⭕ 初めての患者 5‐2
マオ
「 名倉谷さん、フルーツティーだよ 」
オレは非売品のキノコン印のテーブル,ソーサーとティーカップのセットを持って来て置く。
ティーカップの中にティーポットの中身を注ぐ。
名倉谷
「 有り難う 」
マオ
「 クッキーは包んでおくから受け付けで貰ってね 」
名倉谷
「 貰って良いんですか? 」
セロフィート
「 構いません。
良ければ自宅で食べてください 」
名倉谷
「 有り難う御座います!(////)
なんか──診察に来てるのか、お茶を御馳走に来てるのか分かりませんね?
はははは(////)」
セロフィート
「 ふふふ。
少しでもリラックスしていただけると幸いです 」
名倉谷
「 次は何を実践したら良いんですか? 」
セロフィート
「 今迄の処方箋を継続してください。
備長炭は切れてませんか? 」
名倉谷
「 はい、大丈夫です。
受け付けで診察代を支払う時に備長炭を頂けているので、切らした事はないです 」
セロフィート
「 心霊現象はどうですか?
起きなくする事は出来ませんが、見えない澱みを消臭している効果は出ていますか? 」
名倉谷
「 前の様な怖い現象は起きてないです。
唯……やっぱり何かに見られている様な気配は消えていません…… 」
セロフィート
「 被害は最小限に止められている様ですね。
名倉谷さんが暮らされているマンションの土地自体が澱みの集まり易い場所になっています。
霊障に悩まされている住人は他にも居る筈です 」
名倉谷
「 マンション自体が?
どういう事ですか? 」
セロフィート
「 マンションの建っている下には掘り返されていない骨が埋まっているからです。
土地を販売する前には、その土地の歴史を調査し、墓地であった場合には供養をしてから、地面を掘り起こし、地中に埋まっている骨を掘り出す必要が有ります。
掘り出した骨は綺麗にしてから、用意した骨壺へ入れ、近所の菩提寺に引き取ってもらい、供養をしてもらいます。
整地した土地は販売する前に供養をしてもらいます。
不動産屋が業者と協力して、しなければならない事ですが、何分費用が掛かり過ぎます。
簡単な調査で済ませ、骨は掘り起こさず、手軽な供養をしてから建設作業に入る業者が増えて来ているのが現状です。
住居者に出来る事は違和感を感じたら引っ越す事ぐらいでしょうか 」
名倉谷
「 あの…それじゃあ、あのマンションで暮らす以上、部屋の中で起こる心霊現象は無くせない──って事ですか? 」
セロフィート
「 そうです。
心霊現象を無くす為には──、マンションを取り壊し、更地にしてから地中に埋まっている骨を掘り返す必要が有ります 」
名倉谷
「 そんな……じゃあ、俺達は住居者達は “ 被害者 ” って事ですか? 」
セロフィート
「 そうなります。
今更マンションを取り壊す事は出来ませんから、土地の持ち主である不動産屋に頼んで、土地の一角に慰霊碑を建ててもらい、春季,夏季,秋季,冬季と年4回の供養を菩提寺に依頼してもらう必要が有ります 」
名倉谷
「 そんな大変な事をしないと心霊現象に悩まされ続けるんですか…… 」
セロフィート
「 供養は責任であり、義務です。
怠ると様々な被害が起こり続けます。
その後、悪夢や金縛りの頻度はどうですか?
体調に影響は出ていませんか? 」
名倉谷
「 はい……。
毎晩、タブレットを舐めて寝ているお蔭なのか、悪夢を見る回数は減りました。
金縛りになる頻度も減っています。
眠れる日が増えたので、体調も良くなって来ています 」
セロフィート
「 悪夢も金縛りも霊障と関係無い場合もありますから完全に無くす事は出来ません。
頭も身体もリラックスさせてから就寝すると良いでしょう。
様々なリラックス方法がありますし、自分に合った方法を探してください 」
名倉谷
「 あ……はい…。
検索して調べてみます… 」
セロフィート
「 心霊現象が比較的に起こり易いのは土地の所為ですが、心霊現象に悩まされない住人も居るのは事実です。
発生している心霊現象も “ 使われている ” に過ぎません。
” 心霊現象 “ という不可思議な現象を使い、名倉谷さん対して、“ 何か ” を “ 教えようとされている ” という事を忘れないでください。
悪戯に恐怖れる事はないです。
原因を解明し、改善,解決を目指して地道に取り組んで行きましょう 」
名倉谷
「 は、はい…… 」
セロフィート
「 少し考え方を変えてみましょうか?
不慮の事故に遭う事で教えられる “ 知らせ ” だったり,事件に巻き込まれる事で教えられる “ 知らせ ” だったり,難病になる事で教えられる “ 知らせ ” だったり,身体の自由を押さえられる事で教えられる “ 知らせ ” も有ります。
その様な “ 知らせ ” ではない事に感謝をして、日々を生きてみましょう。
心霊現象も大変な “ 知らせ ” では有りますが、未だ幾分かマシな状態の “ 知らせ ” です。
五体満足,健康的な身体で過ごせる事──。
事故にも遭わず、事件に遭遇したり巻き込まれたりもせず、病気に苦しむ事もなく日々を生きられる事──。
“ 有り難い ” の想いと謙虚な気持ちを忘れず、日々の生活を楽しんで生きてみましょう。
出来そうですか? 」
名倉谷
「 ……………………いまいち分からないんですけど……。
少しだけ……何と無く分かる様な気はします? 」
セロフィート
「 ふふふ…。
分からなくても構いません。
少しずつ知っていけば良いのです。
今回の処方箋は、感謝を忘れず謙虚な心で日々の生活を送る事です。
名倉谷さんが変わる事で、周囲の人も変わります。
身近な人に良い影響を与えていける人になれる様、精進と努力をしていきましょう。
現在の名倉谷が未来の名倉谷さんへ出来る最善の投資です 」
名倉谷
「 は、はぁ……。
自分への投資……ですか。
取り敢えず、やってみます…… 」
セロフィート
「 今回の診察は以上にしましょう。
1ヵ月後に御会いしましょう 」
名倉谷
「 次回も光を連れて来ても良いですか? 」
セロフィート
「 構いませんよ。
次回もフルーツティーとスイーツを用意して待っていますね 」
名倉谷
「 有り難う御座います! 」
椅子から腰を浮かせて立ち上がった名倉谷さんは、光君の手を握ると診察室から出て行った。
光君はフルーツティーとクッキーを気に入ってくれたみたいだ。
キノコンの手作りだからな、美味しいに決まってる♪♪♪