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精霊の扉 第2話

ウチに住むようになった陽子姉さん。次の日、早速私の学校に転校してきた。

「今日からこの学校に転校して来た樋口陽子です。よろしくお願いします」

簡単な挨拶を済ませて、姉さんが席に着く。

先生が気を回してくれたらしく、私の隣の席にしてもらったらしい。

「樋口は、水口の双子のお姉さんだ。両親の仕事の関係で、離れて暮らしていたそうだ」

そんな先生の説明を聞くこともなく、クラスのほぼ全員が姉さんに注目していた。

「来週、試験があるんだが、試験範囲は……水口。お前が教えておいてくれ」

「はい」

「後でノート見せてね」

姉さんの耳打ちに、私は軽く頷いた。

チャイムが鳴り、先生が教室から出て行く。すぐに姉さんの周りに人だかりが出来る。

「ねえ、前はどこに住んでたの?」

「ほんとにそっくりね。間違われない?」

私はあっという間に押し出されてしまった。

やってられない。私はとりあえず、教室の端にでも避難しておくことにした。

「よう、直美」

隣から声がかかる。

「なんだ、和也か……何か用?」

「どうしたんだ、お前。元気無いな」

「見れば判るでしょ。この状況」

「まあ、納得だな」

こいつは乃沢和也。私の近所に住んでる幼馴染だ。

何だかんだ言って私に突っかかってくる。まあ悪友みたいなモノかな。

「陽子さん、だっけ? 同じクラスで良かったじゃん」

「まぁね。どうせ手ぇ回してくれたんだろうけど」

この中途半端な時期に転校するのを配慮してのことだと思う。

一応家族……な訳だし。

「でも、何で名字が違うんだ? 双子なんだろ?」

これは絶対聞かれると思っていた。

実際、昨日までお互いの存在すら知らなかったんだから、違和感がある。

そのことを伝えても、しっくりいかないようだ。

「そんなもんか?」

「そうよ。まだなんか他人のような気がするの」

正直、まだ一緒に住んでいるという実感はない。

和也はまだクラスメートに取り囲まれている姉さんと私を見比べた後、

「何かお前が二人いるみたいだよな」

「一卵性だからね。しばらくは間違われそう」


放課後、陽子姉さんに声を掛けた。

「落ち着いた?」

「なんとかね……最後の方はめんどくさくて適当に答えちゃったかも」

そう言って苦笑いを浮かべた姉さんに、私は最初に会ったときの疑問をぶつけてみた。

「そういや、気になってたんだけど、運命ってどういう事?」

姉さんはちょっと黙っていた。そして少し間をおいて。

「ふふ」

笑うだけだった。なんかムカツク。

「何よ、どういうこと?」

「なんでも。心配しなくても、そのうち嫌でも知ることになるわよ」

そんな言われ方したら、すごく気になる。あんな出会い方したんだし。

「もったいぶらないで教えてよ。すごく気持ち悪い」

「判った。じゃあ――そうね、この街に魔力の高い場所はある?」

突然違う方向に話が振られた。

「へ? まりょく? 何それ?」

「あ、ごめんなさい。神秘的な場所って言ったほうが良かったかしら」

神秘的? 

「学校の近くに神社があるけど」

「放課後、案内してもらえる?」

「いいよ」

一体何をするのかな? お祈り?


学校の裏門の近くにある高台の頂上。ここに神社はある。

この街で神聖な場所って言ったら、ここ位だろう。

めったに人が来ない所為で、少し独特の雰囲気がある。

今はまだ良いけど、夜には絶対来たくない。

「へぇ、なかなかいい感じね。ここなら大丈夫そう」

こんな所まで来て、何をするんだろう。

「この辺りがいいかな?」

そう言うと姉さんは地面に何やら描き出した。

一メートル程の円中央に、もう一つ小さい円。その間に変な模様……

徐々に出来上がっていく図形。書いている姉さんはなんだか嬉しそうだ。

「ねえ、何? その変な図形」

「あなたにも見えるのね、これが」

え、それってどういう?

「魔法陣って、知ってる?」

「あのー、もしもし? 話が全然読めないんですけど」

「これはね、普通の人には見えないの。さすが私の妹だわ」

「何、言ってるの?」

すると突然姉さんは何かをぶつぶつ呟き始めた。

声が小さいせいか、よく聞き取れない。

すると突然、足元のさっき描いた図形が光を帯びて輝きだした。

「きゃ?!」

光と同時に、真っ赤な炎が立ち上った。

「ま、魔法使い?」

火はしばらく円の上に留まっていたけど、しばらくして四散し、消えた。

「何だったの、今の?」

「炎の魔法‘フレアー’よ」

私は、驚きのあまり、しばし言葉が出なかった。

「訓練すればあなたにも出来るわ。私と同じ血が流れているんでしょ」

「そんな事言われても、私にどうしろって……」

「言ったでしょ。その時に必ず必要になるの」

と、そこに、一人の人影が。和也だった。

「よう。2人して何やってんだ? こんなとこで」

「ッ?!」

突然後ろから声をかけられて、姉さんがびっくりした。

「いいじゃん、別に」

「なんだよ。教えてくれたっていいだろ?」

「こっちの話なんだから、関係ないでしょ」

「どうでもいいけど、落書き消しとけよ。後で怒られるぞ。じゃあな」

「い~っだ」

和也が帰った後、陽子姉さんが私に聞いてきた。どこか落ち着かない様子だ。

「彼は……何者なの?」

「家の近所に住んでる幼馴染よ。私アイツどうも苦手なのよね」

姉さんは、そうじゃないの、と言った後、こう続けた。

「私と貴女が初めて会った時、どうだった?」

「えっと……なんか変な感じだったよ。時間が止まったような」

「あれはね、魔力を高めることで生み出すことができるのよ」

「それって、さっきの魔法?」

「結界みたいな物かしら。これはね、魔力がない普通の人間には感じないものなのよ」

「あっ……てことは!」

「そう、彼にはこの魔法陣が見えているのよ。厄介なことになったわね」

そんなこと、ありえないし、信じられない。

「どうして? たまたま霊感が強かっただけかもしれないじゃない」

「そんな普通の霊感程度で見える代物じゃないのよ」

「それじゃ、やっぱりあいつも力を持ってるって言うの?」

「邪悪な波動は感じなかったけど……とにかく注意するに越した事は無いわね」

和也が普通の人間じゃない……?


続く


あとがき

「こんにちは、ルビスです。第2回、いかがでしたか?

 彼は一体何者なのか?、そしてヨーコは魔法をどうやって覚えたのか?

 気になりますねー。え?もう知っているような話し方ですって?

 ええ、実は私はヨーコの守……」

『ストーップ!!』

ドガッ!

ズガッ!

「ひはぁ?!」



「い、痛いですよっ、二人共!! 何するんですかっ?!」

「痛いですじゃな~い!!」

「もう、油断も隙もありゃしない。前回のあとがきを忘れたの?!」

「だからって、釘バットで殴らなくてもいいぢゃないですかぁ……シクシク」

「ルビスはほっといてと。次回は遂に私も」

「駄目よ直美。あとがきの時間は短いんだから」

「えー、もっと話したいのにぃ」

「それに、読者様の楽しみを盗らないの。読みたくなくなるでしょ」

「あ、そっか。それもそうだね」

「それでは皆さん。また次回お会いしましょう。お相手は樋口陽子と」

「水口直美でした~。それでは~」


『ちょっと、司会は私ですよ! 勝手に終わらないで~っ!』



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