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腰痛高校生が異世界を救う話  作者: 夢街 光
”腰痛高校生”
3/6

”腰痛高校生”〔Ⅲ〕

家に着くと、母さんが荷物を持ってくれて、家の中まで手を引いてくれた。

さすがにここまでしてもらうのは悪いな、という気持ちになりながらも、もう少しこの優しさに浸ることにした。

俺が椅子に座るのを見届けると、

「ゆっくりしててね」

と言って、母さんは薬局へ向かった。


――――――――――――


母さんが薬局に行ってからしばらくしても、俺は動くことが出来ず、座ったまま相変わらず痛みに顔をゆがめていた。

病院では安静にして様子を見るように言われたものの、これでは動きようがない。

そのまましばらく座ったままで母さんが帰ってくるのを待つ。

幸いスマホを持っていたので、退屈することはなかった。


それから一時間ほど経過して、母さんが帰って来た。

「ただいま」

「おかえり」

「あら、ずっと座ってたの?」

「うん」

「動けなかった?」

「うん」

「そんなに痛いのねぇ・・・代われるものなら代わってあげたいけど・・・」

母さんは昔から、俺が風邪を引いたり、怪我をしたりすると“代われるものなら代わってあげたい”と言う。


「薬もらって来たから、何か食べて飲む?」

「うん」

「わかった。何食べたい?」

「う~ん・・・うどんがいい」

「うどんでいいの」

「うん」

なんとなく、母さんが作るうどんが食べたかった。

「わかった。ちょっと待っててね」


しばらく待っていると、トイレに行きたくなってきた。

時間がかかるが、行かないわけにもいかないので、ゆっくりと立ち上がり、ゆっくり歩き、トイレに向かう。

キッチンを通りかかると、母さんが気づいて、来てくれた。

「どうしたの?」

「ちょっと、トイレに・・・」

「あら、そうなの・・・。一人で行ける?手伝おうか?」

高校生にもなってトイレを手伝ってもらうのはどうなんだろうか、と思いながらもひとまず、

「うん。手伝って・・・」

と答える。すると、

「わかった。じゃあ、つかまって。」

と言いながら手を伸ばしてくれたので、ありがたく、その手につかまる。


無事にトイレにたどり着き、用を足して外に出ると、母さんが待っていてくれた。

「終わった?じゃあ、戻ろうか。」

「うん」

帰りもまた、ゆっくりと歩き、何とか席に戻る。


「じゃあ、うどん作ってくるね。」

そう言って母さんはキッチンへ戻った。


うどんができるのを座って待っていると、スマホにメッセージが来た。

誰からだろう、そう思いながら見てみると、海飛からだった。

【腰、大丈夫か?】

短い文章だったが、心配していてくれたことをうれしく思う。

【心配してくれてありがとう。何とか大丈夫】

そう返信するとすぐに返事が来た。

【よかった。学校で何か、困ったことがあれば言って】

海飛からのメッセージが来るまで学校のことはすっかり忘れていたが、明日も普通に平日なので、当然学校がある。

さて、この状態で明日からの学校は大丈夫だろうか・・・。

そんな風に考えていると、うどんが出来上がったようだ。

「お待たせ」と言いながら母さんがうどんをどんぶりで持ってきてくれた。

「いただきます」

「はいどうぞ」


食べるのが早い方ではないが、お腹がすいていたこともあってあっという間に食べきってしまう。

「ごちそうさま」

「あら、もう食べ終わったの?もっとゆっくり食べてもいいのに」

「お腹すいてたから」

「そうなの」

そう言い終わると母さんはどんぶりをキッチンへ持っていき、洗い始めたようだ。


それから少しして、洗い終えた母さんが薬と水を持ってきてくれた。

「はい、薬と水」

「ありがとう」

子どもの頃、薬と言えば粉薬がほとんどで苦手だったが、いつからか錠剤になり、簡単に飲むことができるようになったこともあり、苦手ではなくなった・・・一応言っておくが、決して薬が好きなわけではない。


「いつの間にか、薬を飲むのが早くなったわね。司が小さい頃は、薬を飲ませるの、苦労したんだから」

母さんは、俺が薬を飲むたびにこの話をする。

実際、薬を飲むときに何度も抵抗したことを覚えている。

ある程度大きくなってからは、飲んだことにして捨てたり、トイレに粉だけ流したりしていた。



「薬って何日分出たの?」

「頓服で7回分出てるわね。なるべく食後に、6時間くらい空けて飲んでくださいって」

「え?それだけ?」

「えぇ・・・」

(あの医者め・・・!これじゃあ、すぐ病院に行くことになるじゃないか!)

今飲んだ分を除くと、あと6回分しかない。

夕飯の後にも飲むとしたら今日で残りは5回分になる。



夕方になり、父さんが帰ってきた。

「ただいま」

「おかえり」

「司、大丈夫か?」

「うん・・・いや、あんまり」

「そうか。腰が痛いのはキツイよな・・・。」

「うん。」

「父さんも痛いから、司の気持ちわかるぞ。」

父さんは、バスのドライバーをしていて、いつも“腰が痛い”と言っている。

「司も腰痛仲間か~」

そう言いながら笑うが、笑い事ではない。

「笑い事じゃないよ・・・」

「ごめんごめん」

そう言いながら苦笑いを浮かべる。

それから父さんは母さんの方を向き、今日の夕飯は何か聞いた。

父さんは不規則な勤務で、ご飯を一緒に食べることができないことも多い。

それもあってか、今日のように一緒に食事をすることが出来る日は、嬉しそうに帰ってきて、母さんに献立を聞くのが通例になっている。

「今夜はロールキャベツよ」

「お!美味しそうだな~!」

「あなた、ロールキャベツ本当に好きよね~」

「あぁ。母さんのロールキャベツは絶品だから。」

そう言いながらまた笑う。

「じゃあ、夕飯にしましょうか。」

「じゃあ、着替えてくるから、待ってて。」

「えぇ。」

 自分で言うのもなんだが、父さんと母さんはとても仲が良い。

 正直、息子としては気まずいと感じることもよくある。

 しかし仲が悪いよりは良いだろうと思い、それなりに幸せを感じている。



 それから父さんが着替えて戻ってくると夕食を食べ始める。

「「「いただきます」」」


「本当に母さんのご飯は美味しいなぁ・・・」

 夕飯を食べ始めて少し経った頃、父さんがしみじみとそう言った。

「何?急にしみじみしちゃって」

 母さんがそう返す。

「いや、いつも思ってることだけど、今日は一緒に食べれてるから余計にうれしくて」

「もうお父さんったら・・・!」

 相変わらず仲がよろしいことで・・・。


そんなこんなで食事を終えて、俺は自分の部屋に戻ってきていた。

 少しでも楽な体勢になろうと思い、色々な体勢を試してみるが、なかなか定まらない。

(腰が・・・痛い・・・。)

 夕飯の後にも痛み止めを飲んだものの効き目を実感するまでには時間がかかる。

 昼食後に飲んだ時には1時間くらい経ったころに楽になったと感じはじめた。

 早く薬が効いてくれるのを願って、楽な体勢探しを続ける。

今回も、ご覧いただき、ありがとうございました。

ここからもまだ続きますので、お楽しみに!


いかがでしたか?

少しでも面白かった、楽しかったと思っていただけたらうれしいです。

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