第一夜 登校中に
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私は学校へ登校するため自転車で水田に囲まれた小道を進んでいました。
その日は家を早く出たので時間にゆとりがあり、ゆっくりと稲の育ち具合を観察しながら進みました。
暑い日差しが照りつけ、汗は噴き出るようでした。空を見ると雲の形が面白く、また動きが早いのでしばらく見とれていました。
ふと雲に追いつきたいと思い、自転車を力いっぱいこぎましたが、雲は私をあざ笑うかのように近づけさせません。
なるほど、雲の上の人というのは、空高くにいるだけでなく、私たちには追っても追いつけない存在であるのだと思いました。いつかは自分も行ってみたいと思いました。
どこからかテントウ虫が飛んできて私の肩に停まりました。
背中には黒い星が四つありました。
私はてんとう虫を傷つけないように追い払おうとしましたが、てんとう虫が飛び立つと同時に黄色い汁を残していくことを知っていたので強硬手段をとれないでいました。
すると突然どこからか年老いた声が聞こえてきました。
「雲の上に立ちたいか?」
その声は私のすぐそばから聞こえてきました。
しかし、周りを見渡しても人の影は見つかりません。
おかしいと思いました。
「雲の上に立たせてやるぞ!」
また同じ声が聞こえてきました。
「あなたは誰!?」
私は尋ねました。
「わしは仙人じゃ」と声が答えました。
てんとう虫がこちらを向いています。
背中の模様がいつの間に変わったのか、白い星になっていました。
「わしがそなたに特別な力を授けてしんぜよう」
てんとう虫が先ほどの声で話しかけてきました。
私はてんとう虫が仙人であることに内心ひどく驚きましたが、顔に出しては失礼だと思い我慢しました。
「わしの出す黄色い汁を飲みなさい。さすればそなたは雲の上へと上がる力を手に入れることができよう」
私はその言葉を完全に信じていたわけではありませんでした。
しかし、雲の上を見てみたいという欲求が強かったのです。私は頷きました。
「では、口をあけるがよい」仙人は口元に飛んできました。
わたしが口をあけると、液体が一滴落ちました。
するとどうでしょう。
今まで地面についていた身体が浮き始めました。
その時私は自分の背中に天使の持つような白銀に輝く羽を確認したのです。
「確かに授けたぞ」
てんとう虫はどこかへ飛び去って行きました。
私は嬉しくなりました。そして空に浮かぶ雲を追いかけました。
身体が軽いためすいすい進み、あっという間に雲の上にたどり着きました。
そこには今までに見たことのないような素晴らしい景色が広がっていました。
私は飛び上るほど喜びました。雲の地面は柔らかくとても心地よいものでした。
ところがどうしたことでしょう。
時間がたつにつれ、身体が重くなり、羽が動かなくなりました。
先ほどまでは触り心地の良かったさらさらした雲も、ドロドロした気持ちの悪いものへと変わり、身体は雲の中に沈み始めました。
とたんに私は恐怖を覚えました。
「助けて!」
私は必死になって叫びましたが、誰一人として助けに来る者はいませんでした。
雲の中には水分がたくさんあって、小さな雷がいくつも見えました。私は生きた心地がしませんでした。
もう助からないのだと諦めました。
そして、自分の運命を呪いました。
その時です。
雲の切れ間から光が差し込み、声が聞こえてきました。
「頂に立つということは、大変なことなのだ。よく覚えておきなさい」
それから私にいったい何が起きたのかは存じません。
気が付いた時には水田に囲まれた小道の上で自転車の隣に転がっていました。
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