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ドラゴンマスター 第1話

前回の予告通り、今回から新シリーズとなります。

私は森野由美子。

12の時、突然現れた魔物に両親を殺され、私は孤児院に預けられることになった。

あの日たまたま来た人に引き取られなければ、今どうなっていたか分からない。

私はその人と一緒に過ごす中で、体術や魔術といったことを一通り教わった後、旅に出た。

まだ召喚士サモナーとしても魔術士ソーサラーとしても、半人前。

でも、あの人に認めてもらえるくらいには成長できたのだろうか。


その人がいつも話していた伝説の竜……『白竜ホワイトドラゴン』――

その真っ白な体の周りに氷の霧をまとい、全てのものを一瞬にして凍りつかせるブレスを吐くという。

そんな伝説の竜を従えることができるくらい力を付ければ、仇を取れるかもしれない。

そう思った私は、これまで、色々な所を旅して回った。


そしてついに、それらしい噂を聞きつけ、やっとのことで探し出した。

今、そいつが私の目の前にいる。

「あなたが、ホワイトドラゴンね。探したわ」

『何者だ……貴様は――』

「‘サモナー’由美子の名において命じます! 私に従いなさい!!」

『人間が私を、従える、だとぉっ?!』


ザワリと空気が動く。

竜との距離は、50m位はあるだろうか。

それでも、殺気は十二分に伝わってくる

『キサマのような小娘に従うものか! 帰れ!』

「ここまで来て、引き下がるわけにはいかないわ。私にもするべきことがあるの」

『どうしても従えという気か。ならば私に勝ってみることだ』

「勝ったら従ってくれるわね」

『……身の程知らずを思い知れ!』

ガァァァァァァァァッ

激しい咆哮と共に、霧状のブレスが吐き出される。

あれを喰らったらひとたまりもないっ!

「わっ!」

後ろへ飛ぶと同時に、地面が一瞬にして凍りついた。

うわっ、ちょっとこれ、シャレになんない! こっちも応戦しないとっ!


私はすぐさま、魔法の詠唱に入る。

「火の精よ、我に力を!」

素早く魔法陣を書き上げる。

「フレアー!!」

炎の魔法の基本魔法、フレアー。

魔法陣から火柱が上がり、竜の身体を包み込んでいた。

『ぐっ、キ、キサマッ!』

やっぱり炎の魔法は効果てきめんみたい。

「さあ、焼け死にたくなかったら、大人しく私に従いなさいっ」

『なるほど、少しはやるようだな。面白い』

氷の矢が次々に飛んでくる。

それを細かいステップで避けていきながら竜との距離を少しずつ詰めていく。

だけど。

「しまっ?!」

凍り付いた地面に反応が遅れて、足を滑らせてしまった。

次の瞬間、避け切れなかった1本が私の右足を切り裂いた!!

「あぐっ?!」

たまらずその場に倒れこむ。

追い討ちをかけられるように、数本の矢に、背中を貫かれた!

「うあぁぁぁぁっ」

血が流れる感触。背中が焼けるように痛い。そして、寒い。

体温が下がってきた。


『どうやらこれまでのようだな』

「ふふっ」

笑ってやる。

『何がおかしい! これでもまだ私に歯向かう気か?』

「そういうことは、自分の状況を把握してから言うことね」

『何? こ、これは、魔法陣だとっ?』

「ご名答」

『キ、キサマいつの間に?!』

「逃げ回っている振りをして、魔法陣書いたの。ごめんなさいね」

ま、こんな大怪我をするのは予定外だったけど。

『く、くそおっ』

竜は翼を広げて逃げようとした。

けどもう遅い。私は完成した魔法を解き放つ!

「燃え盛れ! 『フレアー!』」


竜が炎に包まれる!!

『ぐがぁぁぁぁぁぁっ!!』

「やった!!」


『くっ、こんな人間に負けるなんて』

「さあ、私と契約して」


『……約束だ、仕方がない』

私の血に染まった腕を差し出す。

契約自体は凄く簡単で、契約する側の血や体液をされる側に飲んでもらう。

その時、同時に契約の為の呪文を刻み込む。それだけでOKだ。

契約が終わると、私の腕に、竜の形をかたどった様な紋章が浮かび上がる。

これで、契約は完了。正式にこの竜の主人となったわけだ。


すると、突然竜の体が輝きだす。

見る見るうちに体が小さくなり、綺麗な女性の姿になった。

銀髪のサラサラショートヘアーに真っ赤な瞳。

スラリとしたその姿に、私は一瞬目を疑った。

「あ、あなた、女の人だったの?!」

「はい、マスター」

マスターだなんて……なんかくすぐったい。

でもゲンキンなものね。さっきまでキサマ呼ばわりされてたのに。

「さ、行きましょ。ついてきてくれるんでしょ」

「はい、でもその前に、仲間にこの事を言わなくてはいけません。私の村に来て頂けますか?」

「近いの?」

「すぐそこです」

「そういえばあなた名前は?」


「длЩЭ……」

「は?」

「すみません。シイルと呼んで下さい。マスター」

シイルと名乗った女性は、ふわりと微笑んだ。

「私は、由美子よ。憶えといて。これからよろしくね。シイル」

「はい、ユミコ様」

「じゃ、行きましょうか、あなたの村へ」

「承知しました。マスター」

歩き出す。

「あ、シイル。お願い聞いてもらっていいかな」

「なんでしょうか」

私は、足元を指差して、こう言った。

「とりあえず、氷、溶かしてもらえるかな?」

「ああっ、申し訳ありませんっ」


続く

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