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背景の色〜美代の場合〜(3)

 エキストラとインタビューの仕事をこなす日々だったが、クライシスの劇団長に呼び出された。


 劇団長とは仕事のメールのやり取りだけで、実際に会うのは一年に数回程度だった。メールに文面を見る限り劇団長はお怒りのようだったが、美代には心当たりがなかった。


 首を傾げつつ、クライシスのあるビルに入り、事務室に向かう。劇団長の妻が事務仕事をやっていたが、挨拶しても返事はない。無愛想で大仏みたいな女性だった。


 事務室の隣にある応接室へ向かうと、劇団長がソファに座っていた。初対面はクマのぬいぐるみのような印象の男だったが、歳をとるにつれて貫禄がつき、今は妻と同様に大仏のような雰囲気があった。日本の大仏というよりは、インドとかにありそうな像に見える。スーツやシャツがどこか派手なので、そう見えるのかもしれない。頭も禿げているが、茶髪にして若作りしていた。


「美代さ、SNSに仕事の事書き込んだりしたか?」

「え? SNSなんてやって無いですよ。裏垢も無いです。そう言う契約でしょ」


 この劇団に入った時、SNSは禁止されていた。SNSでエキストラやインタビューの実情を話し、注意されている同業者はよく見た事がある。エキストラはともかく、インタビューはヤラセに近く、全部台本があるとは、テレビ盲信者の間で炎上するかもしれない。


「じゃあ、このSNSは何だい。どういう事かい?」

「え?」


 劇団長は、ディスクの方からSNSを印刷したものを見せてくれた。ある陰謀論者のSNSで、美代の仕事したインタビューやエキストラの様子がまとめられていた。陰謀論界隈ではアンチ昆虫食が多いらしく、テレビのインタビューを調べているものが多いらしい。中には美代自身がすっかり忘れている仕事についても追いかけているSNSの投稿もあり、妙な気分になった。あまりにも詳しく投稿されているので、劇団長は美代本人の投稿だと疑ったようだ。


「事実無根ですよぉ。本当にSNSはやってないです」

「しかし、このミカエルっていう陰謀論者は何だ? 美代の仕事について詳しく過ぎないか? お前のファンか?」


 劇団長は、美代の無実は信じたようだが、首を傾げていた。


「私もわかりません」


 このミカエルって陰謀論者は一体誰?

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