⭕ 呪われた家 5
患者
「 えと……先生……、此処に書かれている事をすれば良いんですか?? 」
セロフィート
「 そうですよ。
ワタシが患者さんに渡すのは処方箋です。
とは言え、処方箋の内容を実践するもしないも患者さん次第となります。
此方から強制する事は出来ませんからね 」
患者
「 ………………やらなくても良いって事ですか??
それで問題は無いんですか?? 」
セロフィート
「 別に薬を処方している訳では無いですし。
全ては患者さんの意欲次第となります。
今より少しでも “ 変わりたい ” と思うなら、何か1つは実践してみようと行動に移すものです。
無理に続ける必要も無いですし、心のままに実践したり止めたりするのも自由です。
処方箋の実践をされなくても、患者さんを責めたりしません 」
患者
「 は、はぁ……。
…………この “ いいこと探し ” って何をしたら良いんですか?? 」
セロフィート
「 日常の中で “ 些細な良かった ” を見付ける事です 」
患者
「 良かった?? 」
セロフィート
「 日々の生活の中で、嬉しい,楽しい──と感じる出来事は必ず起きています。
それ等は当たり前過ぎてついつい見逃してしまいがちな事です。
些細過ぎる “ 小さな幸せ ” に少しでも気付ける様になる為の “ いいこと探し ” です。
難しそうですか? 」
患者
「 ………………例えばどんな事が “ 嬉しい ” って事になるんですか?
一寸良く分からないんですけど…… 」
セロフィート
「 “ 嬉しい ” と思える事は相峙さんの周りにも溢れていますよ。
例えるなら──、紅茶とスイーツですね。
此方の紅茶とスイーツは患者さんに出しています。
患者さんの中には紅茶の味やスイーツの味が口に合わず不機嫌になる患者さんも居られます 」
患者:相峙
「 えっ?
そうなんですか?
こんなに美味しいのに── 」
セロフィート
「 その気持ちですよ、相峙さん 」
患者:相峙
「 えと……どの気持ちですか?? 」
セロフィート
「 色んな患者さんが居ます。
大勢の患者さんが居る中で、相峙さんは紅茶とスイーツを “ 美味しい ” と感じてくれています。
“ 美味しい ” と感じると少し嬉しい気持ちになりませんか?
気持ちが少しだけ飛び跳ねる感じです 」
患者:相峙
「 ………………そうかも知れません。
不味いのを食べた時より気持ちが上がる気がします 」
セロフィート
「 “ 美味しい ” だけではないですよ。
夏なら “ 冷たくて気持ちいい ” とか “ 涼しい ” と思える事も “ 小さな幸せ ” になります。
冬なら “ 温かい ” とか “ 暖かい ” と思える事も “ 小さな幸せ ” になります。
花火を見て “ 綺麗だ ” と思えたり、咲いている花を見て “ 綺麗だな ” と思えたり、虹を見て “ 珍しいな、綺麗だな ” と思える事も “ 小さな幸せ ” になります 」
患者:相峙
「 じゃあ、動物を見て “ 可愛い ” って思ったり、風が吹いて “ 涼しい,気持ちいい ” って思う事もですか?? 」
セロフィート
「 そうですね。
どうでしょう、ほんの少し意識を向けるだけで “ 小さな幸せが溢れている ” と思えません? 」
患者:相峙
「 ………………何と無くですけど……分かった気がします…… 」
セロフィート
「 “ いいこと ” に気付けた時には、此方のメモ帳に書き残す様にしてください。
就寝前にメモ帳を読み返してください。
これを継続,持続させ、習慣にする事で “ 今日も素敵な1日を過ごせた ” と思える様になります 。
自分の周りで “ 良かった事が起きている ” と実感する事で、心に元気がチャージされます。
それが明日に対する希望を促してくれます 」
患者:相峙
「 ……そう…………なんでしょうか………… 」
セロフィート
「 何事も “ 続ける努力 ” を惜しまぬ事です。
気持ちが明るくなれば、感じ方も変わり、意識も変わります。
相峙さんの雰囲気も今より柔らかい雰囲気に変わりますよ 」
患者:相峙
「 …………柔らかい雰囲気……。
………………はい(////)」
セロフィート
「 “ いいこと ” を実践する事が徐々出来る様になれば、沈んでいる気持ちも少しずつ晴れて来ます。
大丈夫ですよ 」
患者:相峙
「 ……………………あの……先生…………そうすれば……不運な呪いからも解放されますか?? 」
セロフィート
「 相峙さん、不運は誰にでも来ます。
相峙さんだけが不運に見舞われている訳では無いですよ。
他人様の芝生が青く見えてしまう事と同じです 」
患者:相峙
「 ……………………本当にそう何ですか?
僕にだけ苦が集まって来てる気がするんですけど…… 」
セロフィート
「 苦集を滅する道は有ります。
その前に先ずは相峙さんの気持ちと環境を整えましょう。
遠回りにはなりますけど、急いでも良くはなれません。
焦らず慌てずゆっくりで良いですから、相峙さんのペースで進めて行きましょう 」
患者:相峙
「 苦を滅する道が気になるんですけど…… 」
セロフィート
「 高度な哲学と科学の話になりますよ。
相峙さんは、学問が好きですか? 」
患者:相峙
「 はい?
哲学と科学…………ですか??
勉強は苦手なんですけど………… 」
セロフィート
「 それなら先ずは処方箋の実践をしてください。
それが何よりも近道となります 」
患者:相峙
「 さっきは遠回りって…… 」
セロフィート
「 ふふふ…。
“ 急がば回れ ” ですよ、相峙さん。
では、1ヵ月後に会いましょう 」
患者:相峙
「 あ……はい……。
有り難う御座いました…… 」
患者の相峙さんは、セロから処方箋を受け取ると半信半疑の顔をしながら、セロに頭を下げて診察室から出て行った。
因みにメモ帳は治療費には含まれていない。
メモ帳はオマケって事かな。
◎ 訂正しました。
此方から強制する事 ─→ 此方から強制する事
止めたりするのも ─→ 止めたりするのも
実践をされたくても ─→ 実践をされなくても




