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精霊の扉 第3話

「さて、折角だし少し練習してみましょうか」

「え、いきなり?!」

なんと私に魔法を教えてくれるらしい。

「大丈夫。ゆっくりやるから。まずは私の右手を握って」

さっき描かれた円の中に二人で入って手を握る。

「いい? 最初は戸惑うだろうけど、すぐに慣れてくるから。いくわよ」

握っている右手を通じて、私の体に何ともいえない感覚が押し寄せてきた。

「うわ……」

「大丈夫よ。そのまま左手の手のひらを上に向けて。そう」

言葉通りにすると、何やら手の上が輝いてきた。

やがて光は球体になって手の上に浮かび、輝きだす。

「綺麗……」

私がそれに見とれていると、突然、


パスン。


空気が抜けたような変な音が。たちまち光が消えてしまった。

「あ、あれ? 消えちゃった。失敗?」

「最初でそれだけできれば大したものよ。凄いじゃない」

驚いた表情の後、笑顔になる姉さん。

「今のは?」

「貴女の力よ。私はそれを使えるようにしただけ。素質はあると思うわ。さ、もう一度」

「う、うん」

もう一度手に力を込める。今度はすぐに光の玉が出現した。

「そう、その調子。イメージを膨らませて、段々大きくしていって」

最初は豆粒ほどのものが、ビー玉、ゴルフボールというように大きくなる。

それにつれて、次第に身体が重くなってくる。全身がだるい。

表情でそれを読み取ったのか、姉さんが声をかけてくる。

「疲れてきたと思うけど、意識を集中して」

テニスボールくらいのところで、それ以上は大きくならなくなった。

「ここまでみたいね。それじゃあ――」

姉さんが終了を告げる。

終わった、と思った瞬間、光が手の中で弾け飛んだ。

「きゃっ!!」

左手の指全体から血が溢れ出す。

「あぁぁぁ!!」

今まで経験したことのない痛みに、私は泣き叫んでいた。

「手が……手が痛いよう!!」

「ちょっと見せて」

姉さんは、冷静にそう言うと、何やら呪文らしきものを唱え始めた。

私の傷に光が集まっていく。凄くあったかい。

出血があっという間に治まっていく。

「もう大丈夫よ。少し痛みは残ると思うけど、一日位でそれも引くわ」

「凄い……ありがとう、お姉ちゃん」

涙が出てくる。私、初めてお姉ちゃんって呼んだかも。

「最後に気を抜いたでしょ。小さいとはいえ、魔法は魔法。気を付けなさい」


気が付いたら辺りは薄暗くなり始めていた。

「今日はもう終わりね。日が暮れてきたわ」

「ごめん、私……」

「謝ることじゃないわ。じっくりやろ。ね」

「うん」




神社に特訓に来るようになって一週間。ついにその日は来た。

「フレアー!」

掛け声と共に、炎が上がる。

私の両手の間には小さな火の玉が浮かんでいた。

「で、できた」

「よく頑張ったわね。ここまでが基本の流れ。よく覚えといて」

基本でだいぶ時間かかっちゃったなぁ。

「後は、これを自由に動かすことができれば晴れて免許皆伝ね」

「え?」

私は思わずきょとんとした。

「このままじゃ使えないのは判るでしょ。止まってるだけじゃ意味ないわ」

「でもっ……私にはっ……これが限界……っ」

そう、安定どころか、炎を出しているだけで目一杯。それどころの話じゃない。

「そんな小さな火の玉じゃ使わないほうがマシでしょ。とにかく、自由自在に動かすこと」

「えぇ~っ……そんなのムリ……あひゃぁっ?!」

爆発が私の両手を包み込んだ。

「ほらまた、気を抜くから」

またやっちゃった。痛い……

「何回やれば気が済むのよ、全く」

何度もやらかしている所為で、呆れられ始めている。

「今日中に基礎はしっかりしてもらわないと。しばらく出来なくなるでしょ」

「え、どうして?」

「明後日から試験始まるじゃない。さすがに勉強はしないといけないし」

「あ、すっかり忘れてた!」

そういえば、先生が言っていた気もする。

「どうしようぜんぜんやってないや」

「教えましょうか?」

「……お願いします」

なんか、惨めだなぁ、私。

「じゃ、そういうことでもう一回ね?」

「え~っ?!」



「そういえばお姉ちゃんって、勉強も出来るのよね。私なんか全然……」

その夜、ベッドの中で姉さんに話し掛けた。

「どうしたのいきなり?」

2段ベッドの上から声が聞こえる。

「双子なのにぜんぜん違うんだなぁって」

「環境にもよるわ。わたしは、お父さんに思いっきりしごかれたから」

そういえばお母さんは何にも言わなかったなぁ。

「でも意外だなぁ。お父さんがそんなに厳しいなんて。全然そんなこと無かったのに」

「年に数回しか会えないんじゃ、そうなるんじゃない?」

「一人のときはどこにいたの?」

「普通に家に一人で居たわ。それが当たり前だったしね」

そっか。姉さんも結構大変だったんだなぁ……

「もう遅いから寝ましょ」

「うん。おやすみ。お姉ちゃん」

「おやすみなさい」


続く


あとがき

『諸事情により休ませて頂きます ルビス』


「お姉ちゃん、大変! ルビスが逃げたぁ!」

「あらそう。たまには私たちでやりましょうか?」

「ほんと? やったあ! でもいいのかなぁ。勝手にやって」

「いいのよ、たまには。私だってあとがきやりた……ごふっ?!」<打撃音>


「あ、ルビス」

「ちょっと!! 何勝手に進めてるんですかっ!!」

「ルビスっ、いきなり何するのよ!」

「それはこっちのセリフです! 寝込みを襲われたら、いくら私だってっ!」

「なによ! いいじゃない、ルビスのけちんぼっ」

「なんですって?!」

「ふ、二人共やめて。みなさん見てるんだから……って、だめだこりゃ……

 仕方ない、私が締めちゃおう。それでは皆さん。次回もお楽しみに~。

 もうほら、お姉ちゃんもルビスもやめなさ~い!!」


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