第三夜 砂漠の泉
第一夜、第二夜とまた異なった世界観で書いてます。
楽しんでいただければと思います。
何キロ歩いただろうか。
あたり一面、広大な砂に覆われた道を。
数年前から始めたオアシスを求める旅。
いくら歩けども終わりが見えない。
砂漠の気候は、昼間は焼けるように暑く、朝と夜はとてつもなく寒い。
数年さまよっていると、馬鹿でもどのように乗り切ればいいのかわかるし、そんな環境も居心地がよいとさえ感じるようになる。
旅に出た直後は大変だった。
寒暖差の激しい気温と乾燥した空気。
整った場所など、砂漠にはない。
シャワーがないので、身体を洗うことができない。
水も節約だ。
目印もないから、コンパスに従う。
旅の途中で、いろいろな発見があった。
その中でも砂漠の雨には驚いた。
砂漠では、雨がほとんど降らないのだが、降る時には一気に降る。砂に水が染み込まないので洪水のように、流れていってしまうのだ。
一度溺れかけたので、折り畳みボートを用意していた。
貴重な水分なので、不純物をろ過して飲めるようにする。
そんな知恵もついた。
草花が生えていた場所に遭遇したときはとても感動した。
どうしてこんな植物が咲いているのかと。
しかし、湧き出る水が出てくることはなかった。
ああ、今日もオアシスはないなと調査を終えて寝る体制に入った。
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私が旅に出ると決意したのは、蒸し暑い日だった。
その日は村のお祭りで、外に出ていた村人達も帰省し、多くの人で賑わっていた。
祭りは朝から晩まで開かれ、普段は真面目な大人たちも、夜になれば、会場で陽気にお酒を飲んでいた。
勤勉な村人たちにとって、一年に一度、唯一羽目を外す機会なのだ。
「クシャマ砂漠の先に進むとね、地面が湿っている場所を探すのさ。その付近には、岩山がある。勇気ある旅人はその先へと進み、奥にあるオアシスを見た。」
語り部である老人は語った。
「この貧しい村に立ち寄った旅人は、目を輝かしてそう告げた。もう一度見つけて、億万長者になるのだ、とね。そしてオアシスを探しに砂漠へと入っていった」
「その後、旅人を見た人はいない。風の噂だと、泉を探す途中で野垂れ死んだとも聞くし、オアシスを見つけてひっそりと、しかし、裕福に暮らしているとも聞く。」
「砂漠の向こうには大人のロマンがあるのさ。」
大人の多くは作り話だと笑ったが、私は笑わなかった。
いつも以上に酔っている大人が多い中、彼は全くお酒を飲んでいなかったからだ。
そんな彼を私はまっすぐに見つめていた。
彼の話はいつも雲を掴むような話ばかりだったが、私はどこか惹かれていた。
この老人は絶対に真実を言っている、と直感的に私は思った。
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砂漠の先に岩山があるはずだ。
しかし、岩山は一向に見えなかった。
また夜が来て、寝転がっていたが、身体の体制がどうしてもきつく、寝心地を変えるために、体をひねった。
その時、かすかに背中に違和感を覚えた。普段はサラサラとしている地面が少し硬く感じたのだ。
そっと後ろに手をやると、私の背中は濡れていた。
はっとなり、その場で飛び起きた。
するとどうだろう、私の足元が湿っていた。見間違いだろうか。
目を何度こすってみても、その部分だけ黒色が増しており、手触りも湿っている。
これは水だと確信した。
掘り返してみると、しばらく水分を含んでいたものの、いつもの砂に戻ってしまった。
しかし、そのことで、それまでの半ばあきらめていた気持ちが一瞬で晴れた。
近くにオアシスがあるはずだ。絶対に見つけてやる。
心に火が付いた、探検隊一向の足取りは軽くなり、より注意深くあたりを見回すようになった。
3日間、何も見つからない日が続いたが、根気強く探し続けた。
4日目の朝、いつものように地面を探しながら歩いていると、これまでよりも砂の粒が少し大きいことに気が付いた。
もしかしたら、岩山が削れて砂になっているのかもしれない。興奮した。
私たちはあたりを探して駆けずり回った。
粒の大きさが徐々に大きくなっていくのを見つけては、その方向へと進んだ。
そして、ついに岩山にやってきた。そびえ立つ岩壁が日光を遮り、影を作っている。
一向は、岩の上によじ登り、歓喜の雄叫びを上げた。
寝転がると、その違いをはっきりと感じる。砂と違って表面が硬い。
寝心地は砂のほうが良いと感じた。
さあ、あと少し。この近くにオアシスの泉があるはずだ。
期待に胸を膨らませながら、再び、地面を蹴った。
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