第二夜 魔導師と目覚め
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いつからであろうか。
こんな無味乾燥な生活を送るようになったのは。
中学の頃、僕は生徒会長だった。
ワイシャツのボタンは一番上まできっちりと閉め、ネクタイを巻き、ブレザーを着崩さず。
模範的な生徒であったはずだ。
あのころは勉強ができた。運動神経もよかった。
授業では手を挙げて積極的に発言した。
全校生徒の前でステージの上から生徒のあるべき姿を堂々と演説した。
今の状態になったのは高校に上がってからだと思う。
そこそこ名の知れたレベルの高い高校に入学。
ぼくと同レベルの生徒はざらにいた。
元生徒会長もたくさん。運動ができる生徒。綺麗な絵を描く生徒。
各々が何かしらの分野で飛び抜けた才能をもつ者ばかり。
その中で、僕は自分に対する自信を失っていた。
消極的、根暗、恥ずかしがり屋。
僕は自分にレッテルを張っていた。
ベットの上でゴロゴロしながら、いろいろと考えている間に、視界がぼやけてきた。
午後4時を回ったころであろうか。
ぼくはハロルドだった。
ハロルド達の部隊は闇の精鋭部隊との激闘の末、ようやく勝利を収めた。
勝ったとはいえ、味方の被害は甚大で、人数は見るからに減っていた。
岸壁がそびえる谷間。
敵を誘いこみ挟み撃ちにした。
ハロルドの真上にあった太陽はいつのまにか空と地面の境界線まで沈んでいた。
隊を組み直し帰路に就こうと考えていた矢先、ハロルドは近くに巨大なまた邪悪な魔力を感じ取った。
隣に立つイザードと目配せした。
無口な男の影が遠くからこちらに迫っていた。
足音がどんどん大きくなる。
顔の輪郭が分かるくらいの近さになった。
何なのだろう、この威圧感は。
そいつが現れた瞬間に周りの空気が重くなる。
その目は暗く、何を考えているのかあからさまにその思考を周囲へと振りまいていた。
「殺したい」その強烈で純粋なたった一つの願望にハロルドは戦慄を覚えた。
例えようのない絶望、味わったことのない恐怖がジワジワとハロルドの心を蝕んでいった。
そいつは一歩ずつ、ゆっくりと、しかし確実にこちらに向かってくる。
ハロルドは自らの死が急速に近づいていることを悟った。
何か行動を起こさなくてはと肉体は直感的に警告を発しているのだが、脳はすでに生をあきらめ、身体を動かすことを放棄していた。
ふと隣に目をやると、イザードも他の隊員達もハロルド同様体を硬直させている。
呼吸をしているのだろうかとさえ思うほど動かない。イザードは常に勇敢な男であった。
相手がどんなに強敵であろうとも、どんなに窮地に立たされようとも、必ず活路を見出し、行動し、軍を指揮していた。
ハロルドは絶望的な状況からイザードに幾度となく救われたことを思い出していた。
そして、己の恐怖を隠し、仲間とともに光を見る決意や勇気を思い出していた。
その時、ハロルドの心の奥底から、今度は自分が仲間を救う番だという思いがわき出てきた。
皆を助けたい。
自分はどうなってもよい。
憧れを描くイザードのようになる。
イザードさえも動けないこの状況で皆を救えるのは自分しかいないと思った。
いざ敵に自らの持つ小さな牙で襲いかかろうかという時になって黒衣の男は初めて言葉を発した。
「殺す」
静かに、しかし暴力的な言葉が口唇から放たれ、その振動が耳から体内に入ると全身から鳥肌が立った。
決定打となった。
兵の中には膝を折りその場で跪く者、さらに身体を硬直させる者、反応は様々であったが、たった一言で皆の戦意がそがれてしまったことは誰の目から見ても明らかであった。
数々の修羅場をくぐりぬけてきたハロルドやイザードさえその手足の震えは止まらなかった。
もう自分たちは助からない、その場の誰もが思った。
ただ一人、原因を作った張本人、黒衣の男を除いて。
刹那、最前線にいた数人の兵士の首が落ちた。厳密には首から下が一瞬のうちに跡形もなく消し飛んでいた。
仲間の死を目のあたりにし、硬直が解けたのか、我を忘れて怒り攻撃を仕掛ける者、自分の命欲しさに逃げ出す者、味方を守る為に防御の結界を張る者、それぞれが行動を起こしたが、そんなことにはお構いなしに片っ端から命が奪われていった。
それはまさに地獄絵のようであった。
くるな!くるな!こっちに来るな!!!
「くっそぉーお!!!!!」
自分の叫び声で目が覚めた。
そして得体のしれない怒りが毒のように全身を駆け巡っていた。
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