表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/157

第2部第7話

>naomi

「ナオ、ごめんね。長居しちゃって。もう帰んなくちゃ」

色々話してたら、結構時間が経ってしまった。

「いいよ。それより、早く帰ったほうがいいよ。おばさん心配してるんじゃない?」

「うん、お世話になりました。じゃ、またね!」

ユミちゃんは元気よく飛び出していった。なにはともあれ、良かったなぁ。

彼女を送り出して、ふと思い出した。

あ、そういえば、姉さんから買い物頼まれてたんだ。

ポケットに入れてあったメモを取り出す。

「ええと……牛乳、玉ねぎ、鶏肉、あとは――」


“お米10キロ”

「……」

行くのやめようかな……



「うぇー……重いなぁ。よいしょっ、と」

ちょっと一休み。私は交差点の角に腰を下ろした。

荷物が多いから歩きで来たけど、自転車に乗って来ればよかった。


「あなた、ちょっといいかしら?」

突然、後ろから知らない人に声を掛けられた。

銀髪の、スラリとした女の人だった。

「は、はい、何でしょう……?」

「その魔力――あなた、ただの人間じゃないわね? 魔族でしょう?」

魔族って……いきなりそうきたか。

と言うことは、この人も普通の人間ではないと言うこと。

「人違いですよ」

立ち上がり、いつでも逃げられる準備をしておく。

まともに相手しない方がいいのは明白だ。

「マスターは騙せても、私は騙されないわ」

「マスターって、誰?」

「とぼけるな! 今日こそ化けの皮はがしてやる!」

女性の体から激しいオーラが。同時に、あたりの気温が急激に下がりだす。

「ちょっと待って! 落ち着いて!」

「問答無用! 覚悟しろ!」

次の瞬間、次々と冷気の塊が飛んで来る。

「うわわっ?!」

逃げようとしたら、何かにぶつかった。

「結界を張ったわ。逃げられないわよ」

「じょ、冗談じゃ……くっ?!」

鋭い刃が私の服を切り裂く。買い物袋が破れて中身が散らばる。

どうしよう……逃げないとほんとに殺される!


「フレアー!」

次々飛んできた氷を炎で何とか払いのける。

でも、魔法使ったのは逆効果だったみたい。

「やはり魔族。本性を現したな」

「だから違うって言ってるのに!!」


また氷の刃。今度は四方から。

かわそうとしたけど、駄目! 逃げられない!

「きゃあ!!」

右足に一撃を受けて地面に転がった。

次々に飛んでくる塊をそこにあった道路標識の影で何とかやり過ごす。

「フレアー!」

今度はこっちが先に魔法を放つ。

「うああっ!」

炎に巻かれて女がひるんだ。今だ!

立ち上がる。が、足に力が入らず、その場に崩れた。


「く……よくもやったな!」

気が付くとすぐ後ろに彼女の姿が。

「魔族は滅びろ!」

そう言って手を振り上げた瞬間。


ごめっ。


彼女の脳天に標識が激突した。

倒れて動かなくなる女性。

「……いいのかな。こんな勝ち方で……」



気絶している女の様子を改めて見てみる。

まず一際目立つのが、銀髪。こんな綺麗な色の髪の毛は、世界中探しても居ないと思う。

染めたんでもなさそうだし。

耳は尖っていて、エルフの耳みたい。そして額に巻いた赤いバンダナ。

そこからチラリと見えているのは――

「角……だよね。鬼、なのかな……?」

そっとバンダナを外してみる。短いけど、確かに額から真っ白な角が生えていた。

作り物じゃない、本物。

「話からして魔族じゃないっぽいし……とにかく家に電話しなきゃ」



電話したけど誰も出なかった。大事な時に居ないんだから。

仕方ない。ユミちゃんに来てもらうか。こういうときの私の勘は大体当たる。


『あれ、どうしたのナオ。私、何か忘れたっけ』

繋がった。私は心底ほっとした。

「そういうわけじゃないの。ちょっと動けなくなっちゃって」

『動けないって、一体どうしたの?!』

「悪いんだけど迎えに来てくれない? 家に電話しても誰も居ないみたいなのよ」

『場所はどこ?』

「4丁目の角。すぐ分かると思うわ。訳は後で話すから」

『分かったすぐ行く!』


10分ほどでユミちゃんが来た。

「ナオ! なんてひどい傷!」

「だいじょぶ、痛っ?!」

起き上がろうとしたけど無理だった。

「骨も折れてるじゃない。一体何があったのよ?!」

「その、それが……」

私はおそるおそる指を指す。そこには標識の下敷きとなった哀れな女が。

「多分、というか、間違いなくユミちゃんの知り合いでしょ?」

「シイル?! 全く、そういう事だったのね。ほら、起きなさい!」

ユミちゃんは、倒れた女性に近付くと、そのままげしげしと蹴り始める。

そんな乱暴に起こさなくても……


「あ、あれ? マスター?」

目が覚めた女性に向かって、睨みつけるユミちゃん。

「シイル。私の友達にケガをさせたわね。謝りなさい!」

「え、え?」

怒られると思っていなかったのか、良く判っていないのか、テンパっているようだ。

「まだ判ってないみたいね?」

「も、もしかして……」

ユミちゃんがこくんと頷く。

「ああっ、申し訳ありませんっ」

「謝るんならナオに謝りなさい!」

「あ、ご……ごめんなさいっ」

女性は、私のほうに向き直って、深々と頭を下げた。

「私からも謝るわ。よく言って聞かせておくから」

「大丈夫よ。気にしないで。こんなのすぐ治るし」

もっと酷い怪我したことあるし、そっちの方は問題ない。

だけど、この人は一体何者なんだろう。

「はぁ……これは、後でお仕置きね。し・い・る」

「嫌ぁぁ?! それだけは勘弁して下さいっ!」


な、なんか、平和だなぁ。



「え?! ドラゴンなの?!」

「はい、白竜ホワイトドラゴンのシイルと言います」

ドラゴンなんか勝てるわけ無いし。よく生きてたな、私。

「えっと、私は直美。水口直美。よろしくね」

「よろしくお願いします。さっきはすみませんでした、私の勘違いで」

「ううん、もういいよ。仕方なかったでしょ。あの場合」

なんかさっきと随分態度が違うなぁ。控えめというか腰が低いというか。


「でもドラゴンだなんて、ユミちゃんすごいよ」

「あははは。もう半年経つかな。向こうの世界から一緒に連れてきたのよ。これが契約の証」

そう言うとユミちゃんは左の腕をまくって見せてくれた。

そこには竜の形のような絵が描かれていた。

「マスター、あの頃から強かったですよね」

そういえば、ユミちゃんをマスターって呼ぶみたいだけど。

「二人は、その……そういう関係なの?」

「私とマスターは正式な主従関係を結んでいるんです」

それってつまり、ご主人様ってことだよね? ちょっとイケナイ関係を想像してしまう。


「竜を下僕にしちゃうなんて、凄いなぁ」

「下僕って……」

「ちょっとナオ、駄目でしょそんな事言っちゃ!」

今度は私が怒られた。

「ますたー……」

「よしよし」

涙目になったシイルの頭をユミちゃんは優しく撫でる。

なんだかなぁ……


続く


あとがき

「こんにちは。樋口陽子です

今日は直美もルビスもいないので私一人でお送りします。

さて今回は、折角なので私の……きゃぁぁっ?!」

(マトモに風の魔法を受け、吹っ飛ぶ陽子。そのまま気を失う)


「うふふふ。これでこのコーナーは私のものね。

……さてと、あなた達。その子はどっかに閉じ込めといて」

『了解しました。ノエル様』

「それじゃ、始めましょうか。こんにちは。ノエルです。

今回から私があとがきを担当することになりました。

今日はもう一人来てもらってます。どうぞ」

「よお」

「よお、じゃ判りませんって」

「おす」

「おす、でも判んない」

「ツヴァイだ。まあ、よろしく頼むぞ」

「もう。やれば出来るじゃないですか」

「いや、こういうのはどうもやりにくくてな」

「あ、照れてる。かわい~」

「ち、違うっ! 断じてそんな事は!」

「ふふ。そういう事にしておきましょうか」

ドンドンドン(壁をたたく音)

「こら~、出しなさい~」

「あら……もう目が覚めてしまったのね。困ったわ」

「しかし、前触れも無しに急襲とは、顔に似合わずよくやるな、お前も」

「何がですか?」(とぼける)

「白々しいな、ま、お前も魔族だという事か」

「速攻・確実というのが私のモットーですから」

「それが疾風たる所以だな」

「ちょっと! いきなり襲うなんて卑怯よ! 聞いてんの?」

「どうしましょうか、あれ?」

「放って置け。気になるならもう一度黙らせてしまえば良い」

「その手がありましたね」

(陽子に歩み寄るノエル)

「ちょ。ちょっと、何す……ムググ」

(ガムテープを口に貼る。両手には手錠)

「この世界には便利なものがあるのねぇ」

「ムググーッ(使い方がちがーうっ)」


「あら、もう時間ですか。残念ねぇ」

「なあに、続きはあとでじっくりやればいい」

「そうですね。それではみなさん、また次回~」

「むぐ~っ(私はどうなる~っ)」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ