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第3部第2話

>Naomi

「着いたわよみんな」

「うぇ~……気持ち悪」

テレポートは何度やっても慣れない。

クラクラする目で回りを見回す。

「うわ~、凄い景色」

そこは辺り一面の草原、近くに小さな遺跡らしき物が見える。

「ここはね、私と師匠の思い出の地なの。何も変わってないわ」

ユミちゃんが懐かしそうに景色を眺めている。

「ユミちゃん、これからどうするの?」

「近くに知ってる街があるのよ。案内するわ」

「お願いします。貴女だけが頼りなんです」

なるほど。だからルビス、ユミちゃんに頼んだんだ。

「ところでさぁ、お金どうするの?」

「あ、考えてなかった」

「前持ってたのはどうしたんですか?」

「もう必要ないから使っちゃったのよね。こんな事なら少し取っとけばよかったな……どうしよ」

「私の指輪、よかったら使って下さい」

ルビスが自分のしていた指輪を外してユミちゃんに手渡す。

橙色の宝石がついている、見るからに高価そうな物。

「これで少しは足しになるでしょう」

「いいの? 大事な物なんじゃない?」

「路頭に迷ってしまったら元も子もありませんしね」

「ありがとう、助かるわ。じゃ、行こっか」



「着いたわ。ここがコルトの街よ」

見た感じ、ヨーロッパの地方都市といった感じだ。

規模はやや小さめだけど。

「穏やかそうで良さそうな街ですね」

ユミちゃんの話だと、この街は彼女の旅の出発点であり、ゴール地点でもあるらしい。

中央通り? らしき所は、道の両側に露店らしきテントが並んでいる。人もそれなりにいてにぎやかだ。


ふと、鷹野さんが広場の方をぼんやりと眺めていた。

「あれ? 鷹野さんどうしたの?」

「こっちの世界のも似てますね」

そこには池に囲まれた小さな教会が立っている。

「教会? ああ。そういえば、興味あるって言ってたね」

「ええ。私ドイツにいた時、教会でシスターの真似事をしていたことがあるんです」

「へぇ~、すごいじゃない!」

それは初耳。お嬢様ってやっぱり違う。

「といっても、尋ねて来る方達の悩みを聞いたりするような簡単な事だけですけどね」

「ほら何してるの二人とも! 置いてくわよ」

姉さんが遠くから呼ぶ。

「あ、ごめーん、すぐ行く! ほら、鷹野さん、早く」

あわてて後を追いかける。

「あ、ちょ、ちょっと、待ってください」


「いらっしゃいませ」

宿のドアを開ける。気の良さそうなおじさんが出迎えてくれた。

と、ユミちゃんの顔を見た瞬間、びっくりした表情になる。

「おや、お前さんは……ああ、そうだ、思い出した!」

「へへ。久しぶり、おじさん」

「知り合い?」

「まあね。ちょっとした事件があってね」

「お前さんたちのおかげで盗賊団がこの村に現れなくなったよ」

と、盗賊団って……ユミちゃんって一体?!

「後ろにいるのは友達かい?」

「ええ」

「よし、あのときのお礼だ。今日は無料で泊めてあげよう」

「ホント? ありがとう!」

「ところで、宝石買い取ってくれる所捜してるんだけど、おじさん知らない?」

「ああ、それだったら、この先の道を西にいったところにあるぞ」

「じゃあ、荷物置いたら行こうか。いろいろ買出ししなくちゃいけないし」

「そうね。おじさん、本当にありがとうございます」

「なあに。それより、最近は魔獣が出るようになったから、気を付けるんだよ」

「最近は、てことは、前はそうでもなかったの?」

「ああ、ここ最近急に増えてきてね。あ、いらっしゃいませ」

どうやら次の客が来たようだった。私たちはその場を後にして部屋に向かう。

「街にも魔獣が出るなんて。やっぱり魔王の影響かなぁ」

「そのようですね。やはり一刻も早く帰る必要がありますね」

ルビスはかなりの危機感を感じているようだった。


私とユミちゃん、シイルは、おじさんに教わった宝石商がいるお店に向かっていた。

他の人は、宿でお留守番。まあ、私とシイルは荷物持ちみたいなものかな。

と、そのとき、前のほうから声がした。

「泥棒っ!! 誰かその人捕まえてぇっ!」

見ると、子太りの男がものすごい勢いで走ってくる。その後ろからは小柄な女性……女の子?

私は、足を出して引っ掛けてやる。

「おわぁぁぁっ!?」

男はあっさり宙に舞い、そのまま近くの市場の棚に派手に突っ込んだ。

そこにいた人たちはあわてて逃げる。


辺りに散らばっている宝石をかき集めて追い駆けて来た子に手渡す。

「はい。これで全部。今度は盗られないようにね」

「あ、ありがとうございます。助かりましたわ」

息を切らせながらも、笑顔を見せてくれた。

「こんなに宝石を持っているってことは、宝石商の人?」

「ええ。私はシェリー。この辺ではちょっとだけ有名なんですわよ」

見た感じ私と同じかちょっと下くらいなのに、商売しているのはすごい。

ユミちゃん曰く、この世界では、珍しいことではないのだそうだ。


「実は買い取ってもらいたい物があるんだけど」

ユミちゃんは早速交渉に入っている。この辺は慣れているから任せちゃったほうが無難かな。

「そうですわね、宜しいですわ。お礼もしたいですし。あ、来ましたわね」

この街の兵士だろうか。彼らが数人やってきて、犯人を連れて行く。

集まった野次馬も徐々に散り、周りがやっと落ち着いてきた。

兵士の1人が彼女に近付いていく。

「すまなかったな、シェリー。ちょっと見回りに出ていたんで遅くなった」

「あ、れ? もしかして?」

「ユミちゃん、知ってる人?」

兵士はユミちゃんの顔を見ると、一瞬驚いた表情を見せた。

「お、久しぶりな顔があるな」

「傭兵辞めたんだね、ブラッド」

「ああ、あれからこの街の護衛団の一員として働いてるよ。ところで、あいつはどうした?」

シイルがとっさに私の後ろに隠れた。

「後ろにいるわ。ほら、ちゃんと出てきて挨拶しなさい」

「ひ、久しぶり」

私の後ろからシイルが顔を出す。

「そんなにビビんなくても心配するな、もうあんな事はしねぇから」

「ホントに?」

「ああ、オリジン神に誓ってもいい」

[オリジン神]というのは、この世界を造ったとされる神様で、信仰が広く大衆に広まっているらしい。

広場にあった教会もそうらしい。鷹野さんがこの場にいたら興味を持ったかも。


この様子を見ていたシェリーさんが私たちに尋ねる。

「驚きましたわ。ブラッドとあなたたち知り合いでしたの?」

「色々あってね」

「だな。まあ、結構前のことだ」

「1年以上前じゃない?」

「もうそんなに経つのか」

そんなやり取りを見て、シェリーさんが当然のような質問を投げかける。

「二人って、付き合っていらしたの?」

同時にコケる。シイルも一緒に。

「何でそうなるっ?」

「あれ? 違いましたの?」

「当たり前でしょ」

「じゃあ、何があったんですの?」

「後で話すわ。それより、シェリーさん、店は何処?」

「あ、そうですわね、では、ご案内いたしますわ」


それから私達は、彼女の店に向かった。

その途中、兵士(ブラッドって言ったっけ)の詳しい話を聞くことができた。

以前、彼とユミちゃん、シイルは戦ったことがあるらしい。

そのとき彼はまだ傭兵をやっていて、盗賊団の手伝いをしていたらしい。

一度は負けちゃったけど、怒ったシイルが彼をぶちのめしたらしい。

シイルはあまり話したがらなかったけど、どうなったのかは大体想像付くよね。

「そんなことがあったなんて知りませんでしたわ」

なんてシェリーさんも驚いていた。

私も全然初耳だったなぁ……ユミちゃん、あまり昔のことは話してくれないからね。



シェリーさんのお店は、たくさんの宝石類、貴金属類でとてもきれいに飾られていた。

私達の世界の宝石店といい勝負かもしれない。泥棒が欲しくなるのもわかる気がする。

早速ルビスに貰った宝石を換金してもらうことに。

「へぇ……輝石きせきはなかなか出回ってないんですの」

シェリーさんの目は、商売人の目に変わっていた。

「それに、いくらかの魔力を秘めているようですわね……これは価値が上がりますわよ。ふふふ……」

ちょっと怖い。


「結構いい物ですわね。これでしたら金貨100枚はお出し出来ますわね」

「ホント? 助かるわ」

「後、端数が銀貨30枚と銅貨が53枚ですわね。助けていただいたので、おまけしておきましたわ」

どうやらこっちの通貨は金貨・銀貨・銅貨の3種類しかないようだった。

大きさは500円玉より少し小さいぐらい。両側に十字架のようなレリーフが施されていた

なんか、ゲーセンのメダルみたい。

「ふふふ。これ1枚で100万円ぐらいの価値はあるわよ」

ユミちゃんが金貨を持って、満足そうな笑みを浮かべる。

って事は、い、1億円っ?!

「うわぁ、一気に大金持ちだぁ」

「銀貨=10000円、銅貨=100円ってとこかしらね」

なるほど。100枚で1ランク上がるのね。覚えやすい。


「でも、買い物すると結構早く無くなるわよ。意外と出費が大きいのよね」

「ディスカウントとかこっちにはありませんからねぇ」

そんな私たちの会話を、シェリーさんが不思議そうに聞いていた。



「ホントに助かりました。ありがとうございます」

「それはこっちのセリフですわ。大事な商品を賊から守って下さったんですもの」

「また来るわね」

「ええ。ぜひまたいらして下さい。お待ちしてますわ」


それから私達は、必要なものを揃える為に、近くの市場に行った。

「ええと、薬草でしょ、それからロープでしょ、あ、あと野宿用のテントも要るかな」

ユミちゃんがてきぱきと必要なものを買い込んでいく。

「結構いっぱい買ったね」

「6人分だからね。結構かかっちゃうなぁ。ルビスさんに感謝しないとね」

「あと着替えもほしいな。さすがにこれ一着だけじゃ」

「そうだね。あとで皆でまた来ようか」

私達の買い物はそれから1時間近く続いた。


宿に着いたのは日が傾きかけてからだった。

「お待たせ。とりあえず必要なもの揃えて来たわ」

「うわぁお疲れ様。重かったでしょう」

「二人がいてくれたから大分楽だったよ。とりあえず6人分ね」

「非常食と服は明日出かける前にみんなで買いに行こうよ」

「そうね。今日はご苦労様。やっぱりユミコに頼んで正解でしたね」

「じゃあ、明日は早めに出るから、食べたら早く寝ましょ」

「そうですね。今日はお疲れ様」

異世界初めての夜は、疲れからかあっという間に寝付いてしまった。


続く

あとがき

「こんにちは、鷹野です。遂に私たちは異世界に到着しました。

 これから何が待ち受けているんでしょうか。私もとても楽しみです。

 今回はシイルさんも一緒にやって下さるそうです」

「――どうも」

「どうしたんですか?あまり元気がありませんけど?」

「マスターが居ないのに出なきゃならないなんて……帰っていいかしら」

「シイルさん、それじゃ、私じゃ駄目みたいじゃないですか」

「……」(横目でチラッと玲子を見るシイル。その後ため息混じりに頷く)

「あんまりわがまま言ってると、森野さんに言い付けちゃいますよ」

「(とたんに態度が変わって)よろしく。レーコ」※ニコっと笑う。額には冷や汗。

「(扱いやすいですねぇ)よろしくお願いします」


「という事で、今回はコルトの街の方々に来て頂きました」

「宝石商のシェリーですわ」

「街の護衛団に入隊中のブラッドだ」

「違うわ。‘元傭兵’のブラッドでしょ」

「シイルさん?」

「もう過去の俺は捨てた。思い出させないでくれ」

「自分の都合のいい事だけ忘れるつもり?」

「お前、相当恨んでたんだな、あれ」

「当たり前でしょ!どれだけ痛かったと思ってんのよ!」

「そう言えば、シイルさんは竜族ドラゴンでしたのね」

「ええ」

「どうして人の姿をしていらっしゃるの?」

「私たち竜族は、どちらの姿にもなれるのよ」

「でも私、シイルさんの竜形態はまだ見たことがないです」

「向こう側では魔力が足りなくて変身することが出来ないの」

「なるほど、人間態だったから、竜に変身できなかったんですか」

「そういう事。今なら成れるわよ。ただまあ、マスターが人間態でいてくれって言ってたのもあるけど」

「あの小娘が主人ってタマか?」

「ちょっと、マスターのことを悪く言わないでっ」

「俺は見ただけの感想を言ったまでだ。それまでの経緯など判らんからな」

「でも、竜を主人にするほどなんですから、相当な力の持ち主なんですわね?」

「もちろん。強くて優しくて、最高のマスターよ」

「という事は、負けたのか」

「まあね。アッサリ負けちゃった。私はマスターに負けたから契約したの」

「何だ、意外と弱いんだなお前」

「その私に負けたのは一体何処の誰かしら?」

「ぐっ」

「ふふ。ブラッド、シイルさんの勝ちですわね」

「く、くそ、絶対強くなってやる! 憶えてろ!」

「あ、行っちゃった」

「相変わらずハートが小さい男ですわね」

「話し変わるんだけど、シェリーって宝石商なんでしょ?」

「ええ(いきなり呼びすてにしないで頂きたいですわ)」※怖いので声に出せない。

「じゃあ、世界中旅した事はあるよね?」

「もちろんですわ」

「私、世界のことあまり詳しくないの」

「どうしてですの? あなたはドラゴンでしょう? 自由に飛べるのでしたら」

「私ね、マスターと出会うまでは自分の村の周辺しか出かけなかったから」

「そうだったんですの」(この子、人との接し方を知らないだけかもしれないですわね)

「ねえシェリー、色々話を聞かせてくれない?」

「ええ。構いませんわ」

「ホント?」

「もちろんですわ。でも私はまず、あなた達竜族の事をもっと詳しく知りたいですわ」

「私が知ってる範囲でよければ教えるよ」


「盛り上がってる所すみません、そろそろ時間みたいです」(ゲストが居ると楽ですね)

「え。もう?もっと話したいのに」

「そうですわよ」

「まあ、後でじっくり話せばいいじゃないですか。時間はまだありますし」

「そうね。レイコ。誘ってくれてありがとう。感謝するわ。楽しかったわよ」

「私も呼んでいただいて嬉しゅうございましたわ」

「そう言ってていただけると私も嬉しいですね。では、皆さんとはお別れです。

 お相手は鷹野玲子と」

「ミストドラゴンのシイルと」

「宝石商を営んでおりますシェリーがお送りいたしましたわ」

『(3人で)さようなら~』


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