を後にした。

会って欲しい人って誰だろう?


「これは、一体……」

石段を上がると、境内は一面魔法陣だった。

大小様々な円がそこらじゅうに並んでいる。

「あら、随分早かったのね。じゃあ、ちょっと手伝ってくれる?」

「今日は何するの?」

「言ったでしょう。会ってほしい人がいるって。今からその人を呼び出すの」

「よ、呼び出すって、どういう事?」

「そのままよ。ちょっと直美の力を借りたいの」

そう言って姉さんは私の手をとり何やら呪文を唱え出した。

すると、魔法陣全体が輝き、真っ白な光の柱が天に向かって真っ直ぐに伸びていく。

「うわ……まぶしっ」

まばゆい光が消えた後、今度は中央の小さな魔法陣から炎が噴出した。

最初は円の上で燃えているだけだったのが、段々と渦を巻いて大きくなっていく。

「よし、成功ね」


炎が収まる。

そこには、いつの間にか一人の女の人が立っていた。

サラサラの赤い髪に宝石のような赤い瞳。

着ているのは純白のドレスのような衣装。

この人一体誰だろう?


『こんにちは、ヨーコ』

「ごめんね。だいぶ待たせたわ」

『気にすることはありませんよ……あら?』

赤い女の人は、私と姉さんを見比べて、驚いた様子だ。

「あ、そういえば、まだ言ってなかったね。私の双子の妹、直美よ」

『そう、双子ですか。本当にそっくりですね』

ふわりとした笑みを浮かべる女性。凄く綺麗だった。


『初めまして。私はルビス=ティアナ。炎を司っている精霊です。ヨーコの守護をしています』

「せ、精霊!?」

私は、何もできずに、ただ固まってしまっていた。

『あらあら、突然のことでビックリしているみたいですね』

だって、精霊なんて、伝説かおとぎ話にしかいないと思っていたんだもの。

それが、今目の前にいるなんて。

「私の力は彼女に引き出してもらったの」

「そう、だったんだ」

何かまだ信じられない。

『最初はひどかったんですよ~。覚えが悪くて』

「る、ルビス!」

『手の中で爆発させちゃうし』

「いやぁぁぁぁっ。言わないでぇっ」

お姉ちゃんもやっぱりそうだったんだ。

「あははは。なあんだ、心配して損した」

「――さすがに、何十回とまでは行かなかったわ」

「どうしてそこでこっちを見るのよ」

「べぇつにぃ~」

「な、なによぅっ、お姉ちゃんの意地悪っ!」

『クスクス。仲がいいんですね。うらやましいわ』

『どこがっ!』

気付いたら、すっかり和んでいた。


唐突に姉さんが切り出した。

「直美にお願いがあるの。ルビスの力になってあげて」

「え、私が?」

『今世界は、魔族によって支配されつつあります』

魔族ってもしかして、この間の化け物のことなのかな?

『どうか、貴女にも一緒に戦って頂きたいのです』

いきなりそんなこと言われても、ちょっとどうしたらいいか判らない。

『それを止められるのはあなたたちのような力を持った人達だけ』

そっか。姉さんが言ってたことって、この事だったんだ。

でも、嫌だな。あんなのを相手にしなくちゃいけないなんて。

「どうして魔族なんか」

『時空の扉の異常が原因なのです』

「時空の扉?」

「異世界同士を結んでいる扉のことよ。本当なら、そこで食い止められる筈なんだって」

姉さんが補足してくれる。

「扉っていっても、実際は扉の形をしているわけではないんだけどね」

異世界かぁ。想像も付かないなぁ。


『しかし、この世界にも魔族が出没するようになってしまいました』

私は迷っていた。正直、あんなのと戦うのは、嫌だし、それに怖い。

でも、私は、この生まれ育った街が好きだ。

「判ったわ。どこまで力になるか分からないけど」

あんな奴らにこの街を壊されたくはない。私は心を決めた。

「そういうことなら協力するよ」

『ありがとう、ナオミ。決断してくれて感謝するわ』



「え、もう行っちゃうの?」

『すみません。また来ますね』

そう言って微笑むルビスさん。

『それに、この場所すごく気に入りました。ここに棲んでしまいたいぐらいです』

「駄目よ。神社の人がビックリするでしょ」

『ええっ? ここって空家じゃなかったんですかぁっ?』

「をいをい……」

ほんとに大丈夫かな、この人?


「もしよかったら今度はうちに来る?」

『ほんとにいいんですか?』

「もちろん! いつでも!」

『では、近いうちにまた。さようなら』

フワリと笑みを浮かべた途端、彼女の体が段々と溶けるように薄くなっていく。

「ルビスさん、またね」

私達は、彼女が消えていった場所をしばらく眺めていた。


続く


あとがき

「こんにちは。ルビスです。ついに私にも出番が。長かった……

 あとがきとギャグのキャラだと思ったかも知れませんが、結構重要な役なんですよ~」

「そういうことは、自分で言わないものなのよ。ルビス」

「いいじゃないですか。ずっと待っていたんですから。

 ところでナオミ、ヨーコはどこ行ったの?」

「さあ?」

「あの子がいると、どうも喧嘩になってだめなのよね~」

「……」

(それはルビスに責任が)


「同じ双子とは思えないわ。何でここまで違うんでしょうね?」

「そんなこと私に言われても」

「あ~あ、ヨーコじゃなくて、ナオミの守護をしたかったな~」

「ち、ちょっとルビス!」


「言いたいことはそれだけか~!!」

「あ、あら、ヨーコ。いたんですか?」

「いたんですか、ぢゃないでしょ?何よその言い草わ?」

「だって、ヨーコさんいぢわるするんですもの……しくしく」

「嘘泣きしてもダーメ。全く、こんなのが精霊だなんて。もっと可愛いものでしょ?」

「あーら、私が可愛くないとでも言いたいの?」

「ウフフフフ」

「……」



「ほらほら二人共、もう時間だよ」

「え~もう?」

「早いですねぇ」


「それではお相手は精霊ルビスと」

「樋口陽子と」

「水口直美でした~」(良かったー今日は何も無くて)


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