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第5部第7話

>reiko

「私たちの世界?!」

「ええ、出身は……プロイセン、と言っていたけれど」

プロイセン――確か、ドイツの昔の呼び方だった気がする。

どうやら、扉と呼ばれる場所は、世界にいくつも存在するらしい。

「え、でも、プロイセンって、出来たのが400年前位じゃなかったっけ? 合わないよ」

「扉を介すると、時間軸が変化しますからね。歴史と合わないのはその所為でしょう」

「時間軸?」

「‘ガイア’と‘チキュウ’の流れる時間が違う可能性があるのです。仮説ですけど」

「え、そうなの?」

「ほんの数日単位では、あまり変化はないでしょうけれど、何度も移動していれば、変わってくるのでしょう」

ルビスさんによると、その勇者という人は、時空や空間を自由に行き来できる人だったらしい。

もしかすると、あの場所――占い師が居たあの場所にもあったのかも知れない。

「彼女も貴女達と同じように、特別な力を身に付けていたんです」

「特別な力?」

「ええ、彼女は、膨大な魔力を身体に宿していました。神に匹敵するほどの」

神様と同じくらいの力……全く想像つかない。

「本人が神だったんじゃないかって言う説もあった位なんです」

「その力の所為で、その人は長生きしたの?」

直美さんの質問に、ルビスさんは頷いた。

「でも、その力は“人間”という器にはかなりの負担がかかるんです」


私は、自分の剣を見つめた。

そんな凄い人が使っていた剣。自分が持っていてもいいのだろうか。

「大丈夫ですよ、ヨーコ」

私の不安な気持ちに、ルビスさんが気付いてくれた。

「貴女は十分強いですし、貴女は選ばれたんです。もっと自信を持って」

「ルビスさん……」




カルスは無言のまま廊下を歩く。

気まずい雰囲気を嫌ったのか、リュートが恐る恐る質問した。

「あの、どちらに?」

「第一騎士団の詰め所だ」

「騎士団の、詰め所、ですか?」

「本当は王宮内をくまなく案内をしてやりたい所だが、こちらにもやることがあってな」

長い廊下を歩き、突き当りの階段を上がると、目指す扉が現れた。

「余りいい思い出が無いな。着いたぞ、ここだ」

扉を開けると、丁度2人の兵士が机に向かって何やら話し込んでいる最中だった。

そのうちの1人は以前、カルスの上司であったあの副隊長だ。

「お、何だ、カルスじゃないか」

「ベルゼ隊長は……居ないようだな」

「ああ、あの女なら今席を外しているが。何故リヴァノールの生徒がここに居るんだ?」

「今日からこちらに配属になるリュート=ミシュラルです。よろしくお願い致します」

リュートは、訝しげに見る兵士に向かって深々と頭を下げた。

「そういう訳だ。後はよろしく頼む」

そう言ってカルスは戸口を出ようとする。

「おい、てめぇ、誰に向かって口を聞いているんだ?!」

「何か、不満か? 俺は、頼む、と言った筈だが?」

「ふざけるな! 先輩に向かってなんだ、その口の利き方は!」

カルスの胸倉を掴む兵士。対称的に、カルスは落ち着いていた。

「――先輩、か。確かに入隊した時は、あんたの方が上だったな」

「な、なに……?」

慌てて手を離す。さっきまで掴んでいたすぐ右側に、紋章が輝いていた。

「お前、まさか……」

「本当なら上告の義務がある所だが、昔の知り合いに免じて、不問にしておいてやる」

「貴様ァ!!」

突然剣を抜き、カルスに切りかかる。

ヒュンッ

「ちっ。堕ちる所まで堕ちたな、副隊長さんよっ!!」

ドンッ

「ぐは……」

勝負は一瞬で決まった。

「あ、あぁ……」

突然の出来事に、声を失うリュート。

「心配するな。急所は外した」

「お、王宮内で騒ぎを起こしたら追放――ひぃっ!」

喉元に槍を突きつける。

「俺が黙っていても、一部始終見ているのがここに居るが?」

「ぅ、クソッ!!」

倒れた副隊長を抱えて、兵士は部屋から飛び出して行った。

「どうするんですか、あの人たち?」

「放って置け。あいつらは、何も出来ねえ癖に、親のコネで入隊したやつらだ」

「……」

「エリート面して他人の出世を嫉んで、自分のことしか考えちゃいないろくでなしさ」

「私も……そうだったのかもしれません」

「いや、あんたは自分の意思で学園に入ったんだろ?」

「はい。ですけど……」

「だったら、もっと自分に誇りを持て。今の気持ちを忘れるなよ。じゃあな」

「あ、あのっ、ありがとうございました!」

リュートは背を向けたカルスに、深々と頭を下げた。




>Yohko

私は、空いている客間にアイリさんを連れて行った。

「ここがアイリさんの部屋よ。自由に使って良いから」

「わ~っ、ひろーい、それに、たかーい」

そう。ここは東塔の一番上。

眺めも最高だし、王宮でも、スイートルームに匹敵する豪華な部屋だ。

「こんな部屋、私には勿体無いですよぅ」

「いいのよ。それに、ずっと空室じゃ部屋が可哀想。やっぱり使ってあげないと」

「そ、そうですよね、でも、なんか嬉しいです。ありがとうございます」

何にせよ、喜んでもらって良かった。

「でも驚きましたぁ。ヨーコさんも人間だったんですね」

「あ、私そんな偉くないから、普通に話して良いって」

「でも、ルビス様と以前からお知り合いなんですよね」

やっぱりルビスは偉大な人物みたい。普段の彼女を知ったらどう思うのかな?

「確かに、ルビスとは親しいけど、そんな特別扱いなんてないし」

「でも……」

「普通の人間となんら変わりないわ。そんなに畏まらなくてもいいのよ」

そこまで話して、部屋が薄暗いのに気が付いた。

もうすぐ日の入りの時間。東の端にあるこの部屋には、西日が入る窓が無い。

「……ちょっと暗いわね。明かり点けないと」

そう言って、おもむろに電気のスイッチを入れる。

パッ、パパッ。

「わ。何っ?! まぶしっ!」

突然点いた蛍光灯に、目がくらんだらしい。

「大丈夫よ、すぐに慣れるわ。これから暗くなったら点けてね」

「び、びっくりした……それにしても、明るいですね……光の魔法ですか?」

「違うわ」

「そう、ですよね。光の魔法でも、こんな一瞬で明るくなるなんて物は見たこと無いですし」

「電気って言って、雷と同じ現象を人工的に作り出したのよ」

「へえぇ、雷の魔法ですかぁ」

「魔法じゃないわ。科学っていうものなの」

「どう違うんですか?」

教科書に載って……無いよなぁ。そんなの。

「一言で説明するのは、難しいわね……」

「えぇ~。教えて下さいよぅ」

科学の概念なんて説明できないし……参ったなぁ。




>Naomi

廃墟の村を後にした私たちは、兵士達が言っていた街に寄ってみることにした。

森を抜けると、すぐ大きな川が現れた。対岸がやっと見えるかどうか位の広さがある。

「あれが街みたいね」

先生が指を刺した。よく見ると対岸に家らしき建物がいくつも並んでいる。

「結構大きい街じゃない」

「どうするの? ルビス」

「まずはここの領主に会わないと。全てが短期間で変わってしまいましたから」

「今度は堂々と名乗れるわね」

「いえ、街の中に入るまでは……!?」

「どうやら検問所のようね」

対岸に続く橋の上で、この国の兵らしき人が待機していた。

「警戒してるのかな?」

その男は、私達の姿を見かけると、声をかけてきた。

「そこの女ども。通行証はあるのか」

「いえ、あいにく持ち合わせてはおりませんが」

「悪いが、通行証を持っていない輩は通す事は出来ん。お引取り願いたい」

「宿に泊まるだけでも駄目なの?」

「規則は規則だ。この先に小さい村がある。そこで宿を取ってくれ」

「ええ~」

「今から行けば、日没までには間に合うと思うが」

ルビスが一歩前へ出た。

「我々は、隣国コランダムより参りました」

「コランダムだと……?」

兵士の様子がおかしい。

「今日はこちらの領主様にルビス様の伝言をお預りしております」

「我々の再三の救援要請に耳を傾けなかったくせに、自分達だけ助けて欲しいってか?」

な……?!

「何が同盟だ。お前らなんか、帰れ。二度と来るな!」

うわ……いきなり何てことを?!

私はてっきりルビスが怒ると思ってた。でも。

「――仕方ありませんね……行きましょう」

「え、ちょっと、どこ行くの?」

「隣の村です。早くしないと日が暮れてしまいますよ」

「あ、ちょっと待ってよっ」

スタスタと歩いていくルビスを、私たちは慌てて追いかけた。


「ルビス! どうして? あそこまで言われて悔しくないの?!」

「でも、本当のことですから……」

ルビスは続けた。

「確かにお母様は優しい方でした。でも、それじゃ駄目なんです」

「どういう、こと?」

「政治のことは閣僚達に任せきりでした。それが今回の結果に繋がったのでしょう」

「そんなっ」

「ウインズが亡んでいたなんで……どうしてもっと早く気付かなかったの……」

私達は、彼女に掛ける言葉が見付からなかった。




「状況はどんな感じかしら」

「ん~っとね、こっちは大成功だったよ。もうちょっと攻めてもよかったけど」

「ご苦労様。十分よ。やっぱりフィアは強いわねぇ」

「でもさぁ、こんなまどろっこしいことしないで、さっさとご主人様復活させちゃおうよぉ」

「判ってないわね、フィアは」

頭ごなしにダメ出しされて、ムスッとするフィア。

「もっと魔力が必要なの。それにはもっと私達の支配区域を広げておかないと」

「それは、そうだけどぉ」

「それに、私一度でいいからこういうことやってみたかったのよね」

「……」

フィアは呆れた。

「またご主人様に怒られるんじゃないの?」

「そ、その時はその時よ」

途端に歯切れが悪くなるセラ。

「セラ……本当に大丈夫? 顔が引きつってるよ」

すぱーん!!

「うえぇ……セラがぶった~っ」

「で、ツヴァイの行方は?」

頭をさすりながら、フィアが答える。

「判らないよ、やっぱり。クオーツ辺りだと思ったんだけどなぁ」

「そうね。でも大丈夫。あっちの方はもう目星が付いてるから」

「ホントに? どこに居たの?」

「すぐ分かるわ。ふふ。久し振りにあいつのマヌケ面が拝めるわね」

「うう……なんか今日のセラ、怖いよぉ」

「見ていなさいよ、ノエル。世界を支配するのは私なんだから!!」


続く


あとがき

「こんにちは。鷹野玲子です」

「アイリです」

「さて、今回は久し振りにこの方々に登場していただきましょう」

「こんにちは。ヒロインなのに出番が少ない水口直美です」

「どうも、直美以上に出番が少ない樋口陽子です」

「うわ……」

「……いきなりの先制攻撃ありがとうございます」

「いえいえ」

「と、ところで……足元に転がっている『それ』は、何ですか?」

「こらぁ! お前ら、作者にこんなことしていいと思っているのくゎ!!」

「わ……mさんじゃないですか……いいんですか?」

「当然でしょ。最近更新ペースが遅いから、こうやって懲らしめてあげたのよ」

「仕方ないだろ」

「あら、動画を見る時間はあっても、話を考える時間は無いとでも言うつもり?」

「よ、陽子さん、眼が笑ってませんよ……」

「別に考えていないわけじゃないぞ。ただ書くのが煩わしいだけ……うおっ?!」

「で、次はいつ?」(釘バットを構えて)

「ち、近い内には……」

「ふうん、まあいいわ。期待しないで待ってるから」

「期待しないのなら聞くなよ……」

「アンタが早く書き上げれば文句はないの。判ってる?」

「へーへー」

「いい加減な返事ねぇ……」


「それにしても、久し振りにセラとフィア出てきたわね」

「一応、水面下での動きも見せておきたかったからさ」

「やっぱり企んでたのね、あいつら。ツヴァイも絡んでるみたいだし」

「まあ、彼らとしてもこのままノエルさんに任せるつもりはないでしょうしね」

「その通り。魔王だってまだ完全に滅んだ訳じゃない。復活の……ぶふぉ?!」(打撃音)

「あんたがそんなろくでもないこと考えてるから、私たちが苦労するんでしょうが!!」

「何か今日はよく殴られるなぁ……」

「くだらないこと言ってるからでしょ」

「否定はしないけどさぁ。少しは手加減しろっての」

「mさん、また世界を混沌の渦に巻き込むつもりですか?」

「そうならないように、前回玲子に聖剣を持たせたんじゃないか」

「なんか、鷹野さんばっかりずるいよ。魔法学校行ってるし、騎士団にも入ってるし」

「そう言う直美さんだってルビスさんの力、受け継いでいるじゃないですか」

「それは、そうなんだけど」

「……いいわよね、二人とも」(いじいじ)

「よ、陽子さん、私、そんなつもりじゃ」

「そ、そうだよ、姉さんだってルビスが守護精霊じゃない」

「で、でも……」

「がっかりすることなはいぞ。陽子だってそれなりの物を用意しているから」

「え、ホントに?!」

「ああ、今後そういった展開にする予定だ」

「へぇ~。じゃあ、期待してみようかな」

「いつになるか分かりませんけどね♪」

「玲子……何か言ったか?」

「(ぎく)い、いえ別に……」

「ほんっと鷹野さんって、キャラ変わったわよね」

「そ、そうですか?」

「私が見てもそう思う」

「そんな~。アイリさんまで~」

「まあ、あとがきはキャラを壊して楽しむって言う考えで書いてるから、って……」

『ほほ~う』

「いや、キミタチ、全員で指を鳴らすのは……ヤメテクレナイカナ」


「さて、作者を沈めた所でそろそろお時間です。お相手は鷹野玲子と」

「アイリ=クリスティア、そしてゲストの」

「樋口陽子と」

「水口直美でした」

「それでは、また次回お会いしましょう♪」


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