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第2部第10話

>naomi

次の日の午後、知らない子が訪ねて来た。

黒髪の、ショートカットの女の子だった。年は私と同じくらいかな?

「はい、どなたですか」

「あ、ここにいらしたんですか。行きますよ。時間もないですから」

そう言うと、彼女は私の手をつかんで連れて行こうとする。

「え? ちょ、ちょっと待って」

そんな事言っても、私この子知らないし。

「あの、どちら様ですか?」

「え、あ、あの……樋口陽子さんでは……」

どうやら姉さんだと思っていたようだ。ま、しょうがないよね。

見ると、彼女の着ている制服は、姉さんの学校のものだ。

多分姉さんの友だちか何かだろう。

「お姉ちゃんなら、今留守ですよ」

「あ、ごめんなさい。あまりに似ていたものですから」

「気にしなくていいですよ。私は直美。双子の妹です」

「そうだったんですか。あ、私は鷹野玲子といいます」

そう名乗って、深々とお辞儀をする。礼儀正しい人だな……

「それで、何の用ですか?」

「はい、今日会う約束していたんですけど、寮に行ってもいなくて」

「え、いなかったの? 今日は休みのはずでしょ」

彼女はこくんと頷いて続ける。

「それで、クラス名簿の住所を頼りにここまで来たんです」

と、彼女の手に見覚えのある物が握られていた。

これは……何でこの子が宝珠を持ってるの?! まさか……

「それ、どこで?」

「鍵が開いてて……ベランダにこれが……いつも陽子さんが身に付けていた物ですし」

これって、ムチャクチャまずいんじゃ!

「聞いた、ルビスっ」

部屋の奥に居たルビスを呼ぶ。

「ええ、まさか……こんな事になるなんて」

魔族ノエルの予言が的中してしまった。最悪の形で。

「あ、あの…どうかなさったんですか」

慌てふためく私達の様子を見て、鷹野さんが不思議そうな顔をする。

「あ、ごめんなさい。こっちの話ですから」

何も知らない一般の人を巻き込むわけにはいかない。帰って貰わないと。

「あの、やっぱり魔族とか関係があるんでしょうか?」

え?!

「今……なんて?」

「あ……っ」

しまったという感じで口に手をあてた。

「あなた、一体……?!」

「あの、失礼ですけどもしかして、陽子さんと同じで、魔法使えるんですか?」

おそるおそる質問をしてくる。

「使えるけど……なんで知ってるの?」

「私、陽子さんに、魔族から助けて頂いたんです」

「えぇっ?!」

「昨日は夜遅くまで家にいらして……遅いからって夜の11時ごろ送ったんです」

みるみる彼女が涙ぐむ。

「こんな事になってしまって……これならうちに泊めてあげればよかった……」

とうとう泣き出してしまった。

「ご、めんなさい……私、あなたのお姉さんをっ」

「ああ、もう泣かないで。貴女のせいじゃないですから」

一生懸命慰めた。

「とにかく、早く助けに行かなくちゃ! でも何処だかわからないんだよね? 困ったな……」

「あては……あります。賭けてみるしかないですけど」

まさか、あの魔族の所じゃ……

すると、彼女の口から信じられない言葉が飛び出した。

「あの、私も連れて行っていただけますか」

「え?! 鷹野さん? そんな、危険ですよ!」

「大丈夫です。剣には自信がありますから」

そう言って木刀を取り出す。どこに隠し持ってたのよそんなもん!

「護身用です」

「護身用って……いつも持ち歩いてるの?」

「たまたまです」

そんなわけないでしょ……



ある家の一室。そこに陽子は手錠をされて監禁させられていた。

「ふふ。いい様だわ」

そう言ってセラは陽子を見下している。

「ちょっと、私に何かあったらルビスが黙ってないわよ」

「そうね。あなたがさらわれたと知れば、必ず彼女は現れるわよね」

「まさか、私をエサにする気?」

「そうよ。よく分かってるじゃない」

「そんな事、絶対に許さないわ!」

そう叫ぶ陽子を顔を近付けて嘲笑うセラ。

「フフ。その状態で何が出来るというの。いいかげんに諦めなさい!」

「えいっ!」

がすっ

「!!」

自由な足がセラを直撃する。

「油断大敵よ」

「く、やったわね。生意気な小娘ね!」

ドスッ

「うぐっ……」

お返しとばかりに、腹パンチをまともに貰って、気を失う陽子。

「ま、どうせあなたも後で殺すんだけどね。しばらくは生かしといてあげるわ」

そう言って含み笑いを浮かべるセラ。

「で、どうでもいいけど何で私の家なんですか……」

ノエルが迷惑そうに呟く。

「あのねぇノエル、折角手柄のチャンスをあげてるのよ。もっと感謝しなさい」

「どうせ、おいしい所は独り占めするんでしょ?」

「あなた、喋っちゃったくせによく言うわね」

「み、見てたんですか」

「まあね。なんかやるとは思ってたけど、そこまでするとはね」

「私、こういう卑怯な事は嫌いです。戦うんなら、正面から堂々と勝負したい」

「そんな甘ったれた事言ってるから、負けるのよ。判ってるの?」

「くっ」

ノエルには反論することが出来なかった。

「それから」

スッ、とノエルに顔を近づけて、ニヤリと笑う。

「ゼクス様のことは諦めなさい。もう噂はかなり広まってるわ。今回の件で、決定的だけど」

「ま、まさか、セラ、貴女が噂を?!」

「ふふ、さあてね。とにかく、ゼクス様を慕っているのは、貴女だけじゃないってことよ」

「っ! やり方が汚いですよ、セラっ!」


「ま、ここも時間の問題みたいだし。もうここには用はないわ。魔族を裏切ったんだからね」

そう言うと、セラは陽子を抱えて闇に消えた。

それから数分もしないうちに3人が到着した。

「ノエル、ヨーコがいるのは判っているのよ、出しなさい!」

ルビスは、鬼気迫る表情でノエルに詰め寄る。ノエルは俯き、首を振った。

「ルビス様……私にはどうすることも出来ませんでした……」

ノエルは、ルビスに陽子が魔域に連れて行かれたことを告げた。

「く、ここまで来て……」

と、後ろにいた玲子が、驚きの声を上げる。

「あ、貴女は!」

「鷹野さん、知り合い?!」

「はい、色々ありまして。でも、これでまた分からなくなりましたね……」

玲子が肩を落とす。

ノエルは、しばらく考え込んでいたが、やがて重い口を開いた。

「――行った場所は、見当がつきます」

「ノエル、本当ですか?!」

「おそらく……時空の狭間の入り口――この世界から魔域へと通ずる道に向かったのでしょう」

「――罠ね」

「ええ。私があなた方に行き先を告げることを予想している筈です」

「ありがとう、恩に着るわ」

「それでも行くんですね……」

「当たり前でしょ。人一人の命が掛かってるんですから」

「人一人の命、か」

私は何人の命を奪って来たんだろう? もう罪を償い切れない所まで来てしまった

ノエルはそう感じずにはいられなかった。

「これで、私はもう魔族の一員ではなくなってしまいましたね」

「ノエル……ありがとう。感謝します」

「ルビス、これからどうするの? まさか、一人で行くって言うんじゃないよね?」

「大丈夫ですよ。私は先に向かいます。後でユミコたちと合流して来て下さい」

「でもっ!」

「ルビス様、よかったら、私が案内します」

ノエルは自ら名乗り出ていた。ここまできたら、もう後には引けない。

「もう覚悟はできました。最初にあなたに会った時点で、半分決まっていたのかもしれませんね、ルビス様」

「信頼して……いいんですね、ノエル」

「ええ。では、急ぎましょう」

そう言うとノエルはルビスを連れて闇に消えた。


続く


あとがき

「さ、今回からこのコーナーは私、紅蓮のセラがお送りするわ」

「こらーっ、私のコーナー盗るなぁっ!」

△手と足に鎖をつながれて身動きできない陽子。

「うるさいわねぇ。あなたは人質なのよ。分かってるの?」

「何よ。あなたなんてルビスがいれば怖くないんだから」

「ふうん、そう」

「そうよ! あんた達みたいなヘボ魔族になんか負けないんだから!!」

ぶち。(何かが切れる音)

むにっ。

「そんなこと言うのはこの口かっ」

ビローン

「い、いひゃひゃひゃひゃぁ!!」

△陽子の口は左右に広げられた。

「な、何するのよぅ!! 痛いじゃないのっ」

「フン。当然でしょ」

「そんな卑怯な事ばっかりやってるから、魔族は根暗だとか性格悪いとか言われるのよっ」

「この口っ、この口なのねっ」

ぐりぐり。

「ふむぅぅぅぅぅぅっ!!」

△さらに広げて激しく上下に揺らす。

「どう? これに懲りたら少し大人しくすることね」

「ごめんなさひぃぃ…」(くそー今に見てなさいよっ)

「何? その目は?」

ギク。

「な、なんでもないわよーぅ」

「ま、いいわ。もうすぐ世界は私たちのものになるのよ。無駄な抵抗はやめなさい」

「ちょっと、勝手に決め付けないでよね」


「そうしたら、次に魔王の座に付くのはこの私よっ!」

「ほう。お前そんなことを考えていたのか」

ぎく。

「つ、ツヴァイじゃない。ビックリした……」

「今のをゼクス様が知ったら、首が飛ぶぞ、セラ」

「じょ、冗談に決まってるでしょっ」

「顔が引きつってるわよ」

「うるさい。部外者は黙ってて!!」

「以前、俺の知り合いでゼクス様の参謀をやってた奴がいてな」

「ふんふん」

「うっかりゼクス様の前で次は俺だ! とか抜かしたらしい」

「うわぁ~。それって」

「次の日、そいつは跡形も無く消されたよ。俺の目の前でな」

「やっぱり」

「ああ、今考えただけでも恐ろしい……」

「魔王ってとてつもなく強いんだ」

「逆らえる人はいないと思うわ。少なくとも私たちの間ではね」

「まあ、セラの場合は殺されるというより、一生ハーレム逝き……ぐは」

「ツヴァイ。それはセクハラだよ、って……もう聞こえてないか」

「全く……男はどうしてこうなのかしら」

「そうだね。分かるよその気持ち。魔族も人間も大して変わらないね」

はぁ~

「なんか、初めてあなたと分かり合えた気がするわね」

「そうだね。出会う場所が違えば、友達になれたかもね」

「でも、鎖は外さないわよ」

「ちぇ」


「それではそろそろお時間となりました」

「ちょっと、勝手に終えないでっ!! それでは皆さん、次回からはこの私……」

ごすっ。

「……」(沈黙)

「お相手は紅蓮のセラがお送りしました。それでは、さようなら~」


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