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精霊の扉 第2部第1話

本編第2部です。

また、今回より、視点変化があります。

直美視点と、第3者視点の2通りで書いていきます。

変更部分には

>>

>naomi

このようなマークを入れます。

>>

決して日の光が届かない場所。そこに闇はあった。

その最下層に潜む者たちがいる。

彼らは、魔族と呼ばれている。

他民族にとっては、悪しく忌まわしい存在である。

『フィアの具合はどうだ、ツヴァイ』

深く黒い闇から声がする。そこには闇があるのみ。声の主は見えない。

ツヴァイは、何もない空間に答える。

「重傷を負っておりますが、命に別状はございません。間もなく目を覚ますと思われます」

『全く、お前が付いていながら……何の為に向こうに行っていると思っているのだ!!』

怒号と共に空気が震える。

「も、申し訳ございません……思ったより手強い相手でして……」

『ふん、まあいい。今回はフィアに免じて大目に見てやろう。だか、次は無いと思え』

ツヴァイは深々と頭を下げる。

「しょ、承知しております。次こそ必ず!」

『しかし判らんな。ただの人間がお前やフィアに傷を負わせる程のものとは思えん』

「はい、どうやら、奴らには精霊どもが味方をしているようなのです」

『精霊だと! 』

闇が声を荒げる。その迫力に男はますます恐縮する。

「は、はい、炎の国のルビス王女と、その守護を受けている人間どもでございます」

『何、それは本当か?』

「はい、間違いございません。あの強力な力は、間違いなく、本人のものだと」

『なるほど……』

それからしばらくの間、沈黙が続いた。

それに耐えられなくなったのか、ツヴァイが続ける。

「それと、もう一つお話がございます」

『何だ』

「扉が何者かによって閉ざされてしまいました」

『ほぅ……』

「おそらくは精霊どもの仕業だと思われますが……いかが致しますか」

『ずっと閉めておける訳があるまい。放っておけ。下級の物どもに任せておけばよい』

「は、承知致しました」

そう言うとツヴァイは闇に溶ける。

後にはただ深い闇だけが残された。

『‘蒼い彗星’め、まだ我々に楯突くというのか……面白い。クックックッ――』




>naomi

みんな、久しぶり。直美だよ。元気だった?

え? 私?

私は、あの後、姉さんも和也も違う高校に行ったからちょっと寂しかったんだけどね。

「おはよう、ナオっ」

学校に行く途中、後ろから元気な声がかかった。

「あ、おはよう、ユミちゃん」

「今日も暑いね」

「そうね。まだ5月なのに。夏になったらどうなるんだろ」

この人は森野由美子さん。ちょうど私の後ろの席で、高校で最初に出来た友達。

私は親しみを込めてユミちゃん、って呼んでる。

ユミちゃんも、私の事をナオって呼んでくれる。

1ヶ月も経たずに、すぐ友達ができたから、良かったかなって思う。

背丈は私よりちょっと小さいくらいかな? サラサラのセミロングの髪が綺麗。

左耳には大きな輪っかのイヤリングをしてる。

もちろん、学校の中では外してるみたいだけど。

どうやら大切なものらしい。どうしてかはいまだに教えてくれないけれど。



その日の学校の帰り道。

いつものように2人で下校中、見覚えるのある人物が正面から歩いてきた。

「お帰りなさい、ナオミ」

「あれ、ルビス。早かったね」

この人――ルビス=ティアナは炎を司る精霊さん。しかも精霊界の王女様なんだよね。

元々この世界に魔族が進入してきたのを知って、追いかけてきたらしいんだ。

前回の魔族との戦いで魔力をほとんど失って、精霊界むこうに帰れなくなっちゃったんだ。

だから、うちに泊めてあげているのよね。

その時、真っ赤だった髪の色が黒くなっちゃったんだけど、少しずつ回復してるみたい。

半年くらい経って、段々色が戻ってきてる。金髪……というよりかは茶髪に近いのかな?

本人の希望もあって、私のお母さんのお店でバイトをしてるのよね。

前は‘さん’付けで呼んでたけど、最近は慣れてきたせいか呼び捨てにしちゃってる。

王女様に対して失礼かと思うけど、本人がそれでいいって言ってるからいいのかな?


「仕事はもういいの?」

「ええ、今日は早番ですから。あら、お友達かしら? 名前は?」

一瞬ユミちゃんがビックリした表情を見せた。なんでだろ?

「こ、こんにちは。森野由美子です」

「そう、ユミコね。私はルビス。ルビス=ティアナ。よろしくね」

ユミちゃんはルビスをじっと見つめる。何か考えているようだった。

「ねえ、一緒に帰らない?」

「いえ、買い物を頼まれてますから」

「そっか。じゃ、また後でね」

ルビスが立ち去った後、ユミちゃんが私に聞いてきた。

「あの人、外国の人でしょ? 何でナオの事知ってるの?」

一瞬、ぎくりとした。

精霊なんて言っても、どうせ信じてもらえないしなぁ……。

「う、うん、まあ……うちにホームスティしてるの」

よし、そういうことにしておこう。

とっさに嘘をついたけど、いいよね?

「へぇ……そうなんだ」

ユミちゃんは何やらしばらく考えてたけど、すぐに向き直って。

「ねえ、明日からの連休、どっか行かない?」

世間はGW真っ盛り。本当は遊びに行きたいんだけど。

「ごめん。ちょっと家族と過ごす事になってるから」

「そっか。残念だな……家族かぁ……」

そういえばユミちゃんは両親とも居ないんだっけ。

何か悪い事言ったかな?

「ごめん私、ユミちゃんの気持ち考えないで……」

「判ってるって。楽しんできなよ」

「うん……」

何か気まずくなっちゃったなぁ……


「それじゃ、なんか甘いもの食べに行こ。もちろん、ナオのおごりで」

「えぇ~っ」



夕方、家に帰るとルビスが出迎えてくれた。

「あ、お帰りなさい。ナオミ。ヨーコが来てますよ」

「ほんとに?」

「あ、そうだ。ナオミ、ちょっといい?」

部屋に行こうとする私を彼女に呼び止められる。

「何?」

「昼間の子……貴女と同じ様な力を感じたんです。気のせいかもしれませんが」

ユミちゃんが? 嘘でしょ?!

「……でも、私は全然感じないんだけど」

「少しだけ感じたんです。すぐに判らなくなったんですが……」

ユミちゃんが普通の人間じゃない?!

「とにかく、気を付けて下さいね。何かあってからじゃ遅いですから」

「う、うん、判った。気を付ける」

ルビスが感じた力って、一体何だろう。

「まさか、ね」



「ただいま、直美」

「お帰り。なんか久しぶりだね」

私の双子の陽子姉さん。つい半年前まで、私に双子の姉がいるなんて知らなかった。

普通はありえないんだけど、両親の策略に、お互い見事にはまってしまった。

中学3年の秋という中途半端な時期に私の学校に転校してきた。

高校は、難関の女子高に入って、今は寮で一人暮らしをしている。


「2ヶ月ぶりかしらね。元気だった?」

「うん。おかえり」

唐突に姉さんが切り出した。

「ねえ、明日、久しぶりに神社に行かない?」

「ほんとに? 賛成。私、決めたの。もっと強くなるって」

「あら、二人ともどうしたの? やる気満々じゃない」

ルビスがくすくす笑う。

「だって、何とかしたいんだもん。このままじゃ、絶対勝てないよ」

「それに、いつまた扉が開くか分からないしね」

そう、私たちには力も時間もない。

奴らがいつ攻めてくるか分からない今、できることをやるしかない。

「そうですね。じゃあ、早速明日からはじめましょうか」

そう言って、ルビスは微笑んでくれた。

ふと見ると、彼女の髪がちょっとだけ赤味を増しているように感じた。


続く


あとがき

「みなさんお久しぶりです。樋口陽子です。今回からこのあとがきは私が担当します。

 さて、今回から第2部ということですね。

 前回のラストでルビスの力を引き継いだ私が、大活躍するという――」

「こらぁヨーコ! 勝手に話を変えちゃ駄目でしょ!!」

「そうよ姉さん。それに、本編のヒロインは私でしょ!」

「うるさいわねぇ。いいじゃないちょっとぐらい。ただでさえ出番が少ないんだから」

「だからって、ねえ」

「そうですよ。まだ力を継承するには早すぎますよ」

「まだっ……て、ルビス、お姉ちゃんに力をあげるの?」

「ええ、まあゆくゆくはそうしようと思ってますけど……」

「お姉ちゃん、いいなぁ……私も力欲しいなぁ……」

「まあ、一応ヨーコの守護精霊ですから。宝珠も渡してありますし」

「一応……って言うのが引っかかるけど……ま、そうなのよね」

「ふーん。私も精霊欲しいなぁ……」

「私達はモノじゃありませんっ!!」

「まあつまり、これがお姉ちゃんとルビスの契約の証なんだね」

「そういうことです。詳しくは、『精霊の宝珠』をご覧下さいね」

「でも確かに、この小説ってさ、細かい舞台設定とか全然無いよね」

「ただ単にめんどくさがりなだけじゃないですか?」

「ルビス、出番がなくなるよ」

「……」


「さて、そろそろ時間です。お相手は樋口陽子と」

「水口直美と」

「炎の大精霊、ルビス=ティアナがお送りしました~」

「こら、肩書き変えるな!」


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