⭕ 初めての患者 9-1
──*──*──*── 1ヵ月後
14時──、9回目の診察を受ける為に名倉谷さんが診察所に来た。
今回は彼女さんを連れて来た。
光君はキノコン同伴で近所に出来たスケートリンクへ遊びに行ってるそうだ。
もう12月だもんな~~。
因みに名倉谷さんは、5月から診察に来てくれてるから、約8ヵ月も通院してくれている事になる訳だ。
すっかり常連さんだな~~。
──*──*──*── 診察室
セロフィート
「 今日は名倉谷さん。
初めまして、彼女さん。
ワタシは心霊カウンセラーのセロッタ・シンミンです。
宜しく御願いしますね 」
マオ
「 オレは助手のマオ・ユグナルです 」
名倉谷の彼女
「 初めまして。
槙三愛夏です。
今日は御願いします(////)」
セロフィート
「 初めましての槙三さんの診察は名倉谷さんの後にじっくりと聴かせていただくとしますね 」
槙三愛夏
「 セロッタ先生──、槙三じゃなくて “ 愛夏 ” って呼んでください!! 」
セロフィート
「 はい?
槇三さん、患者さんを呼ぶ時には苗字で呼ぶ様にしてますので、御期待には添えません 」
槇三愛夏
「 どうしてですか!?
光の事は名前で呼んでるじゃないですか! 」
セロフィート
「 名倉谷さんと苗字が同じですから名前で呼んでいただけです。
マオ、槇三さんに紅茶とスイーツを御出ししてください 」
マオ
「 分かった!
持って来るよ 」
オレは診察室を出る。
セロフィート
「 ──名倉谷さん、その後の経過を教えてください 」
名倉谷
「 あ、はい──。
その前に消臭剤の容器を持って来ました。
中には未だ備長炭が残ってます。
此方は未使用の備長炭です。
長い間有り難う御座いました 」
名倉谷は持参した防水性の紙袋をセロフィートの前に出す。
セロフィート
「 どう致しまして。
確かに返却していただきました 」
名倉谷
「 診察日の翌日、セロッタ先生が配達してくれた御宝殿セットが届きました。
俺が仕事に行ってる間にキノコンが部屋の一角に設置してくれてました。
仕事から帰宅して部屋に入ったら、部屋の中が明るくなってる感じがしました。
部屋の電気は全部LEDなので、今迄も明るかったんですけど、明らかに明るさが違うんですよ!!
不思議ですね! 」
セロフィート
「 “ おまんだら ” の力ですね。
効果が出ている様で安心しました 」
名倉谷
「 キノコンに御宝殿への御供えの仕方や掃除の仕方,朝夕の勤行の仕方を教えてもらいました。
キノコンが花の種を買って来て、ベランダで栽培してくれる事になったんです。
献花に使う花は、道端に咲いてる花でも良いらしいので、光がキノコンと一緒に摘みに行ってくれる事になりました 」
セロフィート
「 光君も御手伝いをしてくれのですね 」
名倉谷
「 はい!
そうなんですよ!
キノコンが来てくれてから、光はキノコンの手伝いを自発的にする様になっていて、俺より掃除好きになっちゃいましたよ。
料理を作る手伝いやスイーツを作る手伝いもしてるみたいで──。
キノコンと一緒に何かをする時は動画配信してたりするんです。
YouTuberやってるって知った時は吃驚しましたよ 」
セロフィート
「 それは驚きですね。
毎日、楽しそうで何よりです 」
名倉谷
「 それから、御宝殿に毎日、勤行をしている効果なのか、今まで見えていた──いえ、見させられていた幽霊の類いが少しずつ薄れて見える様になってるそうです。
今迄は生きてる人間と同様にハッキリと見えて──見させられていたらしいんですけど、薄れて見える様になって喜んでます!
有り難う御座います! 」
セロフィート
「 “ おまんだら ” が力を発揮してくれている証拠ですね。
部屋の中が明るくなったのは澱みを遮断する事が出来ているからです。
毎日、怠らず朝夕の勤行を続けてください 」
名倉谷
「 はい!
有り難う御座います! 」
マオ
「 御待たせ。
紅茶とスイーツを持って来たよ。
今日のスイーツはマンゴーのタルトタタンだよ 」
オレは診察室に入ると前以て用意していたテーブルの上にティーセットとタルトタタンを置く。
タルトタタンは取り分け易い様に既に切り分けられている。
紅茶を淹れたティーカップと一切れのタルトタタンを名倉谷さんにも分ける。
槇三さんはマンゴーのタルトタタンを輝く様な瞳で見ている。
タルトタタンを初めて見るのかな?
マオ
「 槇三さん、どうぞ。
おかわり有るから好きなだけ食べて良いよ 」
セロフィート
「 気に入ったなら、裏手のスイーツ店で販売もしてますよ 」
名倉谷
「 えっ?
販売ですか??
裏手で?? 」
セロフィート
「 患者さんに提供していたスイーツが反響でして、スイーツ店を始める事になりました。
完全お持ち帰り制になります。
ネット販売もしてます。
スイーツのメニューが載っているチラシは受け付けに有ります。
良かったら持ち帰ってください 」
名倉谷
「 へぇ~~。
診療所の裏手ですね。
帰りに寄ってみます! 」
セロフィート
「 慰霊碑の件で進展ありましたか? 」
名倉谷
「 セロッタ先生が用意してくださったリーフレットが大好評で、マンションの住人以外の人からも署名を貰えたんです。
菩提寺の住職さんも他の檀家さんへ事情を話してくれて、署名集めの協力者が増えたんです!
集まった署名を持って、マンションの管理人さん,住職さん,檀家の代表者さん,マンション代表者として俺が不動産屋へ行く事になりました。
勿論、何か良からぬ事が起きた時の為にキノコンも同行してくれたんです!
不動産屋へ行って、集まった署名を見せて、慰霊碑を建ててほしい事を頼んだら、集めた署名を奪われて追い出されてしまいました。
聞く耳を持たない──って言うか、『 心霊現象なんか気の所為だ! 』って言って、全く取り合ってくれなかったんです…… 」
セロフィート
「 不動産屋の偉い方は霊的現象の類いを信じない方なのですか? 」
名倉谷
「 そうみたいです……。
皆で話し合って、『 何度でも署名を集めて、向こうが折れるまで断固戦おう! 』って決まったんです。
皆でリーフレットを配布しながら署名集めを再開してます。
住職さんは本殿を開放して、慰霊碑の必要性と彼岸供養会の重要性を法話に交えて講演してくれてます 」
セロフィート
「 そうですか……。
知り合いに弁護士が居ます。
名倉谷さんの始めた活動に加わってくれる様にワタシの方から依頼しましょう 」
名倉谷
「 えっ!?
弁護士を紹介してくださるんですか!?
良いんですか?? 」
セロフィート
「 名倉谷さんは処方箋の実践中です。
処方箋を出した立場年と、ワタシにも援護射撃をさせてください。
処方箋の実践を頑張られている名倉谷さんに対して細やかながらの後押しです 」
名倉谷
「 弁護士の紹介は細やかではない様な気がするですけど……。
有り難う御座います!
弁護士が味方に付いてくれるなら、皆も喜びます!! 」
セロフィート
「 経過も聴く事が出来ましたし、今回の処方箋を出しましょう 」
名倉谷
「 はい!
お願いします!! 」
セロフィート
「 本日の処方箋の内容は── 」
◎ 訂正しました。
LDE ─→ LED




