⭕ 初めての患者 7
──*──*──*── 1ヵ月後
14時──、7回目の診察を受ける為に名倉谷さんが診察所に来た。
今回は光君とキノコンは来てないみたいだ。
光君はどうしたんだろう?
フルーツティーもクッキーもドーナツも沢山食べていたのに…。
光君には中毒性の効果が無かったのかな?
──*──*──*── 診察室
セロフィート
「 今日は、名倉谷さん。
光君は一緒ではないのですね 」
名倉谷
「 はい。
光は友達と一緒に公園で開かれているBBQ大会に参加してるんです。
キノコンがママさん達と一緒に開いてくれてるんです 」
セロフィート
「 BBQ大会ですか。
楽しそうなイベントですね 」
名倉谷
「 はい!
それはもう!
キノコンは凄いですね、セロッタ先生!
『 あっ! 』と言う間に子供達のアイドルですよ!
気難しいママさん達共打ち解けてしまって!
年配のお年寄り達からも人気者なんですよ!
マンションの雰囲気が、キノコンのお蔭でガラッと変わったのが分かります。
不審者がマンション周辺を彷徨ていた時なんて大活躍だったんです!!
無口だった光も人見知りだったのが嘘みたいに良く笑う様になって──。
毎日、キノコンと一緒に外に出て友達達と楽しそうに遊んでますよ 」
セロフィート
「 キノコンが皆さんのお役に立てている様で安心しました 」
マオ
「 流石のキノコンだな~~。
コミュニケーション能力が半端ないや 」
名倉谷
「 俺も安心して光を任せて仕事に行けているし、部屋に居てもキノコンが居てくれるだけで、心霊現象が起きても大して恐怖くないっていうか──。
本当にキノコンには毎日、助けられてますよ。
キノコンの助言や後押しも有って、同じ階に暮らしている御近所さん達共親しくなれたんですよ 」
セロフィート
「 それは良かったです。
処方箋の実践をしてくれている様で安心しました 」
名倉谷
「 全部、キノコンの援護射撃のお蔭って言うか(////)
キノコン様々です! 」
セロフィート
「 本日の処方箋です。
──マンションの一角に慰霊碑を建ててもらう為の嘆願書の署名集めを始めてみましょう 」
名倉谷
「 へ?
署名集め……ですか?? 」
セロフィート
「 そうです。
マンションでは他の住人達も名倉谷さんと同様に心霊現象に悩まされています。
心霊現象が起こるのはマンションに澱みが集まり易く、留まり易いからです。
住居者も多いマンションですし、取り壊す事は難しいでしょう。
現段階ではマンションの敷地内に慰霊碑を建ててもらい、年4回の彼岸供養会を開催してもらい、鎮魂させる方法しかないです。
先ずは住人達が心霊現象に悩まされている事実を明らかにし、慰霊碑を建て欲しい意志がある事を “ 署名 ” という形で不動産屋へ伝える必要があります。
住居者が声を上げなければ、持ち主の不動産屋は思い腰を上げません。
不動産屋に聞き入れてもらえなくても “ 行動する ” 事に意味があります 」
名倉谷
「 ………………で、でも、1人で署名活動なんて…… 」
セロフィート
「 1人ではないです。
御近所に菩提寺がありますね。
住職さんに相談してください。
菩提寺の檀家さんの中にはマンションの住人も居ます。
先ずは住職さんに相談後、檀家さん達にもマンションの事情を聞いてもらい、署名集めに協力してもらってください。
名倉谷さんは必ずキノコンと一緒に行動する様に心掛けてください 」
名倉谷
「 は、はぁ…… 」
セロフィート
「 誰かの役に立つ事をする姿は、光君にも良い影響を与えます。
名倉谷さんの勇姿を見せてあげてください 」
名倉谷
「 ははは…………はい…… 」
セロフィート
「 署名用紙は此方で用意しました。
少しでも署名してもらい易くする為にキノコンのイラストを入れています。
リーフレットも用意したので、署名するしないに関わらず、住人に手渡ししてください。
マンションの現状を分かり易く書いてあります 」
名倉谷
「 …………其処迄してもらえるんですか!? 」
セロフィート
「 はい?
これは患者さんが処方箋を実践し易くする為に必要な処置です。
マンションで起こる心霊現象を無くす事は出来ませんが、供養をする事で被害を最小限に留める事は出来ます。
慰霊碑が澱みを弾く役目をしてくれます。
これは未来の名倉谷さんへの投資です。
現在の名倉谷さんが出来る最善です。
出来そうですか? 」
名倉谷
「 なんか……凄い大事に発展してしまって……不安です…… 」
セロフィート
「 誰かが行動に起こさなければならない事です。
その “ 誰か ” は名倉谷さんです。
事件や事故は未然に防げます。
未然に防ぐ方法が有るのです。
指を咥えて見ているだけの人では、子供達の良き御手本にはなれませんよ? 」
名倉谷
「 ははは…………御手本になるつもりは更々ないんですけど…… 」
セロフィート
「 処方箋の実践をするもしないも名倉谷さん次第です。
名倉谷さんが決めてください 」
名倉谷
「 は……はい…………。
持ち帰って……検討はしてみます…… 」
セロフィート
「 本日の診察は以上にしましょう。
1ヵ月後に経過を教えてください 」
名倉谷
「 …………有り難う御座いました…… 」
名倉谷さんは、署名用紙とリーフレットが入っている防水性の紙袋を受け取って診察室を出て行った。
なんか全然乗り気じゃない雰囲気だ。
診察に来て、「 署名集めを始めてみましょう 」なんて普通は言われないよ。
「 署名集めを始めてみましょう 」なんて患者に言うカウンセリングが有るか??
オレ、カウンセリングの事、何にも知らないけど、無いと思うな~~。
マオ
「 セロ、何で『 署名集めを始めてみましょう 』なんて言ったんだよ?
名倉谷さんか落ち込んでたじゃん 」
セロフィート
「 はぁ?
知った事ですか。
ワタシは名倉谷さんを助ける為にカウンセリングをしている訳ではないです。
利用する為にカウンセリングしているだけです 」
マオ
「 酷いカウンセラーだな~~。
で──、署名集めさる事でセロにどんな得が有るんだよ? 」
セロフィート
「 これを見てください 」
マオ
「 セロが用意したリーフレットに何か有るのか? 」
オレは折り畳まれているリーフレットを開く。
マオ
「 あっ──、診察所の住所と連絡先が入ってる!
発行協力:心霊カウンセラー診察所──。
ちゃっかりしてんのな。
然も、“ 生き甲斐 ” の下に印刷してあるし! 」
セロフィート
「 このリーフレットをマンションの住人へ手渡しして貰えば、診察所に興味を持ってくれる住人も少なからず出て来る筈です。
完全予約制ですから患者さんの好きな時間で予約が出来ます 」
マオ
「 ははは……。
此方が何もしなくても勝手に患者が増えるし、勝手に来てくれる──って訳かよ。
でもさ、何でリーフレットの裏に “ 生き甲斐 ” なんて書いてあるんだ? 」
セロフィート
「 人間は神佛から守られる為の “ 生き甲斐 ” を知りません。
真の “ 生き甲斐 ” を知る事で、前向きな人生を送れる様になりますし、生きる元気が湧いてきます。
何より診察所のイメージも上がります♪ 」
マオ
「 そだな……。
でもさ、“ 生き甲斐 ” の中に “ 神佛 ” が入ってるじゃんか。
嫌がったり、不愉快に思う住人も居るんじゃないか? 」
セロフィート
「 おや、カウンセラーが “ 目に見えない不可思議な力の存在 ” を信じていてはいけませんか?
人の命を助ける医師ですら、“ 目に見えない不可思議な力の存在 ” を信じています。
リーフレットには、何を “ 神佛 ” と指すのか書いてありますし、放っといて良いです 」
マオ
「 セロが言うなら別に良いけどな~~。
キノコンが順調にマンションを掌握してるみたいで一寸怖いよ…… 」
セロフィート
「 ふふふ。
キノコンの活躍には期待してます♪
彼岸供養会まで漕ぎ着ければ此方のモノです♪
マオ、楽しみにしていましょう 」
マオ
「 何か良からぬ事を企んでそうだな~~ 」
名倉谷さんには申し訳ないけど、セロが楽しいみたいだし、いっか。
◎ 【 訳の分からない戯れ言を阿呆ボンなりに書いてみた件。】の16部分【「 生き甲斐 」って何だろうね? 】に「 生き甲斐 」が書いてあります。
書くと意外に長いのです!
気になる読者さんには、御手数を御掛け致します。




