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精霊の扉 第1話

学校の帰り道、突然背後に気配を感じて立ち止まった。

「何、今の……?」

振り返る。と、すぐ背後の信号機が目に入った。

一見何も変わって無い様に思える。

だけど、すぐにその違和感に気付いた。信号の黄色が点いたままになっている。

「何よこれ? 信号が……」

信号だけじゃなかった。

街の中にあるもの全てが凍り付いてしまったかのように止まったままだ。

ここだけ時間から取り残されてしまったかのよう。

「嫌だ、どうしちゃったんだろ私……」

ふと、後ろから突き刺さる視線に気付いた。

「こんにちは」

声を聞いて、女の子だと判った。顔は良く分からないけど。

「だ、誰?!」

「水口直美さん、あなたにはこれから、厳しい運命が待ち受けているわ」

運命? 何なのよ、一体!?

「あなたはこの運命から逃れられない。覚えておくことね」

「あ、あなた何者? それにどうして私の名前知ってるのよっ」

「すぐに解るわ。じゃあね」

そう言うと、その子は背を向けて歩き出す。

「え……ちょ、ちょっと待ってよ! 貴女一体誰なのよ!?」

角を曲がる。女の子の姿が消えていることに私は唖然とした。

あ、あれ? もういない……変なの……

と、周りが急にざわつき始める。気が付くと、街はいつも通り、普通に動き出していた。

疲れてたのかな? 幻なんか見るなんて。

ふと腕時計を見る。時計は午後の六時を回っていた。

「ああっ! もうこんな時間っ。急がなきゃ!」

そうだ、今日は父さんが帰ってくるんだ。


私が生まれる前に、両親は離婚していた。

別に喧嘩別れしたわけじゃないらしく、時々こうやって会いに来てくれる。

二人の様子を見てると、結構仲が良いみたい。

だから、実際夫婦といっても差し支えないかもしれない。


「おかえりなさ~い!」

戸が開いた瞬間に、私は父さんの体にダイブしていた。

「おおっ、ただいま直美。元気そうだね」

「うんっ」

久し振りに見る父さんは、以前より少し疲れているようだった。

仕事が忙しいらしくて、しょっちゅう転勤があるみたい。

そんな理由もあってか、私を母さんに預ける形にしたみたい。

「今日はお前に紹介したい人が居るんだ」

突然そんなことを言い出す父さん。紹介したい人? 誰だろう?

「陽子、入りなさい」

「はい」

そう言われて後ろから部屋に入ってきたのは、一人の女の子だった。

あれ、ちょっと待って。なんか見覚えがある……

「あ、貴女!! さっきの!」

「こんばんは。また会いましたね」

そう、目の前にいる女の子は、つい今しがた街中で出会ったあの子だった。

「おや、直美は会っていた様だね。じゃ、紹介する手間が省けたかな」

「ぜんぜん聞いていないわよっ。誰?」

女の子は、くすくす笑う。何かすごく馬鹿にされているような感じがする。

「樋口陽子です」

名前を聞いて驚いた。

“樋口”って、確かお父さんの名字じゃ……

「ま、まさか……お父さんの隠し子?」

「おや、陽子、話してなかったのか? しょうがないな」

お父さんは、やれやれと言った感じで腰に手を当てて溜め息をつく。

「紹介するよ、直美。お前の双子のお姉さんだよ」

「ふ、双子ぉ?!」

確かによく見ると、髪形は違うけど、顔や声は私とそっくりだった。

何か鏡を見ているみたい。

「明日からこっちの中学に通わせることにしたよ。だから、仲良くな」

私の姉さんだなんて驚いた……

「これからよろしくね」

にこやかに手を出される。握ろうとしてすれ違った。

「あ、そっか。こっちだったわね」

陽子さんは慌てて手を入れ替えた。

「左利き……なの?」

「双子なのに何か変よね。あなたは右利きでしょ?」


その夜、食卓で母さんに聞いた。

「ねえ、お母さん、何で私に話してくれなかったの?」

「この日がくるまで内緒にしておこうと思ってねぇ。ビックリしたでしょ?」

……この二人、楽しんでるな。

陽子さん(なんかいきなり姉さんって呼びずらい)も文句をいう。

「昨日までお父さんも、何も教えてくれなかったわ」

どうやら姉妹で騙されていたようだ。

「それでいきなりこっちに通えだなんて。急に妹が居るなんていわれても……ねぇ」

陽子姉さんが私の同意を求めた。

「私も驚いたよ。双子のお姉さんが居たなんて。十五年間騙されてきたのね、私達」

そんな私達の会話を嬉しそうに聞いていたお父さん。遂には笑い出す始末。

「まあ、良いじゃないか。はっはっはっ」

『よかないっ!!』

見事にハモった。

「お、息もぴったりじゃないか。うんうん」

『納得しないで!』


こうして、私は陽子姉さんと住むことになったの。

でも、まさかこれが私の人生の転機になろうとは。

このときはそんな事、思いもしなかったのよね。


続く


あとがき

「初めまして。あとがき担当のルビス=ティアナと申します。よろしくお願いします。

 え? お前は一体誰かですって? 秘密です☆

 あ、ちょっとそこの人、石を投げないで。近いうちに分かりますから。

 最初はこうやって出会ったんですね、あの子達。

 え? 姉妹を知っているような話し方、ですって?

 ええ、それはもちろん。私も後々出てきますしね。ウフフ」

「ちょっとルビス、私たちも紹介してよねっ」

「そうよ、ズルいんじゃない? 一人でやるなんて」

「いいじゃないですか。あとがきくらい。二人がこの話の主役な訳でしょう?」

「それはそうだけど……ルビスだって」

「そうよルビス、いくら私の……ムググ」

「そこから先は言っちゃ駄目!!」

「ムグ~ッ、うむーっ」

「こんな感じで二人は仲良しさんです☆ では、また次回お会いしましょう♪」


『こらぁ、そんなんでまとめるなぁ~っ!!』


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