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混ざりモノの冒険記  作者: みやふか
第1章:邂逅編
6/10

1-2:冒険者との出会い

今回は割と早めに投稿できました。


少女が、倒れていた。

腹の虫を鳴らしながら。



動きやすそうに加工された獣の皮から作られている装備。

関節を守るために備え付けられた金属の部品。

おまけに背中に掛かっている剣。

短剣と言うには長く、長剣と言うには短い。

いたって普通の長さの剣だ。


一般人とは到底思えない。

どうやら冒険者らしい。


ゼノはその冒険者の少女に駆け寄る。



「・・・を、ご飯を恵んでくださいッス」

そう、か細い声がした。

今にも死にそうな声で懇願する。

地面に突っ伏しているため、その顔はよく見えない。


ゼノは持っていた袋から串焼きを取り出すと、少女に差し出す。

すると少女は、ゼノでも動きの端を捉えるのがやっとな速度で串焼きをゼノの手から取ると、一瞬で食してしまった。

ゼノたちがその姿に目を丸くしていると、少女が声を発する。


「ほんっとーにありがとうございましたッス!先日、全財産が入った鞄をなくしてしまって、、、昨日から何も食べてなかったッス」

少女は「えへへ」と頭を掻く。


「いや、えへへで済ます問題じゃあないよな」

「楽天的過ぎるのダ」

「もうちっと用心ってものがあるんじゃねぇのか」

3人は完全に呆れてしまっている。


そんな姿を気にすることも無く少女は話を続ける。

「そういえばまだ名前を名乗っていなかったッス。自分はアリーザって言うッス!冒険者2年目の新人ッス」

アリーザと名乗った少女は快活に笑う。


「俺はゼノ!」

「ワタシはフェイなのダ」

「オレはゼーレだ」

3人は名を名乗る。


「はわ!どこからか3人目の声がしたッス!」

ゼーレは隠れてアリーザからは見えない状態になっていたため、アリーザは驚く。

すると反応に満足したのかゼーレがゼノから出て来た。


「へへ、やっぱこういう反応じゃないとな!紹介したとおりオレがゼーレだ。悪魔だぞー!」

ゼーレが嬉しそうにくるくると宙を舞う。

悪魔というには少しマスコット過ぎる姿だが。


「あ、悪魔なんスカ!?」

ゼーレの悪魔発言にアリーザが驚く。

「ちょ、声がでかい!!」

ゼノがアリーザの口を塞ぐ。

悪魔というものがどういう存在として認識されているかはゼノには分からないが、良いイメージを持つ可能性は低いだろう。


「ごめんなさいッス。ところでゼノさんたちは冒険者なんスカ?」

「そうだ、冒険者ギルドへの行き方が分かんないんだった!」

「じゃあ、自分が案内するッスよ!」

「ほんとか!」


ゼノがアリーザに詰め寄る。


「ちょっ、近いッス!!」

不意に詰め寄られ、顔が近づいた事に動揺してかアリーザの頬がうっすらと朱に染まる。


「初対面のおなごにそんなことをするのは良くないと思うのダ」

「相棒は頭ん中は子供のままだからな」

フェイとゼーレはうんうんと頷いている。


「あ、わりいわりい」

ゼノがさっとアリーザから離れる。

「そ、それじゃあ、冒険者ギルドに案内するッス!!」

「頼んだ!!」


4人は冒険者ギルドへの移動を開始した。



――――――――――――――――――――――――――――――




道中にて。

「アリーザは珍しい髪の色をしているのダ」

フェイが唐突にそのようなことを言う。

アリーザの髪色は桜色で、よく見かけるような色ではないことは明らかだ。

街の中を歩いていてもそのような髪の色は見かけなかった。


「たしかに、不思議な色だよな。地毛なのか?」

ゼノが疑問をぶつける。

ゼノが過ごした年月の中で、桜色の髪の毛を持っている人間も、そのような髪の色があることも知らなかった。


「そうッスよ。地毛ッス。母様、いや、お母さんも同じ髪の色をしているッス」

アリーザが答える。その雰囲気は先程の快活な姿とは少し違って見えた。


母親の呼び方を何故言い直したかを疑問に思うゼノだったが、アリーザの様子から深く追及することはしなかった。


「冒険者ってどんな感じなんだ?」

ゼーレが話題を変える。

「それ俺も気になる!」

ゼノが目を輝かせる。

「正直、楽な世界では無いッス。自分は冒険者になって1年が経ったッスが、稼ぎは微妙ッス。自分が弱いってのもあるんスけどねー」

アリーザはニカッと笑う。


(正直、アリーザの魔力量は低くない。いや、むしろ人間の中では高い方だ。それで弱いとは少し疑問が残るな)

考えれば様々な事が考えられるが、ゼーレはこの疑問を胸にしまった。


「ゼノさんはどうして冒険者になろうと思ったんスカ?」

アリーザも気になっていたことを口にする。


よくぞ聞いてくれたと言わんばかりにゼノが答える。

「最強の冒険者になるため、だ!!」

なんの恥じらいも無く、はっきりとそう言い放った。



その姿に驚いてか、ゼノの答えに驚いてかは不明だが、アリーザの時が一瞬停止する。

そして、きつく縛られていた糸がほろりと解けるようにアリーザの時が動き出す。

アリーザの口から笑いが零れる。

自分の夢をこうも堂々と語ることができる人がいるのかという驚きでいっぱいだった。


アリーザの反応に少し驚くゼノ。

ゼーレとフェイは何度聞いたことかと呆れ顔だ。


「いや、ゼノさんのことを笑ったんじゃ無いッスよ。ただ、自分の目標をはっきりと言える姿に感動しただけッス」

笑って目尻に少し涙が出て来ているのを指で拭き取る。



そんなやり取りをしているうちに、4人は冒険者ギルドに辿り着いた。

冒険者都市イルテシアの中心部に位置する冒険者ギルド。

冒険者達が依頼を受け、報酬の受け取りから魔物の亡骸の運搬や換金、その他様々な作業を統括する組織。

そのためかなり広大な敷地面積を誇る。

高さもかなりあるため、街の外からでもその姿は確認できそうである。

そもそも冒険者になる方法を知らなかったゼノたちにとっては関係の無い話だったが。


冒険者になるためには冒険者ギルドへの登録が必要不可欠であった。




「ここが、冒険者都市イルテシアの中心、冒険者ギルドッス!!」

アリーザが堂々と紹介する。


「でっけぇ!」

「大きいのダ!!」

「こりゃすげぇ」

3人はそれぞれ感嘆の声を上げる。



ここで冒険者になれる!

そう考えると胸の高鳴りが抑えられないゼノであった。



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