第5部第6話
>Naomi
「さて、と。話が途中になっていましたね」
落ち着いたところでルビスが話を続ける。
「実は、これから風の国ウインズに行こうと思っているんです」
「風の国?」
「ええ。そこに勇者が使った剣が祀られています」
勇者の剣かぁ……見てみたいなぁ。
「ただ、現在そこは、残念ながら魔獣達の支配下にあります」
「えぇ?! じゃあ、そこに居た精霊は?!」
ルビスは俯き、首を横に振った。
「少し前まではそこを守護していた者たちが居たのですが……今は瘴気に覆われてしまっています」
「そうなんだ……」
「おそらく、セラあたりが放ったのでしょう。元々は美しい森でしたから」
セラの名前が出た途端、先生が反応した。
「相変わらず、派手ですねぇ……セラ様は」
先生……まだ様付けだし。
「ユキ、魔族を抜けたんじゃなかったの?」
ルビスの言葉にギクリとする先生。
「それじゃ、その剣がなくなっている可能性があるんじゃないの?」
姉さんの言葉に、ルビスは首を横に振りながら続けた。
「いえ、その心配はありません。彼女でも抜くことは出来なかったようですから」
「え、どうして?」
「周囲に結界を張り巡らせてあるの。鍵がないと絶対に抜けないようになっているのよ」
なるほど、それなら安心かな。
「ナオミ、その鍵こそ貴女が持っている宝珠なのですよ」
「こ、これが?」
この石にそんな役割があったなんて驚いたなぁ。証だけじゃなかったんだ。
「だから今回、その結界を解いて、この国に持ち帰ろうと思っているの」
「お供いたします、ルビス様」
スピカさんが名乗り出る。近衛として当然の行為だろう。
「いえ、スピカは残って下さい。王宮の警備を手薄にしたくはありませんからね」
「そうですか……承知しました」
ちょっとスピカさんは残念そうだった。
「あまり目立ちたくないから――」
そう言って私たちの事を一通り見回す。
「そうね、ナオミと……ユキ、レーコ、この3人にしましょうか」
へ? 私?
「じゃ、スピカとカルスは留守の間、お願いね」
「はっ。お任せ下さい」
二人揃って敬礼をする。
何かカルスも段々兵士って感じになってきたなぁ。出会った頃はヘボかったのに。
「ヨーコは、二人の事お願いね」
二人というのは、アイリさんとリュートさんのことだ
「いいけど……私二人も面倒見れないよ」
「確かにそうね……」
ルビスは、少し考えて。
「じゃ、カルス、リュートのことをお願いするわ」
「は、畏まりました。では行くぞ」
「え、あ、あの……ちょっと……」
有無を言わさず、カルスは彼女を連れて部屋を出て行った。
「リュートさん、大丈夫でしょうか」
「平気だよ、あのリュートのことだもん。すぐ慣れるって」
「そうそ。だって相手はあのカルスだもん」
「クス。それはそうですね」
「それじゃ、アイリさん、行こうか」
「はい、ヨーコさん。じゃ、レーコ、また後でね」
こっちは前者とは違って、仲睦まじく部屋を出て行く。
皆が部屋を出て行くと、残ったスピカさんに声をかけるルビス。
「じゃ、後はよろしくね、スピカ」
「お任せください」
「3日後には帰れると思うから。何かあったら連絡するわ」
「お気をつけて、いってらっしゃいませ」
こうして私は、風の国に行くことになったんだ。
街道を歩いている途中、私は彼女に声をかけた。
「ねえ、ルビス」
「判っているわ。どうしてこの人選にしたか、でしょう?」
私は頷いた。
「ほら、後ろを見て」
言われて振り向くと、二人並んでなにやら楽しそうだった。
「え、それじゃぁ、森野さんと同じ孤児院に?」
「そう、思えばそこが彼女と私の運命の分かれ道だったのかも」
「……」
「でも、そのお陰でこうしてあなたと逢うことが出来たのだから感謝しないとね。皆に」
「ふふ、そうですね」
そこには、姉妹仲良く話す二人の姿があった。
「本来なら、落ち着いたところで話をさせたかったんですけどね」
確かに、鷹野さんはいつもあの二人と一緒にいる。
先生がその中に入るのは難しいと考えたのだろう。
あれだけの人数の中だと、積もる話もなかなか出来にくいもんね
「それに、これなら飽きるまで二人で話が出来ますから」
やっぱり優しいなぁ、ルビスは。
「それに、見かけ以上にあの二人は強いですから」
「うん、確かにそうだね」
「あ、そうそう。忘れていましたけど、これから暫く私の事はティアナと呼んで下さい」
ティアナというのは、彼女のミドルネームだ。お忍びの時は、この名前を使うらしい。
道を真っ直ぐ進むと、次第に大きな森が見えてきた。
「こんな森の中に村があるんだ……」
「気をつけて下さいね。もう彼らのテリトリーに入っていますから」
「え?! 何時、国境を越えたの?」
「ウインズとは、同盟を組んでいますから、国境は必要ないんです」
少し入ったところで、急に視界が開けた。
「ほら、見えてきましたよ」
「何これ……酷い……」
そこは、廃墟と化した村の跡地だった。建物の残骸が無造作に転がっている。
「私も事件後初めて来たんですが、随分と変わり果ててしまいましたね」
「ルビス……じゃなかった。ティアナは前に来たことがあるの?」
「ええ。まだヨーコと会う前に、騎士団の一員としてですけど」
懐かしそうに周囲を見渡す。その姿がちょっと寂しげに映った。
「その時はまだ、人が居て賑やかな村でしたよ」
「で、その剣はどこにあるの?」
「この近くに祠があったはずだけど……あら?」
私達以外に何かの気配がする。まさか、魔獣?!
「何者だ、お前達は?!」
現れたのは武装した男女二人組の精霊だった。この国の人かな?
「突然の訪問をお許し下さい。私たちは、隣国のコランダムの者です」
ルビスの言葉に、しばし考え込む男性兵士。
「……詳しく話を聞こう」
「私は、コランダム城でルビス様にお仕えしているティアナと申します」
よくそうやって自分のことなのに話が出来るなぁ。
「我らはウインズ皇国の森林警備隊だ。このあたりの森の監視をしている」
「……とは言っても、国自体はとっくに崩壊しているけどね」
「そうなのですか?!」
女性の言葉に、ルビスがびっくりしたような声を上げる。ショックだったのだろう。
「ああ。もはや幾つかの都市国家を残すのみだ。この村の惨状が何よりの証拠だ」
「それでは……ソフィア様は……」
ソフィア様というのは風の国の王女様。
年が近いこともありルビスとはかなり親しい関係にあったらしい。
以前、コランダムの会議に出席していた時に見かけたような気がする。
「あの方は政権争いに敗れ、王宮から追放されたよ。今は何処にいらっしゃるのか」
「残念よね。私、あの人結構好きだったのに」
見る見るルビスの顔が曇る。
「私達の国だけでは、なかったのですね……」
「サファイア様……か」
「……ええ」
ルビスは返事をするだけで精一杯のようだ。想いが溢れてくるのを必死に堪えている。
彼女の事だ、何も知らなかった自分が悔しいのかもしれない。
「風の噂で聞いた。あの方は我々にも良くして頂いた。惜しい方を亡くしたよ」
ルビスがこれ以上話せなさそうだったので、私が彼女の代わりに目的を告げた。
「私達は、ルビス様の命を受け、この国に存在する聖剣を回収に参りました」
「そうか。あの剣は我々には扱えない。どうかコランダムの復興に役立てて欲しい」
「ありがとうございます――それで、その場所はどこにあるのですか?」
「この道の先にあるわ。でも、そこは魔獣達の巣窟になっているの。危険よ」
話では、魔の瘴気により、この辺りの獣たちの殆どが魔獣化しているらしい。
でも、危険なのはこっちも重々承知だ。
「大丈夫です。自分たちを守る術は、心得ていますから」
「判った。付いて来い」
「随分と奥まで行くんですね……」
「この先だ。ん?」
背後が突如暗くなった。まさか!
瞬間的に振り返る。奴がいた。
大きさはよくわからないけど、背丈は家の屋根くらいはあるのだろうか。
鋭い眼光が、私達を捉える。
「魔獣?! しかも……なんて大きさ!」
「来るぞ!!」
グアァァァァァッ!!
魔獣の咆哮。そのままこっちに向かってくる。
「フレアー!!」
ルビスの炎が炸裂した。
そこをすかさず鷹野さんが切りつける。獣の片腕が切り落された。
「退いて、鷹野さん!!」
私の声に、彼女が左に避ける。そのまま正面の巨大なモノに魔法を放った!
「フラッシュショットォ!!」
『ギャオォォォォォ!!』
ズズ、ン……
断末魔の悲鳴。物凄い地響きと共に仰向けに倒れこむ。
倒れたものから邪気が抜ける。残っていたのは、小さな一匹の野犬の死骸だった。
可哀想なことしたな……でも、しょうがないよね。
「なかなかやるな。正直驚いたぞ」
「ほんと、ビックリしたわ。あなたたち、強いのね」
「そんな事ないです」
「いや、大したものだ……おっと、まだ魔獣がいるかもしれない。急ごう」
しばらく進むと、目の前の岩肌にポッカリと黒い口が開いていた。
どうやらこれが例の祠らしい。
「ここが入り口だ。ここから先は我々は行くことが出来ない」
「ありがとうございます」
「お二人はこれからどうされるんですか?」
鷹野さんの質問に、男の方が答えた。
「しばらくこの辺りを散策して、街に戻る予定だ」
「近くに街があるんですか?」
「ああ。ここから西に行った所にある大河の畔だ。大きな街だからすぐ分かるだろう」
「有難う御座います」
「私達は普段、そこの守衛場にいるわ」
「では我々はこれで」
「あ、待って」
「何か?」
別れる間際に、大事なことを思い出した。
「まだ二人の名前、聞いてなかったよ」
「そうだったな、これは失礼した。我はバルカス」
「私はティセラよ。また会いましょ」
2人と別れ、祠を奥へと進む。中は、人が楽々通れるほどの広さがあった。
「それにしても凄い場所だなぁ……」
「そうですね。薄暗いのに何だか明るい」
日の光が届いていない筈なのに、何か不思議な感じがする。
「ここはもうすでに結界の中ですよ。この中なら絶対に魔族たちは入って来れません」
「……道理で。さっきから体の調子がおかしいと思っていたのよ……」
「ユキは半分魔族だから、ちょっと堪えるかも知れませんね」
少し行くと、視界が開けてきた。
「ほら、見えてきましたよ」
目に飛び込んで来たのは、とてつもない広い空間だった。
天井までの高さは十数メートル。その一番奥には、巨大な祭壇が待ち構えていた。
「ひぃぃッ?!」
先生が悲鳴を上げる。これだけ大きいと、そりゃ聖なる力もかなりあるんじゃないかな。
「先生、大丈夫?」
「ちょっと……これ程とは……」
「こんな大きな祭壇、初めて見ました。あの剣がそうですか?」
鷹野さんの質問にルビスが頷いた。
「あれを抜くことが出来るのは、オーブの守護を受けたものだけです」
「それじゃ、私と姉さんなら抜けるってことだね」
「そういうことです。さ、オーブを貸してください。結界を解きますよ」
私とルビスは祭壇に上がった。ルビスが呪文の詠唱に入る。
「何も、変化は無いようだけど?」
「結界は解けてるわ。直美、抜いてみて」
「んっ……」
力を入れて引っ張ってみる。でも、びくともしない。
「んんんーーっ! ……無理! 抜けないって!」
「魔力が足らないわ。まだナオミの力が剣に認められていないということね」
「むぅ~……」
そんな私を見かねて、先生が祭壇に上がってきた。
っていうか、平気なのこっち来て?!
「こんなの私の力にかかれば……」
バシィィィッ
「きゃぅっ?!」
剣に触れた瞬間、激しい火花が散り、先生を弾き飛ばした。
「止めなさい、ユキ!!」
ルビスの制止を振り切り、再び剣を掴む。
「くっ……こんなものッ……ぁぁああっ?!」
聖なる光が溢れる。体を焼かれ、先生はグッタリとその場に崩れ落ちた。
「お姉様っ!!」
鷹野さんが駆け寄って先生の体を抱える。
「先生! 大丈夫ですか?!」
「こんな力……もう必要ないのに……」
まさか、聖剣の力で魔力を中和するつもりだったんじゃ……
「全く無茶するんだから……魔族が触れたらどうなるか判りそうな物でしょ」
「……私、やってみます」
鷹野さん……何を言い出すかと思ったら、ンな無茶な。
「無理ですよ。レーコのような普通の人間に抜ける筈がないわ」
「何か、その剣に呼ばれているような気がするんです」
「あ、ちょっと、レーコ?!」
ルビスの言葉にも耳を貸さず、祭壇に上がる。
彼女の指が聖剣に触れる。途端に青白い光が剣と鷹野さんの身体を包み込んだ。
「鷹野さんっ!!」
「待って、ナオミ。落ち着いて」
駆け出そうとする私の腕をルビスが掴む。
青白い光が剣と鷹野さんの身体を包み込んだ。
「これは……剣が彼女を選ぶだなんて……レーコは、まさか、そんな筈が?!」
どうやらこの事にルビスも驚いているようだ。少し混乱しているらしい。
しばらく経つと、青白い光も消え、静寂が辺りを包み込んだ。
「……」
「鷹野さん、大丈夫?」
「あ、す、すみません。平気です」
まだボーッとしている鷹野さん。目の焦点が合っていない。
「その剣はあなたのものですよ、レーコ」
「私の、物、ですか……?」
「剣自身があなたを選んだの」
「教えて下さい、ルビスさん、この剣は一体?」
「この剣は、勇者が魔王ゼクスを封印した剣です。勇者の念も少なからず残っているはずですが……」
鷹野さんは、今抜いたばかりの剣を見つめる。
「私の頭の中に、声が聞こえました。私の意志を継いで下さいって」
「やはり、まだ、彼女の意識が残っていたのね」
「彼女……って、勇者って、女性だったの?」
「ええ。名前はリイネ=シュミット。900年前、一度魔王ゼクスを、闇の奥深くに封印した人物です」
へぇ……っていうことは、ノエルも会った事あるのか。
「小さい頃お会いしていますけど、すごく綺麗な方でしたよ」
ルビスによると、彼女は29歳と言う若さで病に倒れたらしい。
「もう500年程前のことです」
「そっか……会ってみたかったな……あれ?」
そこで、私は気が付いた。
「待って。何かおかしくない?」
勇者が人間なら、400年も生きていられるわけが無い。29歳というのも。
「実は彼女は、この世界の人間ではないのです」
「どういう、事?」
「彼女は元々、貴方達の世界の人間なのです」
続く
あとがき
「こんにちは、鷹野玲子です」
「アイリです。それにしても、レーコが伝説の剣をねぇ」
「私も何か信じられない気分です」
「見せて見せて、って重っ!!」
「あ、この剣は持ち主以外の人には持つ事が出来ないんです」
「そ、それを早く言ってよ……指挟んじゃったじゃない……」(しくしく)
「さて、今回のゲストは、リュート=ミシュラルさんです」
「わ~~」(ぱちぱち)
「6回目にして、やっと呼んでいただけましたわね。待ちくたびれましたわ」
「mさんが選んだんだから文句言わないの」
「解かっていますわよ。私だって、あの人の噂ぐらいは聞いていますわ」
「へぇ~、例えば?」
「……って、その手には乗りませんわよ、アイリ」
「ちぇ、折角どつかれるリュートが見たかったのに」
「貴女という人は! 今日という今日は堪忍袋の緒が切れましたわ!!」
「なによ、やるってーの?」
「や、やめて下さい2人とも! こんな所で暴れないで……きゃう?!」
バシュゥゥゥ
「避けましたわね! 次は当てますわ!」
「へへ~。リュートの魔法なんか当たらないよ」
「なんですってぇ!!」
(以下ドタバタ劇)
・
・
・
(数分後)
「どうして関係ない私まで……」
「ごめん、レーコ、わたしも司会忘れてた」
「そうですわ。元はといえば貴女が」
「なによう、リュートが魔法なんか放つからっ」
――ぶつんっ
「……奥義、『閃光斬』!!」
ズバァァァァァァ
『ひゃぁあああああっ?!』
・
・
・
「……さて、気を取り直していきましょうか」
「あ、アイリの所為ですわ」
「リュートでしょ」
……ちゃき。
「2人とも、どうかされました?」
「べ、別に……」
「もう……話がちっとも進まないじゃないですか! どうして2人ってそうなんですか!」
「どうしてって言うわけじゃないけど、何かムカつくんだよねぇ」
「あら、アイリ、私のどこが気に入りませんの?」
「何か、その自分は偉いんだみたいな態度」
「アイリ、貴女もそのお気楽な性格は一生直りませんわね」
「……なんか、どっちもどっちって言う気がしてきましたが……」
「それでは、この辺でリュートさんについて詳しく紹介したいのですが」
「あ、私それやる」
「そうですね、私はリュートさんについてあまり存じ上げないので」
「本当に大丈夫なんでしょうね、アイリ」
「任せてよ。だって、昔からずっと一緒にいるんだもん。学園では、一番親しいと思うよ」
「じゃ、お願いしますね」
「名前は、リュート=ミシュラル。水の精霊だよ。年は215、だっけ?」
「214ですわ。他人の年齢ぐらい覚えて下さいませ」
「悪い悪い。リュートって、元々は水の都市アクアリウム出身なんだよね」
「ええ、それはそれは美しい街並みですわよ」
「お父さんが、リヴァノールの学園長に任命されて、こっちに移ってきたんだよね」
「そうですわ。越したお隣が貴女の家でしたのよ、アイリ」
「そうだったね。ウチがお店やる関係で今の場所に越しちゃったけど」
「なるほど、幼馴染、ですか」
「そういや、リュート、まだ聞いてなかったけど、フレアの魔法、どこで覚えたの?」
「フレアって……ああ、そういう名前だったのですわね」
「……知らないで、使ってたの?!」
「小さい頃に、書物で読んだのを少し試してみただけですわ」
「本で読んだだけ?!」
「もっとも、水の私では、あの位しか出せませんわ」
「やっぱりリュートさんって、凄いんですね」
「でも、勉強嫌いのリュートが本を読むなんて……」
「余計なお世話ですわっ」
「普段は『天才は勉強などしないものですわよ』とか何とか行って授業サボってるのに」
「悪かったですわね」
「でも、リュートの家にフレアの書物なんて、無いじゃん。学校の図書館?」
「いえ、違いますわ」
「じゃあ、王立の図書館かな? その位しか思いつかないけど」
「もっと身近にありましたわ。自由に出入りできる、取って置きの図書館が」
「身近? 自由に……?」
「ま、まさか」
「どうやら、ご察しのようですわね?」
「う、ウチの書斎を勝手に覗くなあぁぁぁ!」
「でも不思議ですね。火と水って、お互いの相性があまり良くないと思っていました」
「ん~、別にそんなことは思わなかったけどなぁ」
「アイリがお気楽だからですわ。実際私の事を毛嫌いされる方もいらっしゃいましたし」
「ふーん、ま、リュートの良い所、私知ってるから」
「アイリ……」
「もちろん、悪い所は、もっと一杯知ってるけど」
「……」
「あれ? リュート?」
「……貴方と言う方はっ!! どうして、そう、一言、多いんですのっ?!」
ぎしぎしぎし。
「い、痛い痛い! リュート、腕、折れるって!!」
「さて、オチが付いた所で、そろそろお終いのお時間です」
「リュートさん、本日は有難うございました」
「(アイリの腕をキメながら)楽しかったですわ」
「れ、レーコ、助けて……」(がく)
「自業自得ですよ。それでは。また次回お会いしましょう」