⭕ 初めての患者 10
名倉谷と彼女の槇三さんの診察をした日から4日後──、光君がキノコンと一緒に心霊カウンセラー診療所へやって来た。
どうしたんだろう??
暖かそうなコートを着こなしている光君は背中にリュックサックを背負っている。
同行していたキノコンに促されながら、光君は診察室へ通された。
──*──*──*── 診察室
セロフィート
「 今日は光君。
3ヵ月振りですね。
今日はどうしましたか? 」
キノコン:分身体
「 光、セロッタ先生に相談するエリ 」
名倉谷 光
「 う、うん……。
………………セロッタ先生!
僕を……僕を……此処に置いてください!! 」
セロフィート
「 はい?
診療所で暮らしたい──という事ですか? 」
名倉谷 光
「 はい!
僕……僕……槇三のお姉さんと仲良く出来ないんです!! 」
セロフィート
「 何かそれなりの事情が有りそうですね 」
名倉谷 光
「 ………………槇三のお姉さんが、叔父さんと一緒に暮らす事になるみたいで……。
ど…同棲……っ言うのみたいで……。
それで……診療所から来たキノコンに “ 出ていけ ” って槇三のお姉さんが迫って来たんです…… 」
セロフィート
「 名倉谷さんが槇三さんと同棲ですか。
結婚する意志は変わらない様ですね 」
名倉谷 光
「 僕……僕は……キノコンと離れたくないです!!
キノコンを邪険にする槇三のお姉さんと一緒に暮らすなんて──、僕は嫌です!!
…………お母さんが嫌がるから家には帰れないし……。
診療所くらいしか行く所がなくて…… 」
セロフィート
「 それでキノコンに連れて来てもらったのですね 」
名倉谷 光
「 はい…… 」
セロフィート
「 さて、困りましたね。
診療所で一時預かりするにしても御両親と名倉谷さんの許可が必要です 」
名倉谷 光
「 駄目なんですか?
キノコン~~~~ 」
キノコン:分身体
「 光……。
セロッタ先生……お願い致しますエリ。
光を診療所で匿ってくださいませエリ 」
セロフィート
「 患者の甥っ子に情でも湧きましたか? 」
キノコン:分身体
「 ………………小さな友達の平穏を守りたいですエリ…… 」
キノコンはセロを前にして怯えている。
キノコンにとってセロは創造主であり、絶対に逆らえない主だからだ。
セロが黒を銀と言えば、誰が何と言おうが、キノコンにとっては黒は銀として統一されるからだ。
セロが「 光君を喰べなさい 」と命令すれば、キノコンは逆らえず、光君を喰べるだろう。
それ程、キノコンにとってセロは絶対的な存在なんだ。
オレは困っている光君に手を伸ばしたい!!
マオ
「 セロ、何とかしてやろうよ。
セロなら出来るだろ。
オレだって槇三さんと一緒に暮らすなんて嫌だぞ!
キノコンを邪険にする女と暮らさせるなんて反対だ! 」
キノコン:分身体
「 マオ様ぁ~~ 」
マオ
「 空いてる部屋が有るし、暫く匿うぐらい良いだろ?
この寒い中、追い返すなんて酷い事しないでくれよ 」
セロフィート
「 マオ………………仕方無いですね。
分かりました。
マオに免じて今夜は泊めるとしましょう。
キノコン、お前が責任を持って光君の世話をする事を許します 」
キノコン:分身体
「 有り難う御座いますエリ!
寛大なお心遣い感謝致しますエリ!! 」
セロフィート
「 光君、君の御両親と名倉谷さんへは此方から連絡をしときます。
住居は2階です。
部屋はキノコンと使ってください 」
名倉谷 光
「 あ…有り難う御座います、セロッタ先生! 」
マオ
「 良かったな、光君 」
名倉谷 光
「 うん(////)」
セロフィート
「 お前にシッターバッチを渡します。
特例ですよ 」
キノコン:分身体
「 有り難う御座いますエリ 」
キノコンはセロから “ シッターバッチ ” なる物を嬉しそうに受け取ると胸に── キノコンに胸が有るのか分からないけど ──取り付けると、光君の手を引いて診察室を出て行った。
2階の住居へ行くには、診療所を一旦出て、階段を上がらないといけない。
セロとオレは転移魔法を使ってるから、外の階段を使う必要が無いんだ。
マオ
「 セロ、有り難な! 」
セロフィート
「 はいはい。
詳しい事情は診察に来た名倉谷さんからも聞くとしましょう。
キノコンからの報告で大体の事情は把握してますけど、彼方にも言い分は有るでしょうし 」
マオ
「 そうだな。
名倉谷さんが光君を取り返しに来たら引き渡すのか? 」
セロフィート
「 光君次第です。
今の光君の支えになっているのはキノコンです。
無理矢理キノコンと引き離す事は今の光君にとっては酷でしょう 」
マオ
「 そうだよな。
あんなに懐いてるんだもんな。
光君、キノコンに依存してないよな? 」
セロフィート
「 さて、どうでしょうね。
マオとの楽しい2人暮しが終わってしまい、残念です 」
マオ
「 セロ……。
オレがキノコンに助け船を出したから……。
御免な…… 」
セロフィート
「 マオ…。
それなら今夜は可愛く『 おねだり 』するマオを見せてください♪ 」
マオ
「 げぇ?!
マジかよ…… 」
セロフィート
「 ワタシに悪いと思ってくれているのでしょう?
楽しみにしてます♪ 」
マオ
「 ………………謝るんじゃなかった…… 」
そんな訳で、2階の住居スペースの空いてる部屋にキノコンと光君が使う事になった。
セロ,オレ,光,キノコンで居間を共有する事になった。
セロもオレも滅多に居間を使わないけどな~~。
──*──*──*── 夕方
──*──*──*── 2階
──*──*──*── 居間
キノコン:分身体
「 御待たせしましたエリ。
野菜と茸がたっぷり入ったクリームシチューですエリ 」
名倉谷 光
「 わぁ~~!
温かくて美味しそ~~う(////)」
キノコン:分身体
「 パスタに絡めても美味しいですエリ 」
マオ
「 オレ、パスタ多目でシチューも多目な! 」
キノコン:分身体
「 畏まりましたエリ。
御用意致しますエリ 」
セロフィート
「 マオ、呉々も光君の分まで食べないでください 」
マオ
「 食べるかぁ! 」
朝食と昼食は別々に食べるけど、夕食だけは光君と一緒に食べる事になった。
出される料理はキノコンが作ってくれる。
やっぱり野菜と茸を使ったヘルシー料理が多い。
健康と栄養を考えてくれるから、凝ってるけど食べ易い肉料理も作ってくれるけど、野菜と茸は肉より多目だ。
キノコンからの報告では、名倉谷さんの部屋に設置されている御宝殿の力に御執心なんだとか。
槇三さんも光みたいに、見たくない幽霊がはっきりと見えている事に悩んでいたみた。
毎日、御宝殿の前で手を合わせて “ おまんだら ” に祈っていたらはっきりと見えてい幽霊がうっすらとしか見えなくなった──っていう光の不思議体験を聞いた槇三さんが、名倉谷さんに同棲を持ち掛けたらしい。
槇三さんと結婚する気のある名倉谷さんは、あっさりと同棲を受け入れたもそうだ。
槇三さんが出した同棲の条件は、診療所から派遣されたキノコンを追い出す事だった。
怒って診療所から出て行ったから、診療所と関係のあるキノコンを追い出したかったのかも知れないけど、御宝殿セットは診療所が貸し出してるんだからな?
マオ
「 ん~~、クリームパスタうんまぁ~~~~♥️♥️♥️
キノコンの作る料理サイコぉ~~~~♥️♥️♥️
キノコン、これでさクリームコロッケ作ってくれよ!
明日の夕食に食べたい!! 」
キノコン:分身体
「 クリームコロッケなら今直ぐ御用意が出来ますエリ 」
マオ
「 良いのか? 」
キノコン:分身体
「 お作りしますエリ 」
キノコンはクリームコロッケを作り始めてくれた。
クリームコロッケ楽しみだぁ~~♥️
マオ
「 なぁ、セロ。
診療所から派遣してたキノコンを追い出せって言うぐらいなんだからさ、貸し出してる御宝殿セットも回収しちゃわないか。
光は此方で暮らす訳だからさ 」
セロフィート
「 マオ……。
それは未だ出来ません。
名倉谷さんは患者さんです。
患者さんに貸し出している御宝殿セットを回収する時は、名倉谷さんが心霊カウンセラー診療所の患者では無くなった時です 」
マオ
「 そっか……。
名倉谷さん、来月の予約日に来てくれるかな? 」
セロフィート
「 さて、どうでしょう。
名倉谷さんと連絡が取れませんし… 」
マオ
「 セロなら無理してでも連絡を取れるだろ~~ 」
名倉谷 光
「 セロッタ先生……。
叔父さんの部屋から御宝殿セットを回収しないでください!
御宝殿セットのお蔭で本当に叔父さんの部屋が明るくなったんです!
御宝殿セットは凄いんです!! 」
セロフィート
「 “ おまんだら ” が力を発揮したのは、光君がキノコンと一緒に真心を込めて、希望の祈り,感謝の祈りを “ ごほうでん ” へ捧げていたからです。
槇三さんが祈りを捧げても、“ おまんだら ” が同様の力を発揮するとは限りません 」
名倉谷 光
「 どうしてですか? 」
セロフィート
「 善い心掛けで祈るか、悪い心掛けで祈るかで力の能きに強弱が出るからです 」
名倉谷 光
「 えと…………難しくて分からないです…… 」
セロフィート
「 そうですね。
光君には未だ難しい話でした。
光君は今迄通り、キノコンと一緒に御宝殿セットへ御供えをして、 “ おまんだら ” へ祈りを捧げてください。
真心を込めて祈りを捧げれば、“ おまんだら ” は力を発揮してくれます 」
力を発揮するのは、セロが “ おまんだら ” に掛けた古代魔法だけどな~~。
名倉谷 光
「 はい!
最初の頃より透けていて、見え難くなって来てるんです! 」
セロフィート
「 完全に見えなくなる事はないですけど、光君が “ 真心,感謝,謙虚さ ” を持ち続け、善い心掛けで毎日を過ごしていれば、“ おまんだら ” の力は光君を助けてくれます 」
セロめ、まるで息をする様にスラスラと嘘っぱちな事を──。
光は素直で良い子だから真に受けて信じちゃうだろが!
子供にも容赦ないんだな……。
名倉谷 光
「 セロッタ先生、どうしたら幽霊が見えなくなるんですか?
お父さんもお母さんも兄ちゃん達にも見えないのに……どうして僕にだけ…… 」
セロフィート
「 光君は患者ではないですけど、特別に処方箋を出しましょう 」
名倉谷 光
「 しょほうせん??
セロッタ先生、処方箋って何ですか? 」
セロフィート
「 “ 見たくもない幽霊さん達が見える ” のは “ 見させられている ” からです。
光君に幽霊さん達を “ 見させている ” 事には意味が有ります 」
名倉谷 光
「 いみ??
意味って何ですか? 」
セロフィート
「 光君に “ 教えたい事が有る ” という事です 」
名倉谷 光
「 教えたい事……?? 」
セロフィート
「 そうです。
未来の光君が困った時に助けてあげられる様に、現在の光君に善を積ませ、善の貯金をさせる為に、現在の光君の立場で出来る事を “ 教えよう ” とされています 」
名倉谷 光
「 ぜんのちょきん??
善の貯金が出来たら幽霊が見えなくなるんですか? 」
セロフィート
「 光君に対して用事が無くなれば、見させる必要がなくなりますから、見えなくなります。
光君に用事が出来れば、また見える様になるかも知れません。
幽霊さん達は “ 使われているだけ ” です。
幽霊さん達には人間に悪さをする力も無ければ、人間を守護る力も無いです。
無闇に怖がる必要はないですよ。
見えた時は、『 僕に用事が有るのかな? 』『 幽霊さん達を使って、僕に “ 何 ” かを教えようとされてるのかな? 』『 “ 善の貯金を増やしなさい ” って事かな? 』と見方や考え方を変えてみると怖くなくなります 」
名倉谷 光
「 ……………………難しい……です…。
僕に出来るのかな…… 」
マオ
「 出来るさ。
光は1人じゃないだろ。
キノコンって言う心強くて頼もしい友達が傍に居るじゃないか。
1人でするのが難しければ、善を積む手伝いをキノコンにしてもらえば良いんだ。
困った時や不安な時には、キノコンを頼って良いんだ。
キノコンが知恵を貸してくれるし、後押しをしてくれるから安心して善を積めば良いよ 」
名倉谷 光
「 マオさん……。
はい!
僕、やってみます! 」
マオ
「 その意気だぞ、光!
男は行動力だ!! 」
セロフィート
「 今の光君に出来る事は、お父さんと長男に手紙を書いて、元気に暮らせている事を教える事です 」
名倉谷 光
「 てがみ?? 」
セロフィート
「 キノコンと書き方の練習や絵を描いたりしているでしょう?
先ずは光君を気に掛けて心配してくれている、お父さん,長男に手紙や絵を描いて、安心させてあげましょう。
毎日、描いている絵日記に手紙を添えて楽しく暮らせている事を伝えても良いです。
作った折り紙を手紙に入れて、色んな折り紙を折れる様になった事を伝えても良いです。
写真に手紙を添えて送っても良いです。
どんな手紙を送るのか、キノコンと相談してみましょう 」
名倉谷 光
「 はい!
僕、お父さんと景莵兄ちゃんに手紙を書いてみます! 」
セロフィート
「 光君が、お父さんと景莵お兄さんと会える様に叔父さんも動いてくれている筈です 」
名倉谷 光
「 うん…(////)
セロッタ先生、有り難う!」
セロフィート
「 ふふふ…。
どう致しまして 」
光は嬉しそうに笑っている。
すっかりセロの嘘に騙されている。
まぁ、手紙を送って元気に暮らしてる事を伝えるのは大事だと思うけど──、それを実践したからって本当に “ 善を積めるのか ” ってのは怪しい。
光には悪いけど、セロが楽しそうなら別に良いかな。
◎ 光と一緒に暮らす事になったので、マオの「 光君 」呼びを「 光 」に変更しました。
セロフィートは変わらず「 光君 」呼びです。
◎ 訂正しました。
三 ─→ 光




