⭕ 初めての患者 1
予約の入っている16時になった。
開業記念のめでたい初日に予約をしてくれた患者さんが来てくれた。
──*──*──*── 診察室
セロフィート
「 ようこそ御越しくださいました。
心霊カウンセラーのセロッタ・シンミンです。
彼はワタシの助手です 」
マオ
「 マオ・ユグナルです。
初めまして! 」
患者
「 宜しくお願いします。
御2人共、外国の方なのに日本語が御上手ですね 」
セロフィート
「 有り難う御座います。
父親が日本人なので、日本で育ちました。
こう見えて、外国語は苦手なんです 」
これは嘘だ。
嘘の設定を如何にも事実みたいに話している。
セロもオレも、名乗ったのは本名じゃなくて偽名だしな~~。
患者
「 そうなんですか!?
外国語が得意そうに見えるのに…… 」
セロフィート
「 人には必ず苦手な事が有るものです。
──早速、名倉谷さんの診察を始めましょう。
初めての診察ですし、紅茶を飲みながら気楽に診察しましょう 」
名倉谷
「 ──えっ!?
紅茶を飲みながら診察ですか??
良いんですか? 」
セロフィート
「 勿論です。
今回の診察は名倉谷さんが困っている事,悩まれている事を聴かせていただく事です。
気軽に話してください。
名倉谷さんが吐き出されたの苦を聴いた上で処方箋をお渡し致します 」
名倉谷
「 処方箋…… 」
セロフィート
「 どんな結果にも必ず原因が有ります。
原因が有っての結果です。
原因を解明し、改善,解決させる為に御渡しするのが処方箋です。
処方箋に書かれた内容を実践するか否かは、患者さん次第となります。
処方箋の実行は強制ではありません。
自発的に行ってください 」
名倉谷
「 自発的に……ですか?? 」
セロフィート
「 はい。
処方箋に書かれた内容を実践しなければ、結果は変わぬまま、同じ状態を繰り返すだけです。
では、始めましょう 」
マオ
「 どうぞ、紅茶です 」
名倉谷
「 有り難う御座います。
──可愛いティーカップとソーサーですね 」
セロフィート
「 診療所のマスコットキャラクターのキノコンです。
非売品です 」
名倉谷
「 非売品……。
良いですね、非売品のティーセット(////)」
あれ?
何か、ティーセットを気に入られちゃった?
欲しそうな顔してるぅ~~。
セロフィート
「 成る程──。
御自宅で発生する心霊的な現象に悩まされている──という事ですね 」
名倉谷
「 はい…… 」
セロフィート
「 分かりました。
先ずは形而上的な心霊現象なのか──、形而下的な科学検証で解明される現象なのか──。
心霊現象の区別をするとしましょう 」
名倉谷
「 区別……ですか?
区別なんて出来るものなんですか? 」
セロフィート
「 割りと簡単に出来ます。
此方で用意する特殊な清塩を使い、検証します 」
名倉谷
「 塩を使うんですか?? 」
マオ
「 ──検証には専用のコップと清塩を使ってください 」
セロフィート
「 此方のコップは特殊な製法で作られたコップです。
割れない仕様になっている強度の強い丈夫なコップです。
安心して使ってください。
此方の清塩を1袋分、コップの中へ入れたら各部屋の中心に置いてください。
就寝前──24時前に置くのが良いです。
翌朝、起きたらコップと清塩の状態の写真を撮り、診療所へ画像を送ってください。
何処に置いたコップなのかも忘れず記入してください 」
名倉谷
「 は、はい…… 」
セロフィート
「 名倉谷さんの自宅の間取りを教えてください。
必要な数のコップと清塩を貸し出します 」
名倉谷
「 は、はい……。
貸し出しですか… 」
セロフィート
「 このコップも清塩も非売品です。
販売はしていません。
清塩の代金は頂きませんので安心して御使いください 」
そりゃ、そうだよな。
近所のスーパーで販売されてた激安の塩だもんな~~。
魔法でコーティングした後、古代魔法で大量生産してあるから、清塩の元手は300円ぐらいだ。
コップなんて近所の100円ショップで販売されてた安物だ。
割れない様に魔法でコーティングした後、キノコンのイラストを貼り付けて古代魔法で大量生産した物だ。
元手は100円。
両方合わせても元手は400円だもんな~~。
400円なんて直ぐに稼げちゃうんだから、タダ同然だ。
初患者の名倉谷さんは、自宅の間取りをセロに教える。
必要な数のコップと清塩を準備するのは、助手の役目だ。
貸し出し用のコップと清塩を入れるのは、マスコットキャラクターのキノコンのイラスト入りの可愛い防水性の紙袋だ。
セロフィート
「 ──本日の処方箋です。
24時前に各部屋の中心に清塩を入れたコップを置く事。
翌朝、コップと清塩の状態を写真に撮り、診療所へ画像を送信してください 」
名倉谷
「 これが今日の処方箋…… 」
セロフィート
「 受け付けで本日の診療代を御支払いください 」
セロの診察は無事に終わった。
診察と言って良いのか分からないけど、名倉谷さんは処方箋を受け取って診察室から出て行った。
──*──*──*── 受付カウンター
患者の名倉谷は受付カウンターの前に立ち、本日の診察料を支払う。
領収書には診察代しか書かれておらず、初回は500円だった。
受け付けをしてくれるのは診療所のマスコットキャラクターでもあるキノコンだ。
キノコンから渡された診察カードには、キノコンのイラストが描かれていて可愛い。
子供が喜んで自慢しそうな診察カードだ。
初回記念という事もあり、受け付けのキノコンからクッキーも貰う。
クッキーにもキノコンの絵が印刷されていて、食べるのが勿体無く思うクッキーだった。
次回の予約を入れた名倉谷は心霊カウンセラー診療所を出ると、半信半疑の顔をしながら寄り道せずに真っ直ぐ自宅へ帰って行った。