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精霊の扉 第4話

陽子姉さんがやって来て一ヶ月が経ち、やっと魔法も安定して出せるようになってきた。

今日も放課後に練習のために神社に来ている。

「だいぶ安定してきたわね。飲み込み早いわ。いい感じよ」

「ほんと? やったぁ。初めて褒められたぁ」

誉められるって嬉しいなぁ。頑張ったかいがあったかも。

「じゃあ、そろそろそれを動かしてみよっか」

「ええ~っ。無理よっ」

まだ完全に制御できているわけでもなく、何とか必死で抑えてる状態。

はっきりいってかなり辛い。

「ま、とりあえずやってみて。手伝うわ」

「うん、お願い」

さらに意識を手に送る。

「指先に集中して。そう、ゆっくり」

すると、光の玉は、私の手の中からゆっくりと浮かび上がっていく。

「う、動いた!」

つい嬉しくて、意識を手放してしまう。と。

ぼふっ。

「きゃっ!!」

もう何回やっただろう。普通ならとっくに両腕がなくなっている筈だ。

「手が痛いよぅ。お姉ちゃん……」

「まったく、我慢しなさい! 後で治してあげるから」

あ~あ、もう最初みたいに優しくないし……まあ、これだけ失敗すれば当たり前か。

「っく、も……もう一回……ひぁうッ!?」

「だーかーらー、どうしてそこで爆発するのよ!」

姉さんは、ボロボロになった私の両手を、文句を言いながらも治してくれた。

進歩ないなぁ、私……トホホ。



しばらくして、急に風が出てきた。

境内の大木の枝が、左右に揺れている。

「ッ!?」

「どうしたのお姉ちゃん?」

姉さんの表情が変わった。

「来るわ!」

来るって、一体何が?

「いい? 絶対離れないでね。判った?」

「う、うん」

突然、何かのうめき声が聞こえる。それも直ぐ後ろから!

「何、何?!」

「オォォォォォォ!」

3mはあるだろうか。巨大な化け物が立ち塞がっていた。

なんでこんな大きなモノがここに?

いや、冷静に見とれてる場合じゃなくて!

「魔獣よ! こいつの爪にやられたらただじゃ済まないわよ!」

鋭い視線が、私の眼と合う。

それはまるで、餌を見つけた肉食獣のようで……

「……ぇ」

突然、私の方向に向かって腕を伸ばしてきた。

「嫌ぁッ!」

「直美?!」

とっさに左に避けた。爪が地面に突き刺さり大穴を空ける!

「直美、下がって! フレアー!!」

姉さんの大きな炎が、化け物の体を包み込む!

断末魔の叫びを上げながら、化け物の体が崩れ落ちる。

「す、凄い……」

「ふうっ、なんとかなったわね」

と、次の瞬間、姉さんの後ろに、新たな化け物が!

「お、お姉ちゃん後ろっ!!」

「嘘っ! そんなっ!!」

ドッ

「がッ!」

爪が姉さんの身体を貫通した!

「きゃぁぁっ!! お姉ちゃん!!」

さらに強靭な腕に弾き飛ばされ、そのまま宙を舞って鳥居に叩き付けられた。

「ぐっ……」

崩れ落ちる姉さん。

とてつもない量の血が石畳を流れ、真っ赤に染まっていく。

私は即座に駆け寄っていた。

「お姉ちゃん! しっかりしてっ!」

「直美……ごめんね……守って……あげられな……く……て」

姉さんの体から、ふっ……と力が抜ける。

「お姉ちゃん! 死んじゃ嫌ぁっ! いやだよぉ!」

怪物が呻きながらこっちに向かってくる。

爪からは今付いたばかりの鮮血が滴っている。

私は恐怖で動けなくなっていた。


バシッ

「きゃぁっ!?」

弾き飛ばされて、地面に叩き付けられた。

そのまま数回バウンドして本堂の壁に背中からぶつかった。

全身を強く打ったせいで呼吸が出来ない。

「ゲホッ……」

身体を動かそうと思っても動けなかった。もしかしたら、骨を折ったかもしれない。

そんなことを考えていたら、もう目の前に爪が迫っていた。


殺されちゃう……私達、もう終わりなの?


その瞬間。

「グギェェェェ!」

化け物は突然、悲鳴を上げながら四散した。

「き、消えた……どうして……?」


「やれやれ……間一髪だったな……」

聞き覚えのある声に思わず顔を上げる。

「よ」

涙が溢れる。

「和也ぁっ!」

「全く、知らない振りするの大変だったぞ」

「なんとなく、判ってたけど……ぁ、痛ッ」

「怪我は大したこと……あるようだな……ちょっと待ってろ」

和也がなにやら呪文のようなものを唱え始めた。

すると、私の体の痛みがだんだんと消えていくのが判った。

「凄い……和也も回復魔法使えるんだ……」

「あくまで応急処置だ。もう立てるか?」

肩を貸してくれる。

何か、普段と態度が違う和也にちょっと戸惑った。

「うん、大丈夫みたい。ありがとう……」

安心して、ふと思い出した。

「そうだっ、お姉ちゃんがっ」

「そうだな。早くしたほうがいい」

私たちはあわてて鳥居のほうに向かった。

気を失ったときの体制のまま、動いた形跡がなかった。

姉さんの体からはいまだに血が流れ出ているようだった。

「お姉ちゃん、しっかりしてっ」

声をかけても、揺さぶっても、返事がない。


「出血がひどいな……俺には手に負えない」

「助からないのっ? そんなの嫌よっ! せっかく遭えたのにっ!」

和也は少し考えた後。

「助からないこともない」

「本当ッ?」

「お前の魔力を借りる。そうすればなんとかなるかもしれない」

「そうすれば、お姉ちゃんを助けられるのね?」

「ああ。だが、お前の体が持たないかもしれない。どうする?」

「……やるわ」

後悔だけはしたくなかった。

「分かった」

「どうすればいいの?」

「俺の手を握ってくれ。2人で力を込める」

「やってみる!」




「……ん……」

「お姉ちゃんっ」

良かった……目が覚めたぁ!

「あれ……直美……ここは……それに、貴方は……」

「家よ。和也が助けてくれたの」

「そう。ありがとうございます。乃沢さん」

姉さんのお礼に照れる和也。

「いえそんな。俺はなにもしてませんよ。直美が頑張ったおかげです」

全く何よ、そのデレデレの顔は!

「本当にありがとう、直美」

「ううん。でも、よかった……お姉……ちゃんが、助かっ……て……」

薄れていく意識の中で、二人の会話が聞こえた。

「直美! 大丈夫?!」

「力を使いすぎたな。こいつ、部屋に連れて行きますね。樋口さんは休んでて下さい」

「すみません。お願いします。それから、私のことは名前で呼んで構いませんよ」

「あっ、分かりました。陽子さん」

ああもう、何で二人共、そんな良い雰囲気なのよぉ!!


続く


あとがきという名の雑談

『こんにちは。ルビスです。ナオミは魔法の覚えが早いですね。

 かなり努力をしたんだと思います。見習いたいですね。

 そして謎の人物、カズヤ。彼がいなかったら、二人は今ごろ……アーメン』

「ちょっとルビス。勝手に殺さないでよっ!」

『あら、いたんですか、ヨーコ』

「もう許さないわ。絶対に泣かしてやるんだから!」

『返り討ちにしてあげます☆』

「あ~あ。また始まっちゃった……」


「結局後始末は私がやるのね……

 これを読んでくださっている皆様、毎回騒がしくて申し訳ありません。

 できれば、次回からも読んで下さると幸いです。

 それではまた。水口直美でした」(ぺこり)


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