ホームドラマ〜誠の場合〜(3)
美花に連れられてやって来たのは、五階建てのビルだった。周りは美容整形外科やホストクラブがあったりして胡散臭い雰囲気はあったが、「マリアの涙」の教会よりも健全に見えてしまった。一階は事務所や応接室、二階は稽古場、三階から五階までが美花達の住居スペースだという。
美花から風呂に入るように勧められてた。確かに教祖にされた事を思い出すと、風呂に入りたい気分だった。美花の言葉に甘え、風呂に入った。タオルや着替え、下着までも用意されていた。なぜ子供用の下着が用意されているかは謎だったが「親戚の子供が遊びに来るの」と笑っていた。この家には子供がnいないようだったが、リビングにも子供向けの絵本、漫画、ぬいぐるみ、アニメDVDなどが置いてあった。
風呂からあがると、リビングで好きにしていて良いと言われ、漫画を読んでいた。なぜか少女向けの漫画だったが、絵が綺麗で読んでしまった。大正時代に龍神の生贄になった村娘が、幸せになるシンデレラストーリーだった。なぜか龍神が回心し、龍神にベタ惚れされていた。似たような漫画もあり、悪魔に生贄された孤児が幸せになるストーリーだった。
自分は教祖に似たような事をされ、命も失いかけたが、こうして漫画で見ると、夢のようなシンデレラストーリーもあるような気がした。
「誠くん、夕飯ができましたよ!」
ちょうど漫画も飽きかけた頃、美花が夕飯をリビングのテーブルの並べた。いかにも家庭料理らしいピーマンの肉詰め、キャベツ野千切り、味噌汁といったメニューだった。ご飯は玄米で少し固そうだったが、親がには菓子パンやコンビニ弁当を用意される事が多かったので、誠の目のは新鮮だった。
そこに美花の旦那という男も帰ってきて三人で一緒に夕飯をとった。旦那は、橋爪修司という男で、美花の雰囲気が似ていた。体格がよく、大仏のよう。髪の毛は茶髪にしていたが、パンチパーマの方が似合うかもしれない。
「誠くんっていうのか。夕飯は美味しいかい?」
橋爪は、ニコニコ笑いながら、誠に声をかけた。どう見ても子供好きなタイプではない男が、誠に笑いかけているのは不自然だった。
「おじさん、おばさんもどうして僕に優しくするの? 怪しいって思わないの?」
そう言うと、二人は顔をも見合わせて苦笑していた。
「困ってた子供がいたら、助けるのが普通じゃない?」
「美花の言う通りだよ。それが大人の勤めってもんだ」
二人の言葉は、ホームドラマのセリフに出てきても不自然では無いほど温かかった。鼻の奥がツンとして泣きそうになってきた。固めの玄米ごはん急いで噛み砕き、泣くのをこらえた。ピーマンの肉詰めもキャベツも味噌汁も美味しく、この瞬間だけホームドラマの中にいるようだった。けっして叶わない夢だと思っていたが、呆気なく叶ってしまったようだ。
気づくと、親やカルトの事などを橋爪や美花に話していた。
「だったら、この家に居ればいいさ」
「そうよ。うちの子になりなさい」
二人の声は甘く、温かく、夢見心地になっていた。同時に眠気が襲い、本当に夢の中にいるようだった。出来れば、この夢の中にずっと浸っていたかった。




